2012 Fiscal Year Research-status Report
ウイルス癌蛋白を標的とした成人T細胞白血病に対する治療薬の作用機構
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23591376
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
藤井 雅寛 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30183099)
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Keywords | ATL / HTLV-1 / USP10 / stress granules |
Research Abstract |
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は 成人T細胞白血病(ATL)の原因ウイルスである。亜ヒ酸を含む多剤併用療法がATLに対して著効を示すこと、及び亜ヒ酸がATL細胞にアポトーシスを誘導することが報告されている。この分子機構について下記を明らかにした。HTLV-1の癌蛋白Taxに結合する宿主因子としてUSP10を同定し、USP10欠損マウスおよびUSP10欠損繊維芽細胞株を樹立した。USP10遺伝子の欠損は亜ヒ酸によるアポトーシスを昂進っせた。このアポトーシスは、抗酸化物質NAC(N-acetyl cystein)により強く抑制されたことから、ROS依存性であることが示された。USP10の欠損細胞では、亜ヒ酸によるROSの産生が昂進するとともに、亜ヒ酸によるストレス顆粒(stress granules; SGs)の形成が低下していた。即ち、USP10を含むSG形成がROSを低下させ、それによってROS依存性アポトーシスを抑制していた。さらに、亜ヒ酸に加えて、熱ショックもROSを低下させ、このROSの低下もSG形成と一致して観察された。USP10とG3BP1は細胞内で複合体を形成していた、また、この結合がSGの形成、ROSの低下、アポトーシスの抑制に関与することがUSP10の変異体を用いた解析から示された。 亜ヒ酸は成人T細胞白血病(ATL)由来のT細胞株にアポトーシスを誘導し、このアポトーシスに対する感受性は、他のT細胞株(Jukat、MOLT4)よりも昂進していた。USP10の発現を低下させたJurkat細胞では亜ヒ酸によるアポトーシスが昂進したことから、USP10がT細胞の亜ヒ酸感受性に関与することが示された。以上から,ATL細胞株では、TaxがUSP10を介して亜ヒ酸に対する感受性を昂進させていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
成人T細胞白血病は極めて悪性の白血病であるが、効果的な抗がん剤は開発されていない。近年、亜ヒ酸を含む多剤併用療法が一部のATLに対して著効を示すことが報告されたが、どのATL患者に対して有効なのか、また、その分子機構については全く不明であった。我々は、HTLV-1のTax蛋白の発現がATLにおける亜ヒ酸に対する感受性を決めていることを明らかにした。従って、今後、Taxの発現の有無によって治療効果を予測できると考えている。さらに、宿主因子であるUSP10がATL細胞の亜ヒ酸感受性に関与することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
1,USP10による亜ヒ酸感受性を決める分子機構をさらに詳細に明らかにする。 2,USP10を分解するシグナル伝達経路を明らかにする。 3,亜ヒ酸は前骨髄性白血病細胞に対する極めて有効な治療薬として知られている。そこで、前骨髄性白血病細胞の亜ヒ酸感受性におけるUSP10の役割を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1、USP10欠損マウスの解析のためのマウスの飼育費 2、アポトーシスの分子機構の解明のために、培養細胞の解析を行う(培養プラスチック、血清など)。アポトーシス定量のための試薬。 3、USP10,G3BP1等の細胞内局在を検討するために各種抗体を使用する。
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Research Products
(11 results)