2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23591309
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
勝田 仁 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50333240)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永淵 正法 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00150441)
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Keywords | 再生医療 / 糖尿病 |
Research Abstract |
1型糖尿病の根治を目指し、ES 細胞やiPS 細胞などの多能性幹細胞をはじめとして種々の細胞から膵β 細胞を再生する研究が進められている。しかし、インスリン産生細胞を誘導できたとする報告は幾つかあるものの、生体内の膵β 細胞のように血糖値に応じてインスリン分泌量を微細に調整するような臨床応用可能な充分に機能的な細胞の作出には成功していない。申請者は、これまでの研究で、膵SP細胞が、インスリン産生細胞へ分化することを証明し、膵β細胞の前駆細胞である可能性が高いことを見出している。本研究では、膵SP細胞がインスリン産生細胞への分化するメカニズムを解明し、得られた情報を基に、膵SP細胞をインスリン産生細胞へ分化誘導する作用をもつ物質の探索を行い、充分に機能的な膵β細胞を安全に再生する技術の開発を目指している。 平成23年度には、この膵SP細胞を胎児膵組織内で培養する技術を開発し、インスリン産生細胞へ分化誘導すること成功した。 平成24年度は、膵SP細胞をインスリン産生細胞に誘導する作用を持つ化合物のスクリーニングシステムの確立に着手した。しかし、従来の細胞培養ディッシュでは、膵SP細胞の培養が困難であることが判明したため、ナノポリマーをコートした数種類の新規細胞培養ディッシュの開発を行い、いくつかディッシュが有用であるというデータを得た。 平成25年度には、膵SP 細胞をインスリン産生細胞へ分化誘導する物質のスクリーニングを実施し、いくつかの候補物質の同定に成功している。 現在、マウス生体内で膵SP細胞からインスリン産生細胞への分化を鋭敏に検出できるように、新たな遺伝子導入マウスの作製を行っており、このマウスを使って今回同定した候補物質が、マウス生体内でインスリン産生細胞を再生誘導するメカニズムを解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
充分な基礎データに基づいて研究を立案しており、下記の理由で若干の遅れはあるものの、研究自体は着実に進展している。 1.膵SP細胞がインスリン産生細胞に分化するメカニズムを解明する: 具体的には、①膵SP細胞を胎児膵組織内で培養しインスリン産生細胞へ分化誘導する。②インスリン産生細胞への分化の各段階にある膵SP 細胞をフローサイトメータにて回収する。③膵SP細胞がインスリン産生細胞に分化する過程での遺伝子発現の変化をマイクロアレイにて解析する、といった手順で研究を遂行した。 2.膵SP細胞からインスリン産生細胞への分化を誘導する物質を同定する: さらに、膵SP細胞をインスリン産生細胞に誘導する作用を持つ化合物のスクリーニングシステムの確立のため予備実験を行ったところ、従来の細胞培養ディッシュでは、膵SP細胞の培養が困難であることが判明したため、ナノポリマーをコートした数種類の新規細胞培養ディッシュの開発を行った。これらの新規開発ディッシュのうち、いくつかが有用であるというデータが得られた。 平成25年度には、膵SP細胞をインスリン産生細胞へ分化誘導する可能性が想定される候補物質のライブラリーを用いて、膵SP細胞インスリン産生細胞へ分化誘導する物質の選別を行い、いくつかのインスリン遺伝子の発現を誘導する物質を同定した。ただし、新規ディッシュの開発のため、膵SP細胞をインスリン産生細胞に誘導する作用を持つ化合物のスクリーニングの開始が、予定より6か月程遅延した。従って、次項の研究を完遂するため、研究期間を1年延長申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回同定した物質により分化誘導したインスリン産生細胞がグルコース応答性にインスリンを分泌するか検定する。さらに、この分化誘導したインスリン産生細胞を、膵β 細胞毒性をもつ抗生物質(ストレプトゾトシン)を投与することにより糖尿病を誘発したマウスに移植し、生体内でのインスリン分泌能を検討する。 また、同定した物質の生体内での作用を、正確かつ鋭敏に解析するように新たに遺伝子導入マウスを作製し、解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
膵SP細胞をインスリン産生細胞に誘導する作用を持つ化合物のスクリーニングシステムの確立を行ったが、従来の細胞培養ディッシュでは、膵SP細胞の培養が困難であることが判明したため、当初の研究計画に加え、ナノポリマーをコートした数種類の新規細胞培養ディッシュの開発を行った。さらに、同定した化合物の生体内での作用を、正確に解析するため、新たに遺伝子導入マウスを作製することとした。これにより未使用額が生じた。 現在、同定した化合物が、マウス生体内でインスリン産生細胞を再生誘導する作用を鋭敏に検出するため、新たに遺伝子導入マウスの作製を行っている。次年度に繰り越した研究費は、このマウスの作製およびこのマウスを使った化合物の生理作用の解析に使用するとともに、本研究成果を、学会や学術雑誌にて公表するための費用に充てる。
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Research Products
(2 results)