2012 Fiscal Year Research-status Report
脳血管内皮の微細構造変化に着目したアルツハイマー病の病態解明
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23590874
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
林 真一郎 独立行政法人国立循環器病研究センター, 病院, 医師 (20396740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
里 直行 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座准教授 (70372612)
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Keywords | アルツハイマー病 |
Research Abstract |
平成23年度に行なった研究では、アルツハイマー病のモデルマウスAPP23において、病態早期より海馬領域の微小血管の減少が見られ、血管内皮の細胞内変化としてオートファゴゾームの出現が確認できた。平成24年度に行なった研究においても再現性のある同様の結果を確認できた。マウスの月齢が進むと、血管内皮におけるオートファジー誘導はさらに増加しており、一方で微小血管の数はさらに減少していた。興味深いことに大脳皮質の中型血管の内皮にはオートファジーは誘導されていなかった。病態早期にみられた血管内皮のオートファゴゾームは、マウスの月齢が進むとリソソームとの融合によるLAMP-2陽性オートリソソームになっていることがわかった。アルツハイマー病と生活習慣病の関連性を明らかにするために、APP23マウスと糖尿病マウス、または高血圧マウスとの交配を進め、病態修飾を受けたアルツハイマー病モデル動物の作成を進めている。モデル動物作成と平行して、生活習慣病と血管内皮のオートファジー誘導についても検討を行なっている。酸化ストレスや血管壁の伸展刺激を受けたヒト培養血管内皮細胞にもオートファジーが誘導されることを確認した。ヒト剖検組織の選定も終わり、次年度には解析を行なう予定である。平成24年度の研究により、アルツハイマー病の病態早期には、海馬微小血管内皮のオートファジー誘導が起こり、オートリソソームの形成、さらには血管内皮細胞の機能不全と細胞死につながっていく可能性が考えられた。生活習慣病が加わると血管内皮のオートファジーカスケードがさらに活性化され、アルツハイマー病の病態が加速する可能性も考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の平成24年度~平成25年度研究目標に沿って順調に研究を進めている。血管内皮のオートファジー制御に関わる分子についても、いくつかの候補遺伝子を発見できている。一方、剖検脳組織の解析を一度試みたが、保存組織の固定方法の影響で、脳微小血管の血管内皮細胞内の微細構造の確認が困難であったため、新たな固定方法による剖検組織の準備と解析を行なう予定とした。モデル動物の作成も進めている。 これまでの研究成果は、国際高血圧学会、国際オートファジーシンポジウム、国際脳卒中学会などの複数の国際学会にて発表することができ、海外の著明な研究者より研究の助言等feed backを得ることもできた。生活習慣病に関連した複数の原著論文も共著者として発表できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度~平成25年度の研究計画に沿って、以下の研究を推進する予定である。 (1)アルツハイマー病に生活習慣病が合併することで、脳血管の微細構造や細胞内オートファジーカスケードがどのような病態修飾を受けるのかモデルマウスで比較検討する。 (2)アルツハイマー病の脳微小血管内皮のオートファジー制御に関連する分子の探索を行なう。 (3)ブレインバンクの剖検脳組織において、脳血管の微細構造変化のオートファジー誘導について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画に必要な、各種試薬、病態モデルマウスの作成維持費、遺伝子タンパク解析の委託費、電子顕微鏡や免疫染色のための組織標本作成費、そして学会発表や論文作成にかかる費用等を、平成25年度の研究費より使用する予定である。また最新の研究動向を確認するため英文雑誌や文献購入費用も含める。 次年度の研究費には本年度の研究費残額が含まれる。これは、購入済みの研究試薬などを効率よく使用することでまだ残りがあること、そして試料の解析やサンプル作成の一部を外部委託せず、研究代表者および研究分担者の研究室にて急ぎで準備したことにより発生した残額である。次年度に全額使用の予定である。
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Research Products
(11 results)