2012 Fiscal Year Research-status Report
TNFの細胞表面への輸送機構の解明と炎症性疾患制御への応用
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23591464
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
堀内 孝彦 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90219212)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田平 知子 九州大学, 生体防御医学研究所, 講師 (50155230)
塚本 浩 九州大学, 大学病院, 助教 (70304772)
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Keywords | TNF / 輸送 |
Research Abstract |
本研究では、TNFの産生、分泌のメカニズムを解明するために、TNFの細胞表面への輸送、そして細胞表面に表出した膜型TNFの動態について検討し、その結果をTNF産生細胞の機能制御へと応用することを主たる目的としている。 TNFは小胞体(ER)でメッセージからタンパクへと翻訳され、ゴルジ体に運ばれて、さらにゴルジ体から分離された小胞体(vesicle)に乗って細胞膜まで輸送されて、細胞表面に表出する。この表出したTNFは膜型TNFとよばれ、TNF変換酵素によって細胞外の部分が切断されると可溶型TNFを放出する。我々が通常TNFと呼ぶ分子が可溶型TNFであり、膜型TNFはその前駆体である。TNFの輸送の過程でSNAREファミリー分子が重要な役割を果たしていることがマウスでは次第に明らかになってきている。 我々は今までの2年間において、研究の基盤となるTNFを安定して発現する細胞株を樹立することに成功した。ヒト由来接着細胞株であるHeLa細胞、293T細胞を用いた研究が可能になった。さらにマウスでの知見をもとに網羅的にSNAREファミリー分子をRNAi法によってKO(knock out)することを行いTNF産生への影響を検討した。その結果、STX4, STX6, VAMP3をKOした場合に最大50%のTNF分泌が低下していることが明らかになった。これら分子のKOでは培養細胞のTNF産生には影響がなかった。さらにTNFを恒常的に発現していないヒト培養細胞を刺激してTNF産生させる系においても同様に網羅的なSNAREファミリー分子のKOを行った。その結果STX4をKOした場合にもっとも強力にTNF分泌が抑制されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TNFを恒常的に発現する細胞は一連の研究を推進するうえで重要であり、その細胞株を樹立することは重要であり、その細胞株を樹立できたことは重要な一歩である。さらに40近くあるSNAREファミリー分子を網羅的に解析し、その中からTNF分泌に関与する分子を3分子程度に絞り込むことができた。マウスにおけるTNFの輸送、分泌にかかわる分子としてのSNAREファミリー分子の重要性は知られていたが、本研究によって初めてヒトにおいてもTNFの輸送、分泌にかかわる分子としてのSNAREファミリー分子の重要性が明らかになった。さらに重要な点は、恒常的にTNFを産生する細胞株を用いた検討だけではなく、通常の細胞株を用いた検討でも同様の結果を導き出せたことである。すなわち、刺激によってTNFを分泌する細胞株において、RNAiを用いて検討しSNAREファミリー分子が重要な役割をはたしていることを明らかにした。より生理的なTNF産生状態でのSNAREファミリー分子の意義を明らかにしたことは大きな意義がある。以上から達成度は順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
TNFが病態に関与する関節リウマチ、クローン病についてTNF輸送への関与が明らかになった3つのSNARE分子について患者検体を用いて検討する。すなわち末梢血、滑膜細胞のT細胞、B細胞、単球をセルソーターで分離して、3分子の発現の状態をメッセージレベル、タンパクレベルで検討する。 TNFは重要なサイトカインであるが、gene duplicationで生じたリンフォトキシン(LT)も強力な炎症性サイトカインである。LTはTNFと構造が類似しており、TNFと同様の機序で輸送、分泌が行われる可能性がある。TNFで輸送に関与することが明らかになったSNAREファミリー分子のなかの3分子について、TNFで検討した時と同様の方法を用いてLTの輸送への関与を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費として使用する。 培地、培養液、シャーレ、抗体などの購入にあてる。
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Research Products
(7 results)