2012 Fiscal Year Research-status Report
回転性脳損傷における側脳室前角上衣下損傷の意義に関する法医病理学的研究
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23590842
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
黒田 直人 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40161799)
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Keywords | 法医学 / 法病理学 / 脳神経病理学 / 頭部外傷 / 社会医学 / 病理学 |
Research Abstract |
申請者が剖検業務に従事している弘前大学大学院医学研究科法医学講座における平成24年度の剖検数は204例であった.そのうち,脳病理組織標本(プレパラート標本)の作製が可能であった例(高度腐敗,白骨化,高度焼損などを除く例)は現時点で約160例あり,さらに標本作製可能な頭部外傷剖検例は12例であった.申請者が着目する「側脳室前角上衣下損傷」を認めた例はこれまで3例あり,いずれの症例においても,回転性頭部外傷を説明できる受傷機転を伴っていた. 但し,発生メカニズムが充分に説明できないにもかかわらず,両側の側脳室前角上衣下の出血を認めた症例が1例みられ,現在検討中である.申請者の仮説では,高度の脳腫脹と意識障害を伴っていることが明らかであることから,恐らく畳面上での転倒の可能性が最も高いと考えている.また,過去の剖検例において,同様の症例1例と酷似した条件が複数揃っていることから,これら2例を併せて第97次日本法医学会学術全国集会に発表(演題受理済み)し,成因について議論することを予定している. 一方,頭部外傷と無関係な事例についても,左右一対の側脳室前角部の脳組織標本を作製し観察しているが,本年度の剖検例においては上記1例を除きこれまでのところ,頭部外傷のない例においては,予想通り側脳室前角上衣下損傷はみられない. 一剖検施設として症例数が急激に増加していることから,脳を全固定してから側脳室前角標本を作製することは限界がみられるようになってきた.このため剖検時に未固定脳の切り出しを実施している例が次年度は増えると予想されるが,本年度に実施した症例に関しては,全固定後切り出し例と未固定切り出し例との間に差はみられていない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年間の剖検数が200例を越えた本年度は,対象症例数ならびに対照症例数の確保の点からは充分と言える.しかし,症例が増加するに伴い,法医剖検業務の作業が増加したことにより,本研究に割くことの出来る時間は限界に近づいてきた感がある. また,恐らく最近の死後画像診断の実施される症例が増えることに伴う現象と推測されるが,本研究の対象症例は予想した程には増加していない. しかし,症例の丁寧な分析に出来るだけ時間と労力を割くよう努力し,良好な進捗状態を維持を優先するので,次年度以降も計画の遅延は避けられると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り,平成24年度の進捗状況を踏まえ,症例収集と分析を継続する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし.
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Research Products
(3 results)