2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23590934
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
藤井 俊光 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 医員 (30547451)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永石 宇司 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (60447464)
渡辺 守 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10175127)
|
Keywords | 炎症性腸疾患 / 慢性腸炎 / S1P受容体 / リンパ球動態制御 / FTY720 |
Research Abstract |
難治性の炎症性腸疾患(IBD)に対する既存の治療法ではそれに対する抵抗性ないし離脱困難、さらに重篤な副作用などの問題を抱え、新規治療システムの確立が重要な課題となっている。本研究では我々が見いだしたIBDにおける特異的な免疫学的異常に着目し、リンパ球動態制御に必須の分子S1P受容体を標的とした、これまでと全く異なる概念に基づいた新規治療法に関して独自に検討を行っており、最終的にIBDに対する新規治療法の開発基盤樹立を目的としている。 IBDにおける病原性T細胞のS1P/S1P受容体システムに関した知見をリンパ球動態制御による治療に応用するために平成24年度の研究を推進した。これまでにマウス正常T細胞/病原性メモリーT細胞のS1P/S1P受容体システム依存するFTY720の影響の検討を行い、ナイーブT細胞移入腸炎モデル、メモリーT細胞移入腸炎モデルに対してFTY720が腸炎を著明に改善することがわかった。また、末梢血および大腸粘膜CD4+T細胞数は著明に減少していた。 我々は慢性腸炎における骨髄潜在性病原性T細胞の重要性を見いだしてきており、同細胞に対するFTY720の影響を検討するために、二次リンパ組織欠損腸炎モデルの作成を行った。まずRAG2-/-マウスを脾摘し新規の脾臓欠損メモリーT細胞移入腸炎モデルを確立し、FTY720を投与した結果、移入後8週の臨床スコア、組織学的スコアともに著明に改善した。また末梢血および大腸粘膜CD4+T細胞数は著明に減少した。各臓器CD4+T細胞の細胞表面抗原、ホーミング受容体発現はFTY720投与による影響は見られなかった。サイトカイン産生能についてFTY720投与群ではTh1およびTh2ともにサイトカイン産生を抑制した。以上より、新規の脾臓欠損メモリーT細胞移入腸炎モデルに対してもFTY720は腸炎を著明に抑制することがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定研究計画に沿って実験計画を進行し良好な結果を得ている。
|
Strategy for Future Research Activity |
メモリーT細胞移入腸炎モデルに対してもFTY720が腸炎を抑制したため、既存のFTY720は二次リンパ節にリンパ球を隔離し免疫抑制作用を発揮するという機序では説明がつかない。前段階としての脾臓欠損メモリーT細胞移入腸炎モデルにおいてFTY720の腸炎抑制作用が認められ、現在、二次リンパ組織が完全に欠損したマウスにおける新規の腸炎モデルを作成し、同モデルに対してもさらにFTY720の腸炎抑制作用が認められるか検討中である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
脾臓欠損メモリーT細胞移入腸炎モデルに対するFTY720の腸炎抑制効果の検討をしている。有効であれば、FTY720の新規の効果発現機序の解明のために、二次リンパ組織欠損腸炎モデルでのFTY720の有効性および骨髄病原性T細胞への影響の検討するため、二次リンパ組織の欠損したマウスモデルを作成し、病原性メモリーT細胞を移入し腸炎モデルを作成する。同モデルに対してもFTY720投与後の腸炎の抑制効果、リンパ球数の変化、細胞表面抗原の発現の差異などを解析し、骨髄由来の病原性T細胞に対するFTY720の有効性を検討する。その後にヒト病原性T細胞のS1P/S1P受容体依存性遊走モデルに対するFTY720の効果と難治性炎症性腸疾患患者に対する臨床研究を開始する予定である。
|