2011 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザとエイズ感染の重症化を決定する致死的宿主応答因子の解析と治療法開発
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23591477
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
矢野 仁康 徳島大学, 疾患酵素学研究センター, 准教授 (40304555)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | インフルエンザ脳症 / エイズ脳症 / 高病原性鳥インフルエンザ / プロテアーゼ / ストレス蛋白質 |
Research Abstract |
我々は以前より、インフルエンザ感染時における血管内皮細胞の透過性亢進機序の一つとして、ウイルス感染による血管内皮細胞間の結合破綻に着目し解析を続けてきた。HUVECを用いた解析でこれまで、インフルエンザウイルスに感染すると、密着結合に重要な裏打ち蛋白質であるZO1の発現低下が引き起こされる事、この原因としてウイルスによるZO1のプロテアソームによる分解が促進される事を明らかにしてきた。一方、今回の解析では新たに、インフルエンザウイルスは血管内皮細胞間の接着結合破綻にも強く関与している事が分かってきた。実際、密着結合構成蛋白質であるoccludinやclaudinの発現が少なく密着結合が形成され難い血管内皮細胞では、接着結合(アドヘレンスジャンクション)破綻が、血管内皮細胞の透過性亢進に重要となってくる事から、今回はインフルエンザ感染による血管内皮細胞間の接着結合に与える影響を中心に解析を行った。その結果、1) インフルエンザ(PR8)に感染すると血管内皮細胞内のGSK3 beta が活性化される。2) 活性化されたGSK3 betaは、基質の一つであるアドヘレンスジャンクションの裏打ち蛋白質である beta-cateninをリン酸化する。3) beta-cateninがリン酸化されるとbeta-cateninのプロテアソームによる分解が誘導される。4) beta-cateninは分解される事でその発現が低下し、アドヘレンスジャンクション構成蛋白質であるVE-cadherinとの結合性を失う。5) これらの機序によって、インフルエンザに感染した血管内皮細胞間の接着結合が破綻し、血管内皮細胞の透過性が亢進する、等の研究成果を得る事ができた。現在、これら研究成果を基に、インフルエンザウイルス感染によって引き起こされる血管内皮細胞間接着障害機構の詳細の解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インフルエンザ感染憎悪(重症化)機構について、ウイルスによる血管内皮細胞間のアドヘレンスジャンクション(接着結合)障害機構を、初代血管内皮細胞培養系を用いて分子レベルで明らかにできたことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
インフルエンザウイルスによる血管内皮細胞間の透過性亢進機構について、培養細胞を用いてさらにその詳細を明らかにしていく。同時に、マウスを用いた動物実験で検証していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は実際の実験を施行するにあたり、培養細胞の継代維持、遺伝子組み換え操作が不可欠である。さらに、実験動物(C57/BL/6CrSlcマウス)、非ステロイド系抗炎症薬を含む試薬、各種特異抗体、合成や測定用キット等の購入が必要なため研究経費の多く(70%)は消耗品費に使用する。又、本研究で得られた研究成果を社会に発信するため、年2回の国内及びに年1回の国際学会での成果発表を行う予定にしておりそのための旅費として使用する。
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