2011 Fiscal Year Research-status Report
非線形光学顕微鏡による水・脂質の直接観察に基づいた肺胞環境の維持・破綻機構の解明
Project/Area Number |
23591600
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
池田 一成 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (00193194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 陽平 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60327583)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | サーファクタント / 肺胞上皮II型細胞 / 脂質分泌 / 非線形光学顕微鏡 |
Research Abstract |
非線形工学顕微鏡(以下CARS顕微鏡とする)はPump光(ωP)とStokes光(ωS)(ωP>ωS)を試料に入射し、試料分子との相互作用による角周波数ωCARS = 2ωP -ωSのコヒーレントな光、CARSを放出させる。O-H結合にシグナルを合わせると水分子の、C-H結合に合わせると主としてC-H結合を数多く持つ脂質からのCARSシグナル(イメージ)が観察される。CARSは、蛍光などには影響されず、非常に信号強度が強く、また、CARSは非線形な光学現象であり、優れた奥行き分解能を持っている。成人マウスから肺胞上皮II型細胞を採取し、専用培養シャーレのマトリゲル上で培養した。さらにCARS顕微鏡のC-Hモードで観察を行った。その結果、肺胞上皮II型細胞の細胞質に顆粒状の強いCARSシグナルを多数認めた。C-Hモードは脂質を観察できることから、肺胞上皮II型細胞中の肺サーファクタントを観察することができたと考えている。また、低浸透圧や薬剤刺激により肺サーファクタント細胞質内の移動の様子や開口分泌を認めた。肺胞上皮II型細胞が肺サーファクタントを産生・分泌していることは免疫染色、電子顕微鏡、培養液中のサーファクタント測定などの技術により広く知られている。しかし、実際、肺胞上皮II型細胞でサーファクタントがどのように産生され、蓄積し、分泌される動態がリアルタイムで観察されたことはなく、本研究が初めてその観察を行った。さらに、低浸透圧や薬剤刺激などでの開口分泌を認めたことから、今後、さらなる検討を行うことで、サーファクタントの産生・蓄積・分泌に関する制御因子の詳細なメカニズムの探索は肺胞の機能維持の理解を深め、新生児の慢性肺疾患の予防・治療にも大変重要な意味を持つと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)肺胞上皮II型細胞におけるサーファクタント細胞内動態および開口放出の観察23年度は成人マウスから肺胞上皮II型細胞の初代培養をCARS顕微鏡の専用培養器で安定して行えるようになり、肺胞上皮II型細胞の細胞質に顆粒状の強いCARSシグナルを多数認め、C-Hモードは脂質を観察できることから、肺胞上皮II型細胞中の肺サーファクタントを観察することができた。また、低浸透圧や薬剤刺激により肺サーファクタントの開口分泌を観察した。しかし、より詳細な検討までは23年度に行えず、37℃・5%CO2の顕微鏡用チャンバーを準備し、24年度に引き続き行う。2)肺胞上皮および上皮細胞膜の水透過性の測定方法の確立成人マウスの肺胞上皮II型細胞を初代培養し、5日間程度培養を行うとCystを安定して形成するようになった。ここまでに時間を要したため、水透過性の検討は24年度に行う。
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Strategy for Future Research Activity |
1)肺胞上皮II型細胞におけるサーファクタント細胞内動態および開口放出の観察23年度にCARS顕微鏡のC-Hモードを用いて低浸透圧や薬剤刺激により肺サーファクタントの開口分泌を観察した。しかし、この分泌観察は時間がかかるため、37℃・5%CO2の顕微鏡用チャンバーを準備し、より生体内の環境下で低浸透圧や薬剤刺激を行い、その制御機構を観察する。2)肺胞上皮および上皮細胞膜の水透過性の検討成人マウスの肺胞上皮II型細胞を初代培養し、できたCystにCARS顕微鏡のO-Hモード下で通常の水H2Oと重水D2Oを高速で切り替えながら、水透過性について観察を行う。さらに、炎症物質や薬剤による肺胞上皮、肺胞上皮膜での水透過性の変化を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究を実施するために、23年度の繰越金、24年度の直接経費から以下の研究費使用を計画する。なお、23年度に購入した機器が予定より少し安く購入でき、予定していた学会の参加費を当研究費から支払う必要がなかったため、23年度の繰越金が発生した。この繰越金を24年度の試薬・抗体購入費などに充当する。マウスの購入費・管理費 300,000円、試薬・抗体購入費 900,000円、実験器具購入費 400,000円、ソフトウェア費 100,000円、事務用品・消耗品費 60,000円、国内学会参加費 200,000円、通信費 40,000円。
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Research Products
(3 results)