2012 Fiscal Year Research-status Report
複合型蛋白質蓄積症としての認知症疾患の病態解明を目指した病理生化学的研究
Project/Area Number |
23591694
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
新井 哲明 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (90291145)
|
Keywords | 認知症 / 蛋白質 / 蓄積 |
Research Abstract |
認知症性神経変性疾患患者脳に異常蓄積した蛋白質の性状および複合型蛋白蓄積による病態と臨床症状との関連性を明らかにするため、患者剖検脳を用いた病理生化学的解析を行った。本年度は特に、運動ニューロン障害を伴う前頭側頭葉型認知症について、下記のような新たな知見を得た。 まず、前頭・側頭葉皮質にFUS陽性の変性神経突起が多発し、下位運動ニューロンにリン酸化TDP-43陽性の神経細胞内封入体が出現するという複合型蛋白蓄積例の存在を初めて明らかにした。通常FUSは神経細胞内に蓄積するが本例では神経突起内に蓄積している点も非定型的である。この解析結果は、これまで指摘されていなかったFUSとTDP-43の複合型蓄積による運動ニューロン障害を伴う前頭側頭葉型認知症の発症、およびFUSの細胞内蓄積分布の多様性について初めて明らかにした点で意義が深い。 さらに、運動ニューロン障害を伴う前頭側頭葉型認知症例において非流暢性失語を呈する例が存在すること、その際の病理像はリン酸化TDP-43の神経細胞質内蓄積であり、失語を伴わない例と共通であること、言語中枢におけるリン酸化TDP-43蓄積の程度の違いがその背景である可能性があることなどを明らかにした。 以上から、蓄積蛋白質の複合のパターンおよび蛋白の蓄積部位が、認知症性神経変性疾患の臨床病型形成に影響している可能性が示唆され、さらに症例を重ねて検討する必要があると思われた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、複合型蛋白蓄積および蓄積蛋白の性状と認知症性神経変性疾患の病態および臨床症状との関連を明らかにすることである。平成23年度は、進行性非流暢性失語におけるリン酸化TDP-43の発語中枢への蓄積の意義、石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病におけるtau、α-synuclein、TDP-43の複合型蓄積とリン酸化TDP-43の脱抑制症状への関与を明らかにした。 平成24年度は、運動ニューロン障害を伴う前頭側頭葉型認知症について病理生化学的解析を行い、前頭・側頭葉にがFUS蓄積し、かつ下位運動ニューロンにリン酸化TDP-43が蓄積するという新たな複合型蛋白蓄積による病態が存在することを初めて明らかにした。さらに、リン酸化TDP-43の蓄積が認められる運動ニューロン障害を伴う前頭側頭葉型認知症において、進行性非流暢性失語を呈する例があることを明らかにした。 このように、神経変性を誘導する鍵分子の蓄積形態、分布、複合のパターンと臨床像に関する新たな知見を多数見出しており、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの2年間の研究により、主としてTDP-43およびFUSの蓄積形態や分布とその臨床病理像との関連性を明らかにしてきた。本年度は、TDP-43およびFUSに加え、神経変性を誘導する重要な分子であるtauおよびα-synucleinの蓄積形態および分布と臨床病理像との関連性について、剖検脳を用いた病理生化学的検討を加え、認知症性神経変性疾患の臨床病理像と蓄積蛋白との関連性および複合型蛋白蓄積の病態についてさらに明らかにする。 また、次年度は本研究の最終年度であり、それまでの解析結果を総合し、tau、α-synuclein、TDP-43、FUSという神経変性の鍵分子の複合型異常蓄積という視点を基本とし、従来の疾患分類との対応を比較検討し、整理する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|
Research Products
(26 results)
-
[Journal Article] Post mortem cerebrospinal fluid α-synuclein levels are raised in multiple system atrophy and distinguish this from the other α-synucleinopathies, Parkinson’s disease and Dementia with Lewy bodies.2012
Author(s)
Foulds PG, Yokota O, Thurston A, Davidson Y, Ahmed Z, Holton J, Thompson JC, Akiyama H, Arai T, Hasegawa M, Gerhard A, Allsop D, Mann DMA
-
Journal Title
Neurobiol Dis
Volume: 45
Pages: 188-195
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Progressive nonfluent aphasia: a rare clinical subtype of FTLD-TDP in Japan.2012
Author(s)
Aoki N, Tsuchiya K, Kobayashi Z, Arai T, Togo T, Miyazaki H, Kondo H, Ishizu H, Uchikado H, Katsuse O, Hirayasu Y, Akiyama H
-
Journal Title
Neuropathology
Volume: 32
Pages: 272-279
Peer Reviewed
-
-
[Journal Article] Molecular analysis and biochemical classification of TDP-43 proteinopathy.2012
Author(s)
Tsuji H, Arai T, Kametani F, Nonaka T, Yamashita M, Suzukake M, Hosokawa M, Yoshida M, Hatsuda H, Takao M, Saito Y, Murayama S, Akiyama H, Hasegawa M, Mann DMA, Tamaoka A
-
Journal Title
Brain
Volume: 135
Pages: 3380-3391
Peer Reviewed
-
-
[Journal Article] 32歳で発症した舞踏病様不随意運動を伴う前頭側頭型認知症の一例.2012
Author(s)
河上緒, 新里和弘, 新井哲明, 大島健一, 安野みどり, 湯本洋介, 小幡奈々子, 新井誠, 糸川昌成, 後藤順, 市川弥生子, 平安良雄, 岡崎祐士, 秋山治彦
-
Journal Title
老年精神医学雑誌
Volume: 23
Pages: 1121-1127
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
[Presentation] 進行性失語が前景に立った運動ニューロン疾患を伴う前頭側頭型認知症の二剖検例.
Author(s)
河上緒, 東晋二, 青木直哉, 新里和弘, 大島健一, 安野みどり, 羽賀千恵, 下村洋子, 鈴木京子, 勝瀬大海, 都甲崇, 小林禅, 辻浩史, 玉岡晃, 長谷川成人, 新井哲明, 土谷邦秋, 平安良雄, 秋山治彦
Organizer
第53回日本神経病理学会総会学術集会
Place of Presentation
新潟
-
[Presentation] ALSとTDP-43の生化学.
Author(s)
長谷川成人, 野中隆, 辻浩史, 玉岡晃, 吉田眞理, 村山繁雄, Mann David, 新井哲明, 秋山治彦
Organizer
第53回日本神経病理学会総会学術集会
Place of Presentation
新潟
Invited
-
[Presentation] Screening of the SOD1, TARDBP and FUS mutations and the pathological studies in Japanese cases with familial and sporadic amyotrophic lateral sclerosis.
Author(s)
Arai T, Arai M, Itokawa M, Yoshida M, Tamaoka A, Kobayashi Z, Hosokawa M, Hasegawa M, Nonaka T, Tsuji H, Yamada M, Matsui M, Kaji R, Nakashima K, Kuwano R, Takahashi S, Asada T, Akiyama H
Organizer
Alzheimer’s Association International Conference 2012
Place of Presentation
Vancouver, Canada
-
-
[Presentation] Three autopsy cases of FTD-MND with progressive aphasia.
Author(s)
Kawakami I, Higashi S, Aoki N, Niizto K, Ohshima K, Katsuse O, Togo T, Kobayashi Z, Hosokawa M, Tsuji H, Tamaoka A, Hasegawa M, Arai T, Tsuchiya K, Hirayasu Y, Akiyama H
Organizer
The 8th International Conference on Frontotemporal Dementias
Place of Presentation
Manchester, UK
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-