2012 Fiscal Year Research-status Report
アルファ・シヌクレインオリゴマーの物性・細胞毒性機序の解明と分子標的治療への応用
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23591252
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
徳田 隆彦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80242692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 敏樹 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30264782)
中川 正法 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50198040)
渡邊 義久 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50363990)
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Keywords | α-シヌクレイン / オリゴマー / 神経細胞変性 |
Research Abstract |
平成22年に「溶液中のα-シヌクレイン(α-syn)は生理的に4量体であるオリゴマーとして存在する」という報告がなされ、その後、これに反論して「溶液中のα-synは特定の二次構造をとらない単量体である」という論文も発表され、α-synの分子形態については世界的に大論争が巻き起こっている。この溶液中のα-syn分子が4量体であるのか単量体であるのかという問題(4量体vs単量体問題)は、我々の研究の目的が溶液中のα-synオリゴマーの神経細胞毒性の分子機構を解明することであるので、本研究にとっても非常に根本的な問題である。したがって、我々もまず、溶液中のα-synの分子形態を明らかにする研究に取り組んだ。 溶液中のRec-α-synはゲルろ過クロマトグラフィーでは60-70kDaに相当する画分に溶出された。Rec-α-syn溶液を、タンパク質変性剤である8M尿素存在下で、限外ろ過法で分析した。溶液中のα-synは8M尿素を加えても100kDaの限外ろ過膜は通過したが30kDaの限外濾過膜は通過しなかった。髄液から得られたα-synでも同様の結果であった。生理的条件下では4量体で存在するトランスサイレチンは、8M尿素存在下では単量体に解離して30kDa膜を通過した。また、α-syn分子の140番目のアミノ酸をシステインに置換して人工的に2量体となるCys140-α-synを作製し、これをゲルろ過クロマトグラフィーで解析したところ、この合成α-syn2量体は約120kDaに相当する画分に溶出された。以上の結果は、α-synは溶液中では単量体として存在するが、分子のストークス半径が大きく、15kDaのタンパク質でありながら、ゲルろ過クロマトグラフィーや限外ろ過などのような分子の大きさに依存する分画法では60-70kDaのタンパク質のように振る舞う特異な分子であることが明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究申請の段階では、1)α-シヌクレイン(α-syn)オリゴマーの安定的な生成系の確立、2)神経細胞毒性を有するα-synオリゴマーの同定、および3)抗α-synオリゴマー抗体の作製、を主な目標としていたが、1)のα-synオリゴマーの安定的な作製は可能になったものの、2)の神経細胞毒性を有するα-synオリゴマーの同定に際して上記のような4量体vs単量体問題が本質的に重要であったため、今年度は溶液中のα-syn分子の存在形態を解明する研究に集中的に取り組んだ。その結果、α-syn分子はやはり単量体で存在している、とする科学的証拠を得られた。この4量体vs単量体問題に関しては現在もhotな論戦が国際的な科学雑誌上で展開されているので、我々の結果を発表することはα-synの研究領域に関係する研究者・医師にも大きなインパクトを与えると考えられる。また、我々の結果からはα-synオリゴマーは従来と同じゲルろ過クロマトグラフィーでその分子サイズを評価する事は不適当であり、我々が平成23年度に行ったような原子間力顕微鏡を用いた評価、あるいは我々が人工的なα-syn2量体の検討で明らかにしたようにα-syn単量体をゲルろ過クロマト上は60kDaの分子として評価することが必要であることが明らかにされ、このことも今後のα-syn研究において非常に重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、交付申請時の研究計画に回帰して、以下の研究を遂行する。 1)神経細胞毒性α-シヌクレイン(α-syn)オリゴマーの分子同定:平成23年度までに確立したRec-α-シヌクレイン(α-syn)オリゴマーを培養神経細胞系に添加して、α-synオリゴマーの神経細胞毒性を検討する。またこのような検討から、最も神経細胞毒性の強いα-synオリゴマー分子種の物性(分子サイズ、超微形態など)を明らかにする。 2)1)で明らかにした神経細胞毒性α-synオリゴマーに対する特異抗体を作成する。 3)1)で得られた結果を基にして、また2)で得られた抗体を用いてヒト脳脊髄液中に存在する神経細胞毒性α-synオリゴマーを同定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、培養細胞系を用いる研究、クロマトグラフィー・western blotting などの蛋白化学的研究、原子間力顕微鏡を用いた形態学的研究及び質量分析計を利用するプロテオミクス的研究を主体とするので、消耗品費として細胞培養・細胞毒性の検討に必要な種々の試薬・蛋白化学用の試薬・原子間力顕微鏡用の試薬及び質量分析器用試薬の費用、そして原子間力顕微鏡と質量分析計の維持費が必要である。また、本研究では、神経細胞毒性を有するα-syn オリゴマーに対するポリクローナルおよびモノクローナル抗体を作成することが中心的な課題であるので、抗体作成を委託する費用が消耗品費として必要である。その他の消耗品として、各種の抗体(抗α-syn 抗体、抗ニューロシン抗体など)、プロテアーゼ阻害薬、crosslinking 用試薬およびクロマトグラフィー用カラムの購入費が必要であると考える。クロマトグラフィーカラムは、α-syn オリゴマーの物性を検討する際およびヒト髄液中のα-synオリゴマーを精製・単離する際に分子ふるい・イオン交換などのクロマトグラフィーが必要不可欠である。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Cerebrospinal fluid proteomic patterns discriminate Parkinson’s disease and multiple system atrophy2012
Author(s)
Ishigami N, Tokuda T, Ikegawa M, Komori M, Kasai T, Kondo T, Matsuyama Y, Nirasawa T, Thiele H, Tashiro K, Nakagawa M
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Journal Title
Movement Disorders
Volume: 27
Pages: 851-857
DOI
Peer Reviewed
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