2014 Fiscal Year Research-status Report
欠損型組換え麻疹ウイルスを用いた亜急性硬化性全脳炎の発症機構の解析と治療への応用
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23591510
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
綾田 稔 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90222702)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
扇本 真治 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (80292853) [Withdrawn]
佐久間 悟 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80570605) [Withdrawn]
小倉 壽 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (10115222) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 亜急性硬化性全脳炎 / 麻疹ウイルス / 干渉現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)患者より分離された麻疹ウイルスには、脳内で感染を拡大できる特徴的な変異が生じている。この特徴を逆に利用すれば、SSPEの特異的治療法を開発することが可能と考えられる。また、ゲノムの大部分を欠いた欠損粒子はウイルスの増殖を抑制することが知られており、この干渉現象を治療に応用できると考えている。 今年度は、H遺伝子欠損ゲノムおよびF遺伝子欠損ゲノムをもつ2種類のプラスミドをトランスフェクトすることにより、それぞれの欠損を補完する実験系を試みた。この実験系によりウイルスを作製することに成功したが、当初の目的のH遺伝子欠損型のウイルスのみを分離することはできなかった。おそらく、H遺伝子欠損ゲノムとF遺伝子欠損ゲノムの2種類のゲノムを同時にウイルス粒子内に保持したウイルスとしてのみ存在できるものと考えられた。そこで、今後は、この2種類のゲノムを持つウイルスを用いて実験を継続することにした。まずはこのウイルスを用いた干渉実験を今後試みる予定である。 その他、SSPE株のFおよびH遺伝子の構造と機能、神経病原性との関連性についての解析を前年度に引き続き検討した。特に、大阪2株のH蛋白のレセプター指向性の解析や神経病原性に関与する領域の特定に向けた実験を中心に行った。その結果、大阪2株ではH蛋白のC末端の変異がハムスターにおける神経病原性獲得に寄与していることが明らかになった。SSPE株のH蛋白が脳内の未知のレセプターを利用して感染拡大を行うための変異が生じている可能性が考えられ、それに関与するH蛋白の領域が明らかになると予想される。また、ヌードマウスへの感染実験により、M遺伝子の高頻度変異の再現に成功し、変異のメカニズムの一端を明らかにすることができた。これらの結果は、今後のワクチンの改良、安全性の担保にも有益な情報と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の目標のH蛋白を欠損するウイルスの作製は容易では無いことから、方針を転換し、2つのゲノムを有する組換えウイルスを作製してそれを利用する実験系にシフトすることにした。H26年度は新手法によるウイルスの作製に成功し、今後、重感染で麻疹ウイルスの増殖が抑制される回中を検討する予定である。その組換えウイルスのさらなる改変を進めている。一方、F遺伝子の解析に続いてH遺伝子の変異と神経病原性との関連を明らかにしてきたが、普遍性を確認するためには、さらなる組換えウイルスの作製とそれを用いた感染実験が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、H遺伝子欠損プラスミドとF遺伝子欠損プラスミドのコトランスフェクションの実験系により作製された2本鎖のゲノムを有する組換えウイルスの性状および神経病原性について、培養細胞における増殖実験およびヌードマウスの感染実験で解析する。そして、この組換えウイルスをSSPE株感染細胞に重感染させて干渉が起こるか否かを培養細胞における感染実験、およびハムスターの感染実験系で検討する。ウイルスを感染させたハムスターにおける脳内での挙動をウイルス学的、病理学的に検討する。また、ゲノムの欠損をさらに進めたウイルスの作製を検討する。その一つとして、片方のゲノムはF遺伝子のみを欠損し、もう片方のゲノムはF遺伝子のみをもつプラスミドを構築し、両者を用いてウイルスを作製し、比較検討する。 また、SSPE株のH遺伝子の構造と機能、神経病原性との関連性についての解析を前年度に引き続き検討する。特に、SSPE大阪1株、大阪3株のH蛋白のレセプター指向性の解析や神経病原性に関与する領域の特定に向けた実験を継続する。同時に、既知の麻疹ウイルスのレセプター(SLAM、CD46、Nectin-4)との結合能を消失させると予想される各種の変異をH遺伝子に導入したプラスミドを作製し、F遺伝子と共に細胞にトランスフェクションを行ってH蛋白とF蛋白を共発現させて細胞融合能を比較検討する実験により、レセプター利用能の有無を判断する解析を行い、SSPE株のH蛋白が未知のレセプターを利用して感染拡大を行っていることを証明し、さらにはそれに関与するH蛋白の領域を明らかにするための検討を行う。
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Causes of Carryover |
当初の計画より遅れが生じており、組換えウイルスの作製および動物実験に要した経費が少額であったために、次年度に繰り越して使用することが適切と判断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究費は、組換えウイルスの作製および動物実験に使用する他、塩基配列の決定等のための消耗品に使用する。特に新たな備品は必要ではないが、不可欠な備品の修理の必要が生じた場合には修理費に当てる。また、これまでに達成された結果をまとめて論文にするため、論文の校正・投稿・掲載のための費用を予定している。
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