2012 Fiscal Year Research-status Report
呼吸器感染症が慢性炎症を増悪させる分子病態の解明:異型肺炎とCOPD
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23591481
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
和田 裕雄 杏林大学, 医学部, 講師 (50407053)
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Keywords | 気道炎症 / マウス / 喫煙 / マイコプラズマ |
Research Abstract |
肺炎マイコプラズマ肺炎が慢性閉塞性肺疾患chronic obstructive pulmonary disease (COPD)を増悪させる原因となることが知られているいるが、本研究では、「両者に共通の分子メカニズムが存在する」という仮説を立て、これを検証することにより、末梢気道の炎症性疾患の発症と増悪の分子メカニズムを解明することが目的である。この研究目的のため、「喫煙曝露」および「肺炎マイコプラズマ肺炎」の動物モデルを作出・解析を以下の通り、行ってきた。 [1]喫煙曝露マウスモデルの作出と解析 本研究では喫煙曝露マウスモデルを確立してきた。本マウスは、短期間の喫煙曝露であるにも関わらず、好中球性炎症を誘導し、ヒトCOPD患者あるいはステロイド抵抗性喘息でみられる炎症と類似した分子病態であることが判ってきた。現在、本マウスを用いて、好中球性炎症発症のメカニズムを以下の通り検討している。(1)喫煙曝露が誘導する末梢気道炎症におけるIL-10の役割を検討する。 (2)好中球性炎症に有効なマクロライド系抗菌薬を投与し、その抗好中球性炎症のメカニズムを明らかにする。 [2]マイコプラズママウスモデルの作出 本研究では、これまでにマイコプラズマの菌体成分を用いてマイコプラズマ肺炎類似の状態となるマウスモデルを作成してきた。アジュバントを用いたマウスモデルでは、気管支に沿って炎症を認め、重症のマイコプラズマ肺炎と類似していることが示された。24年度は、アジュバントを使用しないマウスモデルを検討し、IL-17が好中球性炎症に果たす役割を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の遂行する上で必要な「喫煙曝露モデル」「マイコプラズマ肺炎モデル」ともに確立しつつある。「喫煙曝露モデル」を用いて、新規薬剤のスクリーニングを行った。また、遺伝子改変マウスを用いることにより、遺伝子スクリーニングも可能であることが示された。また、今後の解析に必要と思われる手法も上記の培養細胞を用いて検討されている。 以上の成果を国内外の学会(日本生化学会2012、European Respiratory Society 2012、ID WEEK 2012)、国際英文誌(J Pharm Exp Ther 2012, Inflammation 2012, F1000 Res)に報告し、高い評価を得つつある。また、本研究成果を含む総説も報告した(Recent Pat Inflamm Allergy Drug Discov 2013)。 以上の通り、①これまでに両マウスモデルを確立し、②薬剤スクリーニングを行った。③さらに、これらのデータは、英文雑誌に連載された。④次のステップである手法の予備的検討も行われている。 よって、研究はおおむね順調に進展していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
[目的]本研究では、これまでに喫煙曝露マウスモデルを作成、解析し、本マウスが薬剤スクリーニングに応用可能であることを示してきた。さらに、遺伝子改変マウスを用い、遺伝子スクリーニングにも応用可能であることを示しつつある。このような本研究の成果として、標的分子が明らかになると考えられる。さて、本研究では、同時に肺炎マイコプラズマ肺炎モデルマウスも作成・解析してきた。この結果、好中球性炎症に関するいくつかの標的分子の候補が判ってきた。今後は、この標的分子についても検討する。 [方法]遺伝子改変マウスおよび野生型マウスに喫煙曝露を行う。気管支肺法洗浄液 bronchoalveolar lavage (BAL)からenzyme-linked immunosorbent assay (ELISA)法にてタンパ濃度を、また、肺組織を採取し、定量的RT-PCRにて遺伝子発現を検討する。遺伝子改変マウスと野生型マウスを比較することにより、該当遺伝子が ①喫煙曝露で役割を果たしているかどうか、②喫煙曝露でどのような細胞内シグナル伝達に影響を及ぼしているか、を示すことができると考えられる。 [予想される結果]炎症抑制性遺伝子を欠損したマウスに喫煙曝露を行うと、該当遺伝子の発現欠損により炎症が活性化されることが予想される。 [遂行する際の課題]好中球性炎症の原因には、遺伝子にコードされていないメディエーターの関与を検討する必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本マウスモデルをより詳細に検討するため、遺伝子置換マウスを使用することになるが、この生産と飼育に研究費を使用する予定である。
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[Presentation] Enhanced neutrophilic inflammation in IL-10-deficient mice exposed to cigarette smoke via TNF-α regulation2012
Author(s)
Higaki M, Wada H, Mikura S, Yasutake T, Nakamura M, Niikura M, Kobabyashi F, Kamma H, Kamiya S, Takizawa H and Goto H.
Organizer
European Respiratory Society 2012
Place of Presentation
Vienna, Austria
Year and Date
20120902-20120905
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