2011 Fiscal Year Research-status Report
スギヒラタケ中青酸産生メカニズムと急性脳症発症との因果関係について
Project/Area Number |
23590848
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
権守 邦夫 浜松医科大学, 医学部, 助教 (10006744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 修 浜松医科大学, 医学部, 理事 (70093044)
渡部 加奈子 浜松医科大学, 医学部, 教授 (70288546)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | スギヒラタケ / 急性脳症 / 質量分析 / 青酸 / 代謝 |
Research Abstract |
平成16年秋に日本海側の地方で発生した急性脳症の原因物質として疑われているスギヒラタケが青酸を産生し、その青酸の代謝異常により急性脳症を発症したとの仮説に基づき、スギヒラタケ中の青酸の産生メカニズムを明らかにするとともに、急性脳症を発症するメカニズムについて明らかにすることを目的とした研究である。本研究の研究材料であるきのこのスギヒラタケについて、研究に十分な量を確保する予定でいたが、最近の天候異常のためか、他のキノコの生育に比べてスギヒラタケの発生は少なく、新たな採取については平成24年度からに頼らざるを得なくなった。しかし、研究は平成22年度以前に採取し、冷凍保存していたスギヒラタケを使って進めることができた。従来より使用している窒素リン検出器(NPD)付きガスクロマトグラフ装置を用い、あらためて青酸測定法を確認したが、感度は十分なものではなく、高感度を得られる分析法の開発が必要であった。本研究材料のスギヒラタケとは異なるきのこであるが、ドクササコによる中毒事故とイボテングタケによる中毒事故が相次いで発生し鑑定を依頼されることになり分析を行ったが、従来の分析法では再現性や感度に大きな問題があり、これらの毒成分についての新しい分析法の開発を検討した。抽出法や高速液体クロマトグラフィの移動相の検討などいろいろ試行錯誤の結果、最新の機器であるタンデム型質量分析器による分析によりたいへん再現性や感度の面でたいへん良好な結果を得ることができた。これらの研究成果については平成24年度の国際法中毒学会で発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では自然界に発生するきのこを研究材料とするために、天候による影響を受けてしまうことは避けられない。さいわい、以前から研究材料としてスギヒラタケをはじめとした毒キノコを採取し冷凍保存していたために、研究を中断することは避けられた。しかし、採取時期や、採取場所について工夫することは不可能であったので、本来の研究はあまり進行していない。目的きのことは異なるきのこではあるが、イボテングタケおよびドクササコについて毒成分の新しい抽出法や、タンデム型質量分析装置による新しい分析法を確立し、高感度分析が可能となったことは、今後のスギヒラタケの毒成分分析法の開発に必ず役立つものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
スギヒラタケの採取は次年度に行う予定である。平成23年は天候の影響もあり十分採取できなかったことを考慮し、次年度は9月後半より複数回にわたって採取を試みることにする。また、採取地点を今まで重点をおいてきた秋田県のみではなく、静岡県を含む採取可能な他県にも広げる計画である。毒成分の高感度検出法を確立するためおよび青酸代謝へのスギヒラタケの影響について検討するために質量分析装置を利用することにし、ガスクロマトグラフィ質量分析器や高速液体クロマトグラフィ‐タンデム型質量分析器での分析を試みる。これらの機器ではイボテングタケやドクササコでの中毒事例についての検査で得られた抽出方法や分析方法についての経験を生かし、新たな高感度分析法について開発を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度はスギヒラタケの発生時期による影響、成長の度合いによる影響など、スギヒラタケ中毒成分の発生状況を詳細に検討することを試みる。そのため、既存のガスクロマトグラフィ質量分析器や高速液体クロマトグラフィ‐タンデム型質量分析器の使用を増やし、それにかかわるカラムや移動相など、また抽出段階での各種カラムに研究費を充てる。試料の濃縮時に必要な窒素ガスについて、従来はボンベから供給していたが新たに窒素ガスを供給する装置を導入し、効率よく試料の処理が可能なシステムを構築し、研究に応用する。これらの検討のために採取地点を増やすことと、採取回数を増やすため国内旅費に充てる額を増やす予定である。
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