2011 Fiscal Year Research-status Report
患者由来iPS細胞を利用した骨髄異形成症候群病態解析モデルの構築
Project/Area Number |
23591373
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東條 有伸 東京大学, 医科学研究所, 教授 (00211681)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | iPS細胞 / 骨髄異形成症候群 / 初期化因子 / レンチウイルス / Cre/loxP |
Research Abstract |
1.3例の骨髄異形成症候群(MDS)患者より文書による同意を取得し、定期的に実施している骨髄検査と血液検査の余剰検体から、骨髄CD34+細胞と末梢血Tリンパ球(対照)をそれぞれ純化して凍結保存した。また、マウス胎仔からiPS細胞支持用の線維芽細胞(MEF)を多数調整し、同様に凍結保存した。2.豚テショーウイルス1(PTV1)由来の2A配列を挟んで4種類のヒト初期化因子(Oct4、Klf4、Sox2、Myc) cDNAをタンデムにつないだ融合cDNAを作製し、レンチウイルスベクターCSII-EF-MCSの3’LTR内にloxP配列を挿入したベクター(CSII-EF-MCS-loxP)のEF1αプロモーター下流に挿入した。これをパッケージングプラスミドおよびVSV-G発現プラスミドと共に293T細胞へ導入して感染ウイルスを調整後、濃縮したロットを凍結保存した。 なお、Cre発現アデノウイルスの感染実験によりCre/loxPシステムが機能することも確認した。3.予備検討用のヒト細胞株(PhL1)に感染させ、3日後にMEF上に撒き、5日後にES培養液に交換して以後培養を継続した。約3週間後に出現したヒトES細胞様の単層コロニーをピックアップし、別の培養皿に用意したMEF上に撒き、継代している。現在、樹立したiPS細胞について表現型、遺伝子発現、多能性、血球分化能を確認ちゅうである。4.臍帯血由来の正常CD34+細胞を用いて、ウイルス感染のための至適条件(添加するサイトカインの種類、培養時間、感染時間など)を予備検討している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
患者由来iPS細胞の作製には至らなかったが、無効造血と形態異常を呈する典型的な低悪性度MDS患者より検体の提供を受けることができた。また、4つの初期化因子を同時発現するポリシストロニック・レンチウイルスベクターの作製に成功したことは今後の研究進捗に重要である。なお、ヒト細胞株と臍帯血由来CD34+細胞を用いた予備検討に、当初の予定以上の時間を割いた。これは、数的・量的に限られる患者検体に可及的効率よくウイルス感染を行い、iPS細胞樹立に導くための至適条件の決定に必要と判断したためである。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. 前年度に検討した条件にもとづき、MDS患者由来iPS細胞を複数クローン樹立する。2. GATA2遺伝子エキソンIS上流の造血幹細胞特異的発現制御領域(G2-EHRD)に eGFP遺伝子をつないだ発現ユニットを有するベクターCS-G2-EHRD/eGFPをiPS細胞に導入する。また、iPS細胞株にCreリコンビナーゼ発現アデノウイルスを感染させ、ゲノム内に陥入したベクター配列を除去する。3. iPS細胞を胚様体(EB)培地で浮遊培養してEBを形成させた後、OP9ストローマ細胞上に播き直し、各種サイトカイン存在下で造血系へ分化誘導する。蛍光顕微鏡下でeGFP+(GATA2+)細胞の出現を観察し、FACSで回収したeGFP+細胞をMEF上に播種して、造血幹細胞誘導効率が高いiPS細胞クローンを選択する。上手くいかない場合には、CD34+細胞を回収する代替法も検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
iPS細胞の樹立とその解析に研究費を充てるため、ほとんどは消耗品(培養液、血清、培養器具、各種試薬)の購入に使用する予定である。備品は既存のものを使用するので、購入予定はない。
|