2011 Fiscal Year Research-status Report
TNFの細胞表面への輸送機構の解明と炎症性疾患制御への応用
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23591464
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
堀内 孝彦 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90219212)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田平 知子 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (50155230)
塚本 浩 九州大学, 大学病院, 助教 (70304772)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | TNF / 輸送 |
Research Abstract |
本研究では、TNFが産生、分泌されるために極めて重要なステップである「TNFの細胞表面への輸送」のメカニズムについて解明し、その結果をTNF産生細胞の制御へと応用することを目的とする。TNFは小胞体(ER)で翻訳され、ゴルジ体を経て、ゴルジ体から分離された小胞(vesicle)に乗って細胞膜まで輸送されて細胞表面に表出する。この過程でSNAREファミリー分子が重要な役割を果たしていることを示唆する報告がマウスの系では明らかにされつつある。 私どもはヒトにおける「TNFの細胞表面への輸送」メカニズムを明らかにするために、このSNARE分子に着目し検討を進めている。 まず私どもは、ヒト由来接着細胞株であるHeLa細胞、293T細胞を用いて、遺伝子導入によりTNFを恒常的に安定して産生する細胞株を樹立した。以後の実験はこれら細胞株を用いて行った。 SNARE分子のうちマウスでの知見などから有望と考えられた6分子(VAMP3, STX4, STX6, STX7, SNAP23, Vti1b)を選択し、それぞれの分子をRNAi法によって72時間後には完全に抑制する(knock out; KO)することをqPCRで確認した。 それぞれの細胞について、48~72時間後の培養上清中のTNF濃度をELISA法を用いて測定した。その結果STX4をKOした細胞ではコントロールに比べて54.9%までTNF産生が低下しており、VAMP3をKOした細胞でも68.2%、STX6をKOした細胞でも86.3%へとTNF産生が有意に低下していた。その他の3分子についてはTNF産生に影響を与えなかった。これらの結果、ヒトにおいてTNF産生にSNARE分子が関与していることがはじめて明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を推進するうえで、TNFを恒常的に賛成する細胞を樹立すること、多くのSNARE分子を確実にRNAi法で抑制する系を確立すること、は極めて重要なステップであった。初年度にこれらの系を確立することができたことが、研究目的の達成度がおおむね順調に進展していると判断した大きな理由である。 SNAREファミリー分子には38分子含まれ、小胞表面に存在するタンパク群v-SNARE (v; vesicle)、細胞膜表面のt-SNARE (t; target membrane)の二つに大きく分類される。これらv-SNARE とt-SNARE の相互作用によってTNF前駆体が細胞膜表面に輸送されることが予想される。これら多くの分子の中から選び出した分子のうち3分子が少なくともTNF産生にかかわっていることを見出した。時間的な余裕があればすべてのSNAREファミリー分子について網羅的にRNAiを行い、さらに関与する分子を同定する必要はあると思われるが、初年度としては大きな成果を上げることができたと考える。少なくともSNARE分子がヒトのTNF産生に関与していることを初めて明らかにできたことは今後の研究推進に当たって私どもの研究の方向の妥当性を示唆するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度にSNAREファミリー分子のうち3分子についてTNFの産生、輸送にかかわっている可能性を明らかにした。今後、これら分子以外にSNAREファミリー分子38分子の中にTNFの産生、輸送に関与する分子を探索する。その手法としては、網羅的にRNAi法による分子のKOを行いTNF発現の低下をHeLa細胞、293T細胞などのヒト接着細胞で確認する。さらに可能であれば、同様の手法を用いてTNF以外のTNFファミリー分子の細胞膜への輸送に関与する分子をさらに同定する。 さらにヒトにおいてTNFが強くその病態に関連すると考えられる疾患(とくに関節リウマチ、クローン病)について、SNAREファミリー分子が病態に関与しているかを明らかにする。さらに疾患モデルマウスを用いて機能解析を行う。関節リウマチ患者とその疾患コントロールとしての変形性関節症について、末梢血、滑膜組織のT細胞、B細胞、単球をセルソーターで分離して、着目したSNARE分子の発現をmRNAレベル、タンパクレベルで確認する。クローン病の生検腸組織においても同様の解析を行う。さらに炎症性疾患モデルマウスにおける SNAREファミリー分子の病態形成への役割の解析する目的で、レトロウイルスベクターに、着目したSNARE ファミリー分子のsiRNAをsubcloningし、関節リウマチのモデルマウス(CIA)の関節内に注入する。関節炎の改善がみられるか、TNFの産生が低下するかを検討する。 SNAREファミリー分子を標的にすることにより、TNF産生のより上流の最初のステップでのTNF産生制御が可能になると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基本的にはほとんどを消耗品で使用することになると思われる。 細胞の培地、分子生物学的手法(クローニング、シークエンス関連)、生化学的手法(ELISAやblotting、抗体やペプチドシークエンス)に使用する予定である。
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Research Products
(7 results)