2012 Fiscal Year Research-status Report
非線形光学顕微鏡による水・脂質の直接観察に基づいた肺胞環境の維持・破綻機構の解明
Project/Area Number |
23591600
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
池田 一成 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (00193194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 陽平 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60327583)
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Keywords | サーファクタント / 肺胞上皮II型細胞 / 脂質分泌 / 非線形光学顕微鏡 |
Research Abstract |
新生児期の肺胞環境の恒常性維持には肺水の除去、間質を含めた水の輸送、サーファクタント分泌など、水の輸送や脂質分泌が不可欠となっている。非線形光学顕微鏡の1つであるCoherent Anti-Stokes Raman Scattering (CARS)顕微鏡により肺胞上皮細胞でのサーファクタントの分布変化および開口放出などの動態をリアルタイムで観察することが可能となる。 本研究では成人マウスの肺胞上皮II型細胞を採取し、初代培養を行い、専用培養器のマトリゲル上に撒いて、CARS顕微鏡のC-H モードで観察を行い、その結果、肺胞上皮II型細胞の細胞質に顆粒状の強いCARSシグナルを多数認めた。肺胞上皮II型細胞が肺サーファクタントを産生・分泌していることは免疫染色、電子顕微鏡、培養液中のサーファクタント測定などの 技術により広く知られている。しかし、実際、肺胞上皮II型細胞でサーファクタントがどのように産生され、蓄積し、分泌される動態 がリアルタイムで観察されたことはなく、本研究にて初めてその観察を行っている。 昨年度はテルブタリンなどの複数の薬剤刺激により肺サーファクタントの開口分泌を観察した。 さらに、サーファクタント分泌を安定させる細胞条件、温度などについても検討を行った。 今後、さらなる検討を行うことで、サーファクタントの産生・蓄積・分泌に関する制御因子の詳細なメカニズムの探索は肺胞の機能維持の理解を深め、新生児の慢性肺疾患の予防・治療にも大変重要な意味を持つと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)肺胞上皮II型細胞におけるサーファクタント細胞内動態および開口放出の観察 本年度は成人マウスから初代培養した肺胞上皮II型細胞を専用培養器を用いてCARS顕微鏡で引き続き観察した。CARS顕微鏡のC-Hモードは脂質を観察できることから、肺胞上皮II型細胞中で産生・分泌されている肺サーファクタントを観察することができた。肺胞上皮II型細胞の細胞質に顆粒状の強いCARSシグナルを多数認め、また、低浸透圧やテルブタリンなどの薬剤刺激により肺サーファクタントの開口分泌を観察した。さらに、37°C・5%CO2の顕微鏡用チャンバーを準備し、温度条件も安定させて、肺胞II型上皮細胞での肺サーファクタントの開口分泌をより詳細に検討した。 テルブタリンなどの薬剤により肺胞II型上皮細胞はサーファクタントを分泌することが確認できた。 今後、サーファクタントの産生・蓄積・分泌に関する制御因子をさらに検討し、制御の詳細なメカニズムの探索は肺胞の機能維持の理解を深め、新生児の慢性肺疾患の予防・治療にも大変重要な意味を持つと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1)肺胞上皮II型細胞におけるサーファクタント細胞内動態および開口放出の観察 昨年度CARS顕微鏡のC-Hモードを用いて低浸透圧やテルブタリンなどの薬剤刺激により37°C・5%CO2の顕微鏡用チャンバー下での肺サーファクタントの開口分泌を観察した。しかし、この分泌観察は時間がかかるため、肺胞II型上皮細胞がより安定する条件を模索し、その条件で低浸透圧や薬剤刺激を行い、その制御機構をさらに詳細に観察する。 2)肺胞上皮および上皮細胞膜の水透過性の検討 成人マウスの肺胞上皮II型細胞を初代培養すると、数日後には肺胞II型上皮細胞のみでCystを形成する。このCystをCARS顕微鏡のO-Hモード下で通常の水H2Oと重水D2Oを高速で切り替えながら、水透過性について観察を行う。さらに、炎症物質や薬剤による肺胞上皮、肺胞上皮膜での水透過性の変化を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度の未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の試薬・抗体等の購入費に充てる予定である。 本研究を実施するために、昨年度の繰越金、本年度の直接経費から以下の研究費使用を計画する。 マウスの購入費・管理費 100,000円、試薬・抗体購入費 700,000円、実験器具購入費 100,000円、事務用 品・消耗品費 60,000円、国内学会参加費 200,000円、通信費 40,000円。
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Research Products
(1 results)