2012 Fiscal Year Research-status Report
早産・胎児炎症に関わるウレアプラズマ由来リポプチドの解析とDNAワクチン開発
Project/Area Number |
23591609
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Research Institution | Research Institute, Osaka Medical Center for Maternal and Child Health |
Principal Investigator |
柳原 格 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), その他部局等, 研究員 (60314415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中平 久美子 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), その他部局等, その他 (20581317)
西海 史子 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), その他部局等, その他 (60599596)
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Keywords | 早産ワクチン開発 / ウレアプラズマ |
Research Abstract |
わが国では年間 6 万人余りが早産(妊娠 22 週から 37 週未満)で出生し、早産率は約 6% である。早産児は呼吸器障害、神経障害などの合併症を伴うことがあり、早産原因の約半数に細菌感染や、病理的な絨毛膜羊膜炎(CAM)が認められる。臨床的には、感染性早産に対して抗菌薬の効果は低く、その制御は今尚困難となっている。当センター流早産胎盤における Ureaplasma spp.の分離頻度は42%であり、CAM の起因微生物として最も重要な細菌の一つである。これまでの研究で、Ureaplasma spp.の早産に関わる病原因子として外膜リポタンパクのmultiple banded antigen (MBA)を同定し、妊娠マウスにて早産や流産を引き起こすことを見出した。また、日本人の臨床分離Ureaplasma spp.の血清型を調べたところ、3型、6型の頻度が高く(両者合わせて全体の6割強)なっていることを明らかにした。次に3型、および6型のMBAをクローニングし、Hisタグや、アジュバント効果をもたらすためにC末端にCCPE配列を付加したMBA3-CCPE, MBA6-CCPEレコンビナント蛋白質を精製した。次にこれらのレコンビナント蛋白質にさらにCTなどのアジュバントを添加し、マウス経鼻に投与した。その後、血清IgG、IgA、気管鼻腔IgA、腸管IgA、腟IgAなどを測定したところ、CT添加投与群で非常に効率よくIgG、IgA産生が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、これまでに早産起因微生物としてUreaplasma spp.の重要性を疫学的に示してきた。当センターの状況ではあるが、13週から31週未満の流早産症例の42%から本菌が分離された(Ped Res, 2010)。一般検査では、感染・炎症が認められるものの起因微生物が不明なことが多く、これほどの頻度で感染性微生物が検出されたことは特記すべきことであろう。その理由として、Ureaplasma spp.はマイコプラズマ科の細菌であり、大きさがおよそ100 nm程度と大型ウイルス程度の最小生物であり、通常の光学顕微鏡による検鏡では見つからない。また培養方法が特殊で、我々のところでは培養方法を改良して行っている。さらに、平板培地におけるコロニーも非常に小さく、顕微鏡下でのコロニー観察を行う必要がある。Ureaplasma spp.は14の血清型に分類されるが、我が国における周産期分野でのUreaplasma spp.血清型別頻度の結果、日本人では3型、および6型の2種類で全体の6割を超えていることを示した。 一方、Ureaplasma spp.の病原因子の探索を行ってきた結果MBAがマウスにおいて早産を起こすことを示し、免疫反応は自然免疫のTLR2を介したNF-B経路の活性化であることも確認した(投稿中)。これらを総合し、3型、6型のMBAをワクチン候補分子とした。これまでのところ、CCPE、CTとのコンビネーションで効率よくMBA特異的IgAが誘導される結果を得ており、このことは腟など生殖器内における粘膜感染の防御の可能性を示唆する結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、我々の作製したワクチン候補分子が粘膜、特に腟内におけるIgAを効率よく誘導することが示された。この結果をもとに、マウスへの感染モデルを用いたワクチン効果の判定を行っていきたい。 さて、Ureaplasma spp.はどうやら細胞内寄生性があるようである。これまでの我々の検討で本菌は少なくとも1週間、ヒト培養細胞内で生存、増殖することが確かめられた。さらに長期間の持続感染についての検討をマウス培養細胞、およびマウス個体を用いて行う必要がある。 ワクチン効果の検証については、アフィニティーカラムを用いて、マウスIgA、IgGを精製する。これまでのところ、Ureaplasma spp.(3型)の感染モデルとしてマウスが用いられた報告はない。しかし、我々は、MBAを妊娠マウスに投与し、早産、流産モデルマウスを作製することに成功している。このことは、マウスが本菌による感染モデルとなる可能性を示唆している。そこで、妊娠マウス腟内に蛍光ラベルしたUreaplasma spp.(3型)を感染させ、その組織内移行性を調べると共に、ワクチン投与を行った群と対照群におけるUreaplasma spp.(3型)の腟内など生殖器内に存在する菌量を調べる。これらの方法により作製したワクチン効果について調べる。さらに、DNAワクチンの効果を調べる目的で、哺乳類細胞でのMBAの発現系を構築し、随時検証していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ワクチン効果の検証のために、培養細胞、動物実験等を行うための消耗品等(プラスチック製品、試薬、実験動物)の購入を行い、研究を遂行する。そのために当該年度からの繰り越しとして279431円をこれらの消耗品等の購入に充てる。
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Research Products
(18 results)