2012 Fiscal Year Research-status Report
ANGPTL4の糸球体内皮細胞障害及び小児進行性腎炎における役割解明
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23591570
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
香美 祥二 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (00224337)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 秀治 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 講師 (00380080)
六反 一仁 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (10230898)
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Keywords | 糸球体内皮細胞 / アンジオテンシノーゲン / ANGPTL4 / p63 / アンジオテンシン変換酵素 / 国際情報交換 イギリス |
Research Abstract |
小児の難治性腎炎の進展に関わる病因を明らかにし、その病因に影響をもたらす分子や作動メカニズムを明らかにすることは、新たな治療法開発のために重要であり本研究目的の主体をなす。我々は糸球体内皮細胞(GEC)が腎炎の進展に重要な役割を果たしていることに着目し、平成23年度の本科学研究費助成により、腎炎で誘導される多くの遺伝子からGECに影響する分子をDNAアレイ解析より検索した結果ANGPTL4を同定した。さらにANGPTL4と関連し発現が変化するシグナル分子として、腫瘍抑制転写因子p53ファミリー、p63蛋白を同定した。平成24年度は、レニンアンジオテンシン系(RAS)とANGPTL4がGECのp63蛋白発現にいかに関わっているかを検討するために、RAS、ANPTL4とp63の発現について腎炎への関与と、これらの蛋白の相互の関連性を調べた。今回の研究においてアンジオテンシノーゲン (AGT)、アンジオテンシンII (Ang II)及びアンジオテンシン変換酵素(ACE, ACE2)が、ヒト腎炎や動物実験モデルの糸球体内皮細胞で発現が増強していること、細胞増殖等の病態との関連が明らかとなった。さらにAGT、Ang II、ACE、ACE2の発現とANGPTL4、p63の発現が、糸球体細胞増殖病変と関連していることが明らかとなった。ANGPTL4が血管新生や透過性に関わっていること、p63が細胞増殖や細胞老化現象を左右する分子であることから、培養ヒトGEC(Bristol大学Peter Mathieson教授より供与)を用いてRASとANGPTL4の関連性とp63蛋白発現へ至るシグナル機構を検討している。本研究の成果は腎炎進行の端緒となるGEC障害でのANGPTL4の分子生物学的役割を解明する上で重要であり、GEC障害阻止に基づく腎炎の新規治療法の開発の基礎となる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の成果として、ヒト糸球体腎炎と動物実験モデルの免疫組織化学的検討で、ANGPTL4やp63蛋白の発現と同様に、アンジオテンシノーゲン (AGT)、アンジオテンシンII (Ang II)、アンジオテンシン変換酵素(ACE, ACE2)の糸球体発現が、蛋白尿などの臨床所見や腎組織におけるGEC障害、糸球体細胞増殖、ECM蓄積、炎症細胞浸潤と相関することが明らかになった。 以上から、AGT、Ang II、ACE、ACE2の発現とANGPTL4、p63の発現が関連して、糸球体細胞増殖病変形成に影響を与える可能性があると考えられた。ANGPTL4が血管新生や透過性に関わっていること、p63が細胞増殖や細胞老化現象を左右する分子であることから、現在培養ヒトGEC(Bristol大学Peter Mathieson教授より供与)を用いてレニンアンジオテンシン系とANGPTL4の関連性とp63蛋白発現へのシグナル機構を検討しており、現在までの解析データとシグナル解明の研究成果を整理することにより科学論文を作成し投稿する予定であり、研究目的がおおむね順調に進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究成果で、アンジオテンシノーゲン (AGT)、アンジオテンシンII (Ang II)及びアンジオテンシン変換酵素(ACE, ACE2)が、ヒト腎炎や動物実験モデルの糸球体内皮細胞で発現が増強していることが明らかとなったこと、AGT、Ang II、ACE、 ACE2の発現とANGPTL4とp63が関連していることが明らかとなった。ANGPTL4とp63が腎炎でのGEC障害に関連する可能性が示唆されたものの、これらの分子の腎炎進展に果たす詳細な役割はまだ十分に分かっていない。一般に、ANGPTL4が血管新生や透過性に関わっていること、p63が細胞増殖や細胞老化現象を左右する分子であることが指摘されているが、これらの蛋白の腎炎、特に糸球体内皮細胞障害での役割を明らかにするために、従来の研究計画に基づき、GECに対するANGPTL4作用のシグナル伝達経路解析を中心に研究を進めていく方針である。培養ヒトGECを用いて、ANGPTL4刺激後のANGPTL4とp63関連シグナル経路を探索する。現在まで、Ang IIによりストレス関連MAPキナーゼ (ERK1/2およびERK5)のリン酸化が関わっている可能性を見いだしているが、今後さらに細胞障害を誘導するAng IIシグナル経路を含めて検討することにより、Ang II-ANGPTL4-p63シグナル経路を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年の研究計画は1)レニンアンジオテンシン系とANGPTL4の関連性とp63蛋白発現へのシグナル機構を検討すること、2)現在までの解析データとシグナル解明の研究成果を整理することにより科学論文を作成し投稿することである。前者の研究は、培養糸球体内皮細胞を用いた培養実験が中心である。研究計画を通じて必要な細胞培養関連試薬や培地などの消耗品を主体に必要な物品を購入することを主な使用計画としている。また、研究成果を国内外で発表すると同時に論文作成を予定しており、学会参加に伴う旅費や論文作成に必要な経費への使用を検討している。
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Research Products
(22 results)