2013 Fiscal Year Research-status Report
脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いた培養皮膚の作製法の開発
Project/Area Number |
23591647
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
亀田 健治 愛媛大学, 総合科学研究支援センター, 講師 (60363264)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白方 裕司 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50226320)
|
Keywords | 再生医療 / 三次元培養 / 脂肪細胞 / 幹細胞 / 角化細胞 |
Research Abstract |
本研究の目的は、皮膚再生医療を推進し三次元培養皮膚の作製法を改良することを目的とする。我々はこれまでに羊膜を併用して三次元培養皮膚を作製することにより、簡便に三次元培養皮膚を作製できる方法を確立できているが、用いる細胞は皮膚由来の細胞であり、大量培養が困難であった。そこで、比較的大量に採取しやすい組織として脂肪組織に着目し、脂肪組織から間葉系幹細胞を分離培養し、分化誘導にて線維芽細胞と角化細胞を作製し、これら分化誘導細胞にて三次元培養皮膚を作製する方法を開発することを推進する。 簡易作製方法については十分に有用であることが期待できるが、実際の三次元培養皮膚作製時に用いる細胞は従来のままである。生検皮膚から表皮と真皮を分離し、それぞれ表皮角化細胞と真皮線維芽細胞を分離培養、大量に増殖させたものを用いなければならない。従って細胞の確保、培養に多くの時間と労力を費やす。また、ある程度の大きさの皮膚を採取する必要があるため患者の負担は多大なものとなる。 細胞の確保、培養法に関する開発についてはあまり進んでいない。それは角化細胞と線維芽細胞という、上皮系と間葉系の細胞を同時に大量に培養する技術が開発されていないことによる。この点を改良できる可能性として幹細胞が候補と成るであろう。胎性幹細胞から角化細胞を誘導し、その細胞を用いて三次元培養皮膚を作製することができたとの報告がすでになされており、iPS細胞や間葉系幹細胞からも角化細胞や線維芽細胞が誘導可能ではないかと考えた。このような学術的背景から本研究の発想に至っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)脂肪由来間葉系幹細胞の真皮構成成分としての検討。ブタ腱由来I型コラーゲン液に脂肪由来間葉系幹細胞を加えてカルチャーインサートに添加し、ゲル化させる。その後10%FCS/DMEMを適量インサートの内と外に添加し、5日間5%CO2, 37℃で培養する。5日後にゲルが収縮しているか確認する。ゲルの表面に羊膜を密着させ、数時間静置する。あらかじめ培養しておいたヒト表皮角化細胞を剥離し、羊膜の上に播種する。2日間培養後、空気曝露を行い重層化させる。現在、経時的にサンプルを回収し、HE染色、免疫染色、電子顕微鏡にて検索することを試みている。正常な表皮が構築されていれば間葉系幹細胞が真皮を構成できることが確認できる。 (2)脂肪由来間葉系幹細胞から分化誘導した角化細胞を用いた三次元培養皮膚の作製。上記で確認できた真皮成分に脂肪由来間葉系幹細胞から分化誘導した角化細胞を播種し2日間培養後、空気曝露を行い重層化させる。経時的にサンプルを回収し、HE染色、免疫染色、電子顕微鏡にて検索する。具体的にはHE染色にて形態学的な特徴を解析し、免疫染色にて基底膜構成成分(ラミニン5,IV型コラーゲン、VII型コラーゲン、α6β4インテグリン)、細胞間接着因子(Eカドヘリン、デスモグレイン1,3,α2インテグリン)、細胞骨格(ケラチン5,14,I,10)、分化マーカー(インボルクリン、ロリクリン、トランスグルタミナーゼ)などの発現を見ている。 (3)脂肪由来間葉系幹細胞から作製した三次元培養皮膚のin vivoでの機能確認。上記にて作製できた三次元培養皮膚をヌードマウス背部に移植し、生着性について検討する。さらに経時的にサンプルを回収し、HE染色、免疫染色、電子顕微鏡にて正常皮膚と比較検討し、その有用性、再現性について検討している。
|
Strategy for Future Research Activity |
国内、国外においても三次元培養皮膚の開発・改善に注目して研究している施設は全く見あたらない。培養表皮シートを自分たちの施設で作製し、移植を精力的に行っている施設は数施設存在するが、ほとんどがマウス3T3線維芽細胞をフィーダーレイヤーとして用いるものであり、安全性に関して疑問が持たれる。角化細胞の無血清培養法を採用している施設が散見されるが、これも海外の培養液を購入して培養しているだけであり、我々のように自分自身で新たな培養液を開発し、添加因子についても動物由来のものを全く使用しない培養液を開発している施設は存在しない。ましてや、患者の細胞を用いた、いわゆる自己三次元培養皮膚移植をコンスタントに行っている施設は我々以外では見あたらない。まだまだ、ゴールは遠いが、安全かつ安価な三次元培養皮膚の開発を試みたいと思っている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
培養液、その他増殖因子等の購入、また、発表または情報収集のための出張経費として計上する。 (1)試薬の購入 (2)日本分子生物学会の出張、国際皮膚科学会(コペンハーゲン)の出張
|