2011 Fiscal Year Research-status Report
脳発達におけるセロトニン神経系の役割を胎生期エタノール曝露モデルから考える
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23591595
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
福井 義浩 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (50144168)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 ひろみ 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 講師 (50294666)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | セロトニン / 脳発達期 / ラット / 5-HT |
Research Abstract |
本研究では、脳発達における5-HTの役割を明らかにすることを目的にしているが、平成23年度は、5-HT神経系の発達障害を有することが明らかな胎生期エタノール曝露ラットに対して5-HT1A受容体のアゴニストを投与し、脳発達障害が改善されるか否かについて検討した。 妊娠10-20日の間、ラットに対し2.5-5% (w/v)のエタノールを含む液体飼料を与えた。このラットにさらに妊娠13日~20日に5-HT1A受容作動薬であるイプサピロン(IP, 3mg/kg/day)又は5-HT1A受容作動薬作用が報告されている抑肝散(YK, 1g/kg/day)を腹腔内投与した。胎生20日で胎仔脳を採取し、脳内5-HTの定量と5-HT神経細胞の免疫組織学的解析を行ったところ、IPおよびYK投与群では胎生期エタノール曝露による5-HT神経細胞数の減少が有意に軽減されていた。またIP投与ラット仔の行動を8-10週齢で解析したところ、高架式十字迷路試験においてエタノール曝露ラットで認められるopen arm滞在時間の増加がIP投与により軽減していた。つまり、胎生期エタノール曝露による5-HT神経細胞数減少と不安様行動の異常は、5-HT1A受容体を介した5-HT作用を補うことにより軽減できることが明らかとなった。よって、胎生期の5-HTは、5-HT神経細胞数を維持する役割を持つ可能性、およびこの作用に5-HT1A受容体が関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胎生期エタノール曝露ラットに5-HT1A受容体作動薬を投与する実験は予定通りに行われ、前述の通りの成果を挙げている。胎生期セロトニン合成酵素阻害剤に5-HT1A受容体作動薬を投与する実験は現在も継続中であるものの、おおむね予定通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、平成23年度から継続中の胎生期セロトニン合成酵素阻害剤に5-HT1A受容体作動薬を投与する実験についてその成果をまとめ、胎生期エタノール曝露ラットに5-HT1A受容体作動薬を投与する実験と合わせて学会発表と論文投稿を行う。また、胎生期に5-HT受容体に対する各種拮抗薬に曝露したラットで5-HT神経系の発達を評価しする。平成25年度は胎生期エタノールまたは5-HT合成酵素阻害剤曝露ラットに5-HT2A受容体作動薬を投与し、同様に5-HT神経系の発達を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)当該研究費が生じた状況 研究補助の人件費を計上していたが、研究補助員を雇用せずに研究を行うことができ たため、その一部 (189,947円)を次年度に繰り越すことにした。(2)翌年移行に請求する研究費をあわせた使用計画 当初の計画では、平成25年度に英文校閲の費用を計上していなかったが、学会発表や 誌上発表のため英文校閲が必要となる見込みであるため、平成23年度からの繰越し分 をそれに充てる予定である。
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