2012 Fiscal Year Research-status Report
びまん性絨毛膜羊膜ヘモジデローシスが胎児肺の成長発達に与える影響の解明
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23591593
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡邉 達也 東北大学, 大学病院, 助教 (70400380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 直 東北大学, 大学病院, 准教授 (50361100)
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Keywords | びまん性絨毛膜羊膜ヘモジデローシス / 新生児慢性肺疾患 / 胎児肺発育 / 鉄 |
Research Abstract |
本研究の目的は、新生児慢性肺疾患のリスク因子である「びまん性絨毛膜羊膜ヘモジデローシス(以下DCH)」が胎仔肺ならびに新生仔肺の成長発達に与える影響を解明することである。われわれはDCHを生じる病態で、胎児肺を損傷ないし成長障害させている物質として赤血球中の鉄に注目した。そこで妊娠期間22.5日のWKAH/Hkm妊娠ラットに対し予備実験を行った。妊娠21.0日の妊娠ラットを開腹子宮を露出し、羊水腔内にデキストラン鉄を注入し閉腹した。鉄注入後24時間の胎盤胎児面ならびに卵膜にはヘモジデリン沈着が観察され、DCHと同様な病理組織像であった(DCHモデルラット)。また、胎仔肺をモルフォメトリー解析したところ、肺胞半径は大きく、単位容積あたりの肺胞数は少なかった。この結果に基づいて、平成23-25年度にDCHモデルラットを用いて、新生仔ラットの肺の成長とサイトカイン、肺動脈中膜について研究を進める予定をたてた。 この実験系では妊娠後期に全身麻酔下で開腹術を行い、自然分娩で出生し、そのまま子育てをさせることが大きな障壁となる。そこで平成23年度には、開腹後妊娠ラットの自然分娩について予備実験を行った。他の研究者の私信からSDラットで実験を行ったところ、経産ラットの75%で開腹術後の自然分娩、育仔が可能であることが判明した。 上田らのWKAH/Hkmラットにおける報告では、実験対象となるラットと同じ予定日の妊娠ラットを準備した上で、帝王切開で娩出したラット胎仔を育てさせるプロトコールであった。平成24年度はWKAH/HkmラットでDCHモデルラットと同様な実験を行った。開腹術後の自然分娩、育仔は8例の妊娠ラット中1例のみで可能であった。WKAH/Hkm妊娠ラットではこの実験を行うことが困難であると判断した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成23年度の計画である「新生仔慢性肺疾患/DCHモデルラットの作成」に関して、WKAH/Hkmラットで開腹術後の妊娠ラットの自然分娩、育仔行動について検討を行った。妊娠21.0日に開腹し、羊水腔内に生理食塩水ないし鉄を注入し、自然分娩させた。計8例中出産、育仔は1例のみで観察された。以上より、上田らの研究で使用したWKAH/Hkmラットでは新生仔肺発育の評価が困難であることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
過去2年の実験結果から、次年度はSDラットで実験を行うことにした。妊娠21日のSDラット羊水腔内に生理食塩水ないしデキストラン鉄を注入し、自然分娩させる。日齢1,7,14,30,60に各群5例ずつ肺を採取し、新生仔肺のモルフォメトリー解析を行う。これにより、羊水腔内鉄暴露による新生肺発達への影響について解析することができる。また、生理食塩水ならびにデキストラン鉄羊水腔内投与後0,12時間後にベタメサゾン0.4mg/kgを母体投与し、日齢1,7,14,30,60に各群5例ずつ肺を採取し、新生仔肺のモルフォメトリー解析を行う。これにより、出生前ステロイドがDCHに暴露されて出生した新生仔肺発育に与える影響について解析することができる。 またそれぞれ出生直前に胎仔血ならびに羊水中のIL-6、IL-8、IL-1βを測定し、DCHにおける子宮内炎症の程度を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、予備実験の遅れにより、24年度の実験計画を次年度に延期することにより生じたものであり、延期した実験に必要な経費として、平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。
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