2012 Fiscal Year Research-status Report
新規に確立したヒト組織モデルによるEBウイルス感染病態解析と薬剤スクリーニング
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23591564
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 嘉規 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (20373491)
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Keywords | Epstein-Barr ウイルス / ヒト組織モデル / 感染細胞 / 治療効果 |
Research Abstract |
Epstein-Barr ウイルス(EBV)は、ヒトに普遍に感染し、小児期では、伝染性単核症から、血球貪食性リンパ組織球症、慢性活動性EBV感染症、および移植後リンパ腫に至るまで広範な疾患の病因ウイルスとして知られている。EBVの初感染では、ウイルスが口蓋咽頭の上皮組織やBリンパ球に感染すると考えられているが、どのように感染が成立し、疾患に進展していくのかは解明されていない。また、EBV関連の悪性疾患では、EBVが通常の標的であるBリンパ球ではなく、Tリンパ球やNKリンパ球に感染していることが特徴であるが、こうした感染がいつ頃生じるのかはわかっていない。私共はEBV感染組織モデルを、ヒトの扁桃組織を用いて確立した。ヒトの扁桃組織は、EBVがヒトへの感染を成立させる局所であり、感染初期の状態を再現できると期待できる。この感染モデルの組織切片を加重染色することにより、感染細胞が特定できる可能性がある。このため、染色条件を様々なリンパ球表抗原用抗体を用いて検討し、使用可能な抗体候補を特定した。現在、EBVウイルス抗原と多重染色し、感染細胞を特定する実験を行っている。 EBV関連の悪性疾患ではウイルス感染リンパ球の増殖が重要な病因である。ラパマイシンは、放線菌が産生する化合物で、がんに対する増殖抑制効果がよく知られている。このラパマイシンが細胞に作用する際、mTORという名称の細胞内酵素が重要な役割を果たす。そこで、EBV感染細胞において、mTOR阻害薬による増殖抑制効果を、EBV感染細胞で検討した。その結果、細胞周期を停止させることによりEBV感染細胞株の増殖を抑制することが判明した。この効果をin vivoで評価するため、EBV感染患者から分離した感染細胞を投与したマウスモデルを用いて検討したところ、EBV関連腫瘍の増大に対する抑制効果や、血液中のEBV量の低下が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) EBV感染ヒト組織モデル、FISHによる感染細胞同定法、および感染細胞におけるEBV関連遺伝子発現定量法を利用し、EBVが病初期に感染する細胞(特にリンパ球)の性状を、細胞の表面抗原や発現遺伝子のパターンから明らかにする。-->感染した細胞表面抗原を染色して解析できたが、感染細胞数が少なく、十分な情報が得られなかった。そのため、現在は、組織切片を多重染色し解析を行っている。 (2) EBV感染モデルを用いて、細胞株でのみ抗ウイルス効果が報告されている薬剤や、研究中に新たに報告された新規薬剤候補のヒト感染組織における効果を検討する。-->細胞増殖抑制効果が知られているラパマイシンのEBV感染細胞株への効果を分子生物学的に解析し、感染モデル動物における抗腫瘍効果について検証した。 (3) 小児期の難治性のEBV関連疾患である血球貪食性リンパ組織球症や慢性活動性EBV感染症の末梢血中の感染細胞に関する性状解析を平行して行い、得られた結果とヒト感染モデルで解析した感染細胞の性状を比較検討する。さらに、(難治性EBV関連疾患の代表として)慢性活動性EBV感染症患者からEBV感染細胞を分離し、免疫不全マウスに投与することで、ヒトでの病態が再現できるかどうかを検討する。-->EBV関連血球貪食性リンパ組織球症における感染細胞の性状を経時的に解析した。また、EBV感染細胞を分離し、免疫不全マウスに投与することで、腫瘍を形成するマウスモデルを導入し、上記2)の解析に役立てた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) EBV感染ヒト組織モデルの組織切片を、ウイルス抗原と細胞表面抗原を多重染色することにより解析する。 (2) ラパマイシン以外の薬剤について新たに検討する (3) マウスモデルの導入はできたが、ヒト組織モデルにおける解析との比較を今後進めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ヒト組織モデルおよびマウスモデルを用いた実験には、多大な労力を要するため、実験助手の補助が必須である。また、研究成果の報告や当該分野の進展についての情報交換のため、国内外の学会への参加も予定している。研究に要する試薬類も購入する予定。
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[Journal Article] Application of flow cytometric in situ hybridization assay to Epstein-Barr virus-associated T/natural killer cell lymphoproliferative2012
Author(s)
Kawabe S, Ito Y, Gotoh K, Kojima S, Matsumoto K, Kinoshita T, Iwata S, Nishiyama Y, Kimura, H,
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Journal Title
Cancer Sci
Volume: 103
Pages: 1481-1488
DOI
Peer Reviewed
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