2012 Fiscal Year Research-status Report
炎症性老化に対する運動トレーニングの改善効果:その分子機構とマクロファージの役割
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23590752
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
木崎 節子 杏林大学, 医学部, 教授 (00322446)
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Keywords | マクロファージ / 老化 / 慢性炎症 / 運動トレーニング |
Research Abstract |
近年、老化は低レベルの全身性の慢性炎症であるという新しいコンセプトが提唱され、炎症性老化(inflammaging)とよばれている。実際、糖尿病、アルツハイマー病、悪性腫瘍など加齢性疾患の炎症性病態が明らかになってきた。本研究では、老化によるマクロファージポピュレーションの変化をフローサイトメトリにより解析し、MHC calss II分子の発現が高いマクロファージが老化マウスで増加していることを見いだした。そこで、MHC calss II分子高発現マクロファージと低発現マクロファージをフローサイトメトリにより単離し、それぞれの機能を詳細に検討した結果、calss II分子高発現マクロファージは炎症性(M1)マクロファージであることが確認された。 一方、ごく最近、運動には単に体重減少や内蔵脂肪減少だけでなく、抗炎症作用も有することが示唆され、多くの慢性疾患の進行を効果的に抑制することが期待される。しかし、そのメカニズムは明らかになっていない。そこで、老化マウスを、回転かご付きケージによる自由運動トレーニングを行わせ、腹腔マクロファージポピュレーションの変化を解析した。老化に伴う炎症性(M1)マクロファージの増加は、自由運動トレーニング群で有意に抑制され、運動が炎症性老化を改善することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、アンチエイジングのための効果的な運動処方の確立と運動による炎症制御機構の解明し、身体活動量と炎症反応と慢性疾患がどのようにリンクしているかを明らかにすることを目的としている。本年度は、老化によるマクロファージポピュレーションの変化をフローサイトメトリにより解析し、MHC calss II分子の発現が高い炎症性(M1)のマクロファージが老化マウスで増加していることを見出した。そこで、MHC calss II分子高発現マクロファージと低発現マクロファージをフローサイトメトリにより単離し、それぞれの機能と運動効果を詳細に検討した結果、MHC calss II分子高発現マクロファージに一酸化窒素合成酵素の遺伝子発現が上昇していることを明らかにした。さらに、老化マウスを、回転かご付きケージによる自由運動トレーニングを行わせると、老化に伴うMHC calss II分子高発現マクロファージの上昇は抑制された。即ち、炎症性老化に対して、運動トレーニングの効果が確認されたので、おおむね予定通りに実験は進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
マクロファージのポピュレーション、病原体関連分子パターン認識受容体の発現量、サイトカイン産生量の変化や血液中のホルモンと全身性炎症反応との関係、及び各組織での炎症性病態へのマクロファージの関与とそのメカニズムを解明する。さらに、in vitroおいて、マクロファージポピュレーションとその機能に影響を与える分子を特定し、そのメカニズムを分子レベルで明らかにする。これらの結果をもとに、老化に伴う全身性慢性炎症性疾患の予防や治療のためにも適切な運動処方を追究するとともに、炎症制御機構を解明してアンチエイジングのためのターゲット分子を検索する。加えて、マクロファージ株化細胞(RAW264)を用いて、各標的分子の発現を遺伝子導入法とRNA干渉法によって調節し、炎症反応への影響を解析する。標的分子のプロモーター領域をルシフェラーゼベクターにクローニングし、プロモーター活性を測定する。プロモーター領域に存在する転写因子結合配列に変異を導入し、発現調節に関与する転写因子を特定する。核画分から核タンパク質を抽出し、NF-κB、Fos、Jun、CREB、C/EBP などの転写因子をゲルシフトアッセイにより解析し、発現量の変化に附随して変化する転写因子を検索する。これらの結果と前年度までの解析結果をまとめ、学会発表し、論文として報告する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額8,600円は、平成25年度請求額500,000円と合わせて、実験動物と細胞培養試薬の購入、成果の報告のための経費として使用する。
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Research Products
(14 results)