2011 Fiscal Year Research-status Report
冠動脈プラーク破裂後の血栓形成における単球サブセットの関与と治療法の確立
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23591058
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
今西 敏雄 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (00285389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾崎 雄一 和歌山県立医科大学, 医学部, その他 (00507999)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 急性冠症候群 |
Research Abstract |
循環血中の単球は、自然免疫反応の際に中心的に働くToll-like receptor (TLR)などのパターン認識受容体の細胞表面上の発現を増強することにより、病変局所の炎症および血小板との相互作用により、血栓形成を促進することが明らかにされている。当該年度は循環血中および責任冠動脈血栓形成病変部位における単球サブセットとTLR-4の発現頻度との関連を明らかにする臨床研究を施行した。 研究対象は65名の虚血性心疾患患者(急性心筋梗塞(22名)、不安定狭心症(16名)、安定狭心症(27名))および15名の健常人(対照群)であった。急性心筋梗塞患者において、CD14+CD16+単球上のTLR-4の発現は循環血中のCD14+CD16-単球に比し、有意に大であった。CD14+CD16+単球上のTLR-4の発現は、急性心筋梗塞患者において他の3群に比し有意に大であった。急性心筋梗塞患者群においては、血栓吸引術により冠動脈血栓より得たCD14+CD16+単球上のTLR-4の発現は循環血中に比し、責任冠動脈病変部において有意に上昇していた。また急性心筋梗塞患者の入院時におけるCD14+CD16+単球上のTLR-4の発現増強効果は心筋梗塞発症12日後の著明に低下していた。更に、急性心筋梗塞患者において、血中のtumor necrosis factor-αは循環血中単球のTLR-4の発現レベルと有意な正の相関関係を認めた。 以上より、急性心筋梗塞患者におけるCD14+CD16+単球上のTLR-4の発現増強効果は、循環血中および冠動脈血栓形成病変部位の両者でみられることを明らかにした。従って、特定の単球サブセット上の自然免疫反応の増強効果は急性心筋梗塞の発症機転に関与する可能性が推察され、我々の作業仮説を支持した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の研究課題の作業仮説は、"特定の単球サブセットは冠動脈プラーク破裂部位において、自然免疫反応を介して種々の程度に活性化され、その破裂部位の血栓形成に関連する"である。当該年度において、どの特定の単球サブセットが冠動脈プラーク破裂部位において、自然免疫反応を介して活性化されているかを明らかにすることを目標にした。我々は当該年度において、CD14+CD16+単球におけるTLR-4の発現は冠動脈血栓部位で増強することが明らかにし、当初の目的を達成した。従って、本作業仮説の妥当性が示唆され、今後の研究計画を変更・修正することなく進めていけるためである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究体制は研究代表者1名と研究分担者1名、および研究協力者3名の構成を維持する。研究分担者および協力者と緊密に連携し、常に情報を共有し、定期的に研究成果について話し合う機会を設ける。今後研究計画の変更の必要性が生じれば、迅速に対応する協力体制を強固にする。 現在単球サブセットと以下の2項目との関連について比較検討中である。(1)臨床パラメーターおよびバイオマーカー、(2)急性冠症候群の病変形態(プラーク破裂、血栓、びらん、thin-cap fibroatheroma、線維性被膜厚)の2項目である。また、病変局所の炎症および血小板との相互作用に関与するP-selectin glycoprotein ligand-1 (PSGL-1)の発現は冠動脈血栓内のCD14+CD16+単球で増強していることを少数例で確認している。 今後、症例を重ねてCD14+CD16+単球およびTLR-3およびPSGL-1のクロストークと急性冠症候群の病変形態との関連を明らかにするように研究を推進する予定である。更に単球サブセットの質的変化の機序解明および予防に向けて、対象患者由来のCD14陽性単球におけるTLR-4シグナルの活性化機構、および炎症性サイトカイン・ケモカインの分泌能の評価と、心血管作動薬の影響の有無についても研究環境を整えていく予定にしている。 また基礎研究に関しても遺伝子欠損マウスおよび野生型マウスに深部静脈血栓モデルの作成に着手している。現在、血栓形成の程度の再現性を検討している段階である。準備状況が整い次第、分子生物学的機序の比較・検討に関する研究を施行する予定としている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
臨床研究に関しては、先ず循環血中および冠動脈血栓内の単球サブセット(特にCD14+CD16+単球)の量的変化と冠動脈イメージングモダリティーであるoptical coherence tomography (OCT)により評価した急性冠動脈の病変形態(プラーク破裂、血栓、びらん、thin-cap fibroatheroma (TCFA), 線維性被膜厚)との関連を明らかにする予定である。次に循環血中および冠動脈血栓内の単球サブセット(特にCD14+CD16+単球)の質的変化について検討する。すなわちCD14+CD16+単球表面上のTLR-4およびPSGL-1の発現頻度の程度を急性冠症候群、安定狭心症群および健常群で比較検討する。これらの研究を遂行するために、生化学的関連試薬、FACS関連試薬および免疫関連試薬を研究費として使用する予定である。 基礎研究に関しては遺伝子欠損(CCR2およびCX3CR1)マウスおよび野生型マウスに深部静脈血栓モデルを作成し、血栓形成に及ぼす単球サブセットの浸潤との関連等を検討する。研究が順調に進めば、その分子生物学的機序の解明に着手する予定である。これらの研究を遂行するために、培養関連、生化学的試薬および遺伝子解析に関して研究費として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)