2012 Fiscal Year Research-status Report
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23591227
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Research Institution | Research Institute, Osaka Medical Center for Maternal and Child Health |
Principal Investigator |
道上 敏美 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), その他部局等, 研究員 (00301804)
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Keywords | 骨細胞 / リン代謝 / FGF23 / DMP1 / PHEX |
Research Abstract |
骨細胞は骨芽細胞が骨基質に埋没し、最終分化に至った細胞である。近年、複数の遺伝性低リン血症責任分子(FGF23、PHEX、DMP1)が骨細胞に比較的特異的に発現していることが明らかとなり、骨細胞がリン代謝調節において重要な機能を担っていることが推察されるが、これらの分子の機能的な連関や発現制御については不明な点が多い。そこで、マウス長管骨から単離した初代骨細胞を用いて、リン代謝における骨細胞の役割について解析した。X連鎖性遺伝性低リン血症性くる病(XLH)のモデルで、Phex遺伝子に欠失を有するHypマウス及び野性型マウス長管骨より骨芽細胞及び骨細胞を単離し、real-time PCRにより遺伝子発現を比較検討したところ、Hypマウスの細胞ではFgf23に加えてDmp1の発現が著明に増加していた。Dmp1は骨細胞のマーカーとされているが、Hypマウス由来の細胞では、骨芽細胞に相当する分画においてもDmp1の高い発現を認めた。Dmp1のリン酸化に関わるFam20cの発現についても、Hypマウスの細胞で増加を認めた。Hyp骨におけるFgf23、Dmp1及びFam20cの発現増加は、血清リン値が低下していない胎仔期より認められた。一方、ナトリウム/リン酸共輸送担体であるPit1の発現は、成獣マウスより単離した骨細胞においてはHyp骨細胞で発現が増加していたが、胎仔期にはHyp骨と野生型骨との間で差を認めなかったことから、出生後の血清リンの低下に伴い、代償的に発現が増加したことが推察された。また、野性型マウス及びHypマウスより単離した初代骨細胞を用いて、活性型ビタミンDや細胞外無機リン酸濃度変化に対する応答性についても検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Phex遺伝子に欠失を有するHypマウスより単離した骨芽細胞、骨細胞の遺伝子発現を野性型マウス由来の細胞と比較することにより、Fgf23のみならず、Dmp1及びFam20cの発現が増加していることを見いだした。ヒトやマウスにおいてDmp1やFam20cの機能喪失は骨細胞におけるFgf23産生を増加させるところから、今回、HypマウスにおいてFgf23とDmp1、Fam20cの発現が共に増加していたことは極めて興味深い。現在、これらの分子の相互支配関係について解析を進めている。また、マウス長管骨より単離した骨細胞をコラーゲンゲルに包埋することにより、単離後72時間まで骨細胞としての性状を維持する実験系を確立した。このコラーゲンゲル包埋法を用いることで、活性型ビタミンDや副甲状腺ホルモン、無機リン酸などの液性因子の骨細胞に対する直接作用を検討することが可能となり、活性型ビタミンD及び細胞外無機リン酸による遺伝子発現制御についての解析し、Dmp1の発現が活性型ビタミンDにより抑制され、無機リン酸により増強することを見いだしている。
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Strategy for Future Research Activity |
Hypマウスより単離した骨細胞、骨芽細胞の遺伝子発現の詳細な検討により、Phexの機能喪失がFgf23に加えてDmp1及びFam20cの発現増加をもたらすことが明らかとなった。今年度は、骨細胞におけるこれらの分子の機能的連関について解析を進める。Phex、Dmp1、及びFam20cの機能の喪失がいずれも、Fgf23の発現増加を引き起こすところから、Fgf23レベルの上昇が逆にPhex、Dmp1、Fam20cの発現に影響を及ぼす可能性を考え、単離した初代骨細胞にリコンビナントFGF23を作用させ、Phex、Dmp1、及びFam20cの発現を検討する。 また、骨細胞におけるDmpの発現が細胞外無機リン酸濃度変化により変化することが明らかになったので、その機序について解析を進める。骨細胞への無機リン酸添加が種々のシグナル分子のリン酸化に及ぼす影響を網羅的に検討し、リン酸刺激で活性化することが示唆されたシグナル経路に対する阻害剤の添加がリン酸刺激によるDmp1の発現誘導に及ぼす影響を検討する。また、リン酸刺激で発現レベルやリン酸化状態が変化する転写因子を同定し、Dmp1発現制御への関与について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マウスの購入飼育、細胞培養、遺伝子組み換え実験、Western blot、real-time PCRに関連する消耗品に関連する費用が研究経費として必要である。 また、課題を円滑に遂行するため、培養細胞の維持、分子生物学実験の補助を担当する実験補助員を週1-2回程度雇用するので、そのための謝金を必要経費として計上している。また、国内外での学会において成果発表を行なうための旅費を計上している。さらに、本課題の成果にもとづき論文作成を予定しているので、英語論文校閲と投稿のための経費を計上している。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] An overgrowth disorder associated with excessive production of cGMP due to a gain-of-function mutation of the natriuretic peptide receptor 2 gene.2012
Author(s)
Miura K, Namba N, Fujiwara M, Ohata Y, Ishida H, Kitaoka T, Kubota T, Hirai H, Higuchi C, Tsumaki N, Yoshikawa H, Sakai N, Michigami T, Ozono K.
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Journal Title
PLoS One
Volume: 7
Pages: e42180
DOI
Peer Reviewed
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