2011 Fiscal Year Research-status Report
心不全の基礎疾患と病期を考慮した新しい包括的心不全治療法の開発
Project/Area Number |
23591093
|
Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
浅沼 博司 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20416217)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝倉 正紀 独立行政法人国立循環器病研究センター, 臨床研究企画室, 室長 (80443505)
北風 政史 独立行政法人国立循環器病研究センター, 臨床研究部, 部長 (20294069)
平出 敦 近畿大学, 医学部, 教授 (20199037)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 循環器・高血圧 / トランスレーショナルリサーチ / 心不全 |
Research Abstract |
新しい包括的心不全治療法を開発するにあたり、心不全の病態の多様性に対応するために、本年は、虚血性および非虚血性心不全モデルの双方において、内因性ストレス感受性因子であるAMP-Activated Protein Kinase(AMPK)の活性化剤(AICAR)の投与開始を、心不全発症前(予防)と心不全発症後(治療)の双方のタイミングで行い、その効果を検討した。虚血性(陳旧性心筋梗塞)モデルによる検討においては、無投薬群では左室径が拡大(4週後:35mm、6週後:37mm)し、左室駆出率が低下(4週後:45%、6週後:40%)したが、AICARの隔日投与を心不全発症前(心筋梗塞作成前)から行うことにより、左室径の拡大が抑制され(4週後:32mm、6週後:34mm)、左室駆出率の低下も抑制された(4週後:57%、6週後:55%)。また、心不全発症後(心筋梗塞作成4週間後)より AICARの隔日投与を行っても、6週後における検討で左室径の拡大と左室駆出率の低下の抑制効果が認められた。一方、非虚血性(高頻度右室ペーシング)モデルによる検討においては、無投薬群では左室径が拡大(4週後:36mm、6週後:39mm)し、左室駆出率が低下(4週後:35%、6週後:24%)したが、AICARの隔日投与を心不全発症前(ペーシング開始前)から行うことにより、左室径の拡大が抑制され(4週後:33mm、6週後:35mm)、左室駆出率の低下も抑制された(4週後:45%、6週後:37%)。また、心不全発症後(ペーシング4週後)より AICARの隔日投与を行っても、6週後における検討で左室径の拡大と左室駆出率の低下の抑制効果が認められた。上記の結果より、AMPKの活性化が心不全の発症や進展を抑制し、その効果は虚血性や非虚血性など病因にかかわらず認められることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先に提出した交付申請において、当該研究課題である「心不全の基礎疾患と病期を考慮した新しい包括的心不全治療法の開発」を遂行するために、平成23年度は、大動物実験プロトコールとして、1) 非虚血性心不全モデル(右室高頻度ペーシング)におけるAMPK活性化剤の心不全改善効果の検討、2) 虚血性心不全モデル(陳旧性心筋梗塞)におけるAMPK活性化剤の心不全改善効果の検討の2項目を実施計画に掲げた。現在までに、前述の研究実績の概要に示すように、当初の計画通り、大動物(ビーグル犬)を用いた右室高頻度ペーシングによる非虚血性心不全モデルおよび陳旧性心筋梗塞による虚血性心不全モデルの双方のプロトコールを実施し、AMPK活性化剤が双方のモデルにおいて心不全の発症や進展を抑制することを明らにしたことから、おおむね順調に進展していると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究計画はおおむね順調に進展している状況である。当該研究課題である「心不全の基礎疾患と病期を考慮した新しい包括的心不全治療法の開発」を遂行するために、平成24年度は、平成23年度に実施したプロトコールから得られた心筋サンプルを用いて、DNAマイクロアレイ法による網羅的な遺伝子発現の解析を行う予定である。具体的には、平成23年度に得られた結果を基にして、Sham群に比し、心不全の発症および進展過程または回復過程で発現が2倍以上増加する遺伝子群でAMPK、BNP及び我々の検討で心不全の病態に関与することが明らかになっているアデノシンと類似もしくは反対の挙動を示すものを検索する。得られた遺伝子群については、Tag man probeを用いた定量PCRを行うことにより、発現の変動を確認する。また、Sham群に比し、遺伝子発現が1/2以下に低下する遺伝子群にも着目し、同様の解析を行う。平成25年度は、特定遺伝子のプロファイリングを行う予定である。具体的には、発現変動が確認された遺伝子群が既知の遺伝子の場合、心不全やAMPK、BNP及びアデノシンとの関連があるかをゲノムブラウザーで検索する。得られた遺伝子群については、Gene Ontologyを参照して分子機能、生物学的プロセス及びcellular componentについて検索する。一方、未知の遺伝子群については、SMARTを用いてドメイン構造を検索する。さらにドメインが明らかでない場合には、PROSITEを用いてモチーフが存在するか否かを検索することにより得られた遺伝子群の機能を推定する。これらの一連の検討により、虚血性及び非虚血性心不全に対するAMPK、BNP及びアデノシンの標的分子を中心とした心不全の発症・進展抑止及び心不全改善効果のメカニズムが明らかとなり、新しい包括的心不全治療法の開発につながるものと考える。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、今年度に実施したプロトコールから得られた心筋サンプルを用いて、DNAマイクロアレイ法による網羅的な遺伝子発現の解析を行う予定である。本研究計画に計上した研究費には、特に本研究にのみ使用するもののみを選定し、いずれも節約を旨とし、無駄のないように利用することを心がけることから、次年度の研究費の使用計画として、遺伝子発現の変化を解析するために必要なDNAマイクロアレイチップおよび得られた遺伝子群の発現の変動を確認するための定量PCRで必要なTaqMan probeを物品費として計上した。また、研究成果の発表と情報交換の目的で、横浜で開催される第77回日本循環器学会学術集会に参加するための旅費を計上した。
|
Research Products
(8 results)
-
[Journal Article] Cardioprotective effects of low-dose combination therapy with a statin and an angiotensin receptor blocker in a rat myocardial infarction model.2012
Author(s)
Sohma R, Inoue T, Abe S, Taguchi I, Kikuchi M, Toyoda S, Arikawa T, Hikichi Y, Sanada S, Asanuma H, Kitakaze M, Node K.
-
Journal Title
J Cardiol.
Volume: 59
Pages: 91-96
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-