2012 Fiscal Year Research-status Report
腸幹細胞動員における神経系シグナルの関与の検討:幹細胞分化可視化マウスを用いて
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23590953
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
比舎 弘子 関西医科大学, 医学部, 講師 (90151422)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
保坂 直樹 関西医科大学, 医学部, 講師 (30388459)
槇 政彦 関西医科大学, 医学部, 講師 (80297001)
神田 晃 関西医科大学, 医学部, 講師 (70375244)
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Keywords | 腸上皮幹細胞 / 神経シグナル |
Research Abstract |
1.神経伝達物質VIPによる小腸オルガノイド形成抑制作用の検討:前年度の研究において、神経伝達物質であるVIP(血管作動性腸管ペプチド)が小腸クリプトゲル内培養系におけるオルガイド形成を抑制することが判明した。VIP添加によりオルガノイド構成細胞の分化系譜に変化がおこるかをオルガノイド切片の免疫染色により検討した。VIP添加によりオルガノイド総数は減少するが、オルガノイド内のパネート細胞や杯細胞数には変化がなく、分化系譜には直接影響がないと思われた。従って、VIPは腸上皮幹細胞(IESC)に作用し、その増殖を抑制していると考えられる。また、タモキシフェン(Tx)投与により個々のIESCとその子孫細胞を蛍光で標識できるLgr5-rainbowマウス(腸幹細胞分化可視化モデルマウス)の小腸クリプト培養系にVIPを添加し、蛍光を発する細胞(Lgr5由来細胞)の増殖を蛍光顕微鏡で経時的に観察した。VIP添加によりLgr5陽性IESCやその子孫細胞の増殖に遅延が見られたが、現在さらに詳しく検討している。さらに、小腸切片を抗VIPタンパク抗体で免疫染色したところ、IESCが多く存在するクリプト底部の腸上皮細胞層を取り囲む線維芽細胞直下にVIP陽性神経細胞が認められ、生体においてもVIPがIESCの増殖・分化を制御している可能性が示唆された。 2.小腸の細胞回転に対する神経シグナルの影響:Lgr5-rainbowマウスにTx投与後経時的に採取して凍結切片を作成し、神経細胞のマーカー(β-III tubulinやS-100)に対する抗体で染色した。細胞回転の早い(いずれかの蛍光を発するIESCとその子孫細胞が多い)クリプトと遅いクリプトにおける神経細胞数の差異を連続切片で組織学的に検討しているが、まだ結論は出ていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の交付申請書に記載した研究目標は、(1) 神経伝達物質VIPの小腸オルガノイド形成抑制作用機序を検討することと、(2)小腸粘膜固有層内の神経線維量や神経ペプチド受容体の発現量と小腸の細胞回転との間に相関性があるか検討することであった。これらを詳しく解析するための実験を行い、その結果、(1) VIPは腸上皮幹細胞に作用し、その増殖を抑制している可能性があること、さらに生体においてもVIPが腸上皮幹細胞の増殖・分化を制御している可能性があることも明らかにした。(2)に関しては、さらに詳しく解析を進めている。したがって、平成24年度の研究目標をおおむね達成したと考えられ、また、これらの結果から次年度の研究の方向性が導きだされた。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 小腸上皮幹細胞の分化・成熟に対する神経シグナルの影響 タモキシフェン処理腸幹細胞分化可視化モデルマウスに神経遮断薬を投与してシグナルを阻害する、あるいは、ノルアドレナリン、アセチルコリン、ニコチン、神経ペプチド等を投与し、小腸切片を作成する。蛍光顕微鏡で、クリプト内の蛍光標識細胞数、分化方向、あるいはそれらの経時的変化を観察し、小腸上皮幹細胞の分化・成熟に対する神経シグナルの影響を解析する。投与方法についても腸間膜静脈注入法、経口投与、末梢静脈投与法を試み、有効な方法を探る。また、ニコチンパッチ法にて経皮投与も行う。 2. 小腸腺腫マウスでの粘膜固有層内神経細胞の組織学的解析と小腸クリプト培養系での神経伝達物質の影響の解析 家族性大腸腺腫症のモデルマウスであるApc Minマウス(Apc遺伝子のヘテロノックアウトマウス)では、大腸ではなく小腸に腺腫が多発するが、腺腫部位の粘膜固有層内における神経細胞については殆ど解析されていない。腺腫部位の神経細胞を抗体で染色して正常部位の神経細胞と比較し、組織学的に異常がないか検討する。同マウスの腺腫部位あるいは正常部位の小腸クリプトを培養して腸幹細胞の分化方向や増殖様式を比較するとともに、神経伝達物質を添加して、正常マウスの場合と同様に増殖抑制がおこるか検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本学所蔵の蛍光顕微鏡や蛍光タイムラプス撮影装置を使用するので、設備備品費は不要である。来年度も小腸培養を重点的に行うので、消耗品として、細胞培養試薬、培養液、培養器具が必要であり、これらに79万円を計上した。免疫組織染色用抗体2本程度の購入費として5万円を当てている。また、研究成果を学会で発表する予定で、学会出張費(1回分)5万円と、学会参加費(1回分)1万円を計上した。
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Research Products
(2 results)