2011 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症死後脳の神経病理学的検討ー疾患モデル動物との比較ー
Project/Area Number |
23591701
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
入谷 修司 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座教授 (60191904)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 死後脳 / モデル動物 / 統合失調症 / 神経病理 |
Research Abstract |
今年度の研究実績は、第一に統合失調症のモデル動物における神経病理学的検討をおこなった。具体的には、統合失調症の遺伝子改変モデル動物である14-3-3εのノックアウトマウスの脳を用いて、ドーパミン神経系の指標であるTHの免疫組織学的技法による陽性細胞および陽性線維の発現を検討した。その結果、ドーパミンの起始核のドーパミン神経細胞の密度に変化は無かったが、一方で大脳皮質における陽性線維の短小化が観察された。このことは、14-3-3εが、神経軸索の伸長にかかわる機能を有しているDISC1遺伝子と連動して機能することからすれば、ドーパミン神経系の皮質におけるネットワークの形成不全が存在していることを示唆していると考えられた。また臨床的には統合失調症のhypofrontality(前頭葉機能低下)の病態の一部を示していると考えられ、臨床病態を神経病理学的に示したことは意義があり重要なエビデンスとなる。これは、国際雑誌に投稿し掲載された(Brain Res. 1392:47-53:2011 )。もう一つの業績は、統合失調症の死後脳を用いてマクロ所見について検討した。具体的には、脳病理標本を用いて統合失調症脳の関心領域の一つであるHeschl回、上側頭回の灰白質の断面積を測定し、加齢による脳形態変化について正常対照と比較検討を行った。灰白質断面積に対する加齢による影響は、対照と比較し有意な差は認められなかったが、灰白質と白質の断面積比に対して、加齢による影響に対照と有意な差が認められた。このことはこの疾患の脳の病態において、白質の脆弱性を示している可能性があり、近年の神経画像による軸索の変化の報告や、分子生物学的にはミエリン関連遺伝子の異常の報告と考え合わせ意義深い所見と考えられた。これは、国際雑誌に投稿し掲載された(Schizophr Res. 134:137-42:2012)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子改変疾病モデル動物における神経病理学的な神経ネットワークの変化について、THを指標にしてドーパミン神経系の機能不全を示唆する観察結果が得られた。(この成果は、国際雑誌に投稿して掲載された。)ヒト死後脳についても免疫染色をおこない、このようなモデル動物で観察された所見がヒト疾病脳で観察されるかを検討中である。すでに既報があるが、ヒト死後脳での組織学的検討には、技術的な問題があり、染色はえられるものの目下、方法・手技を検討・改善している。また、ヒト死後からの検討として、まずはマクロ観察ではあるが、この疾患における皮質と白質の関心領域のvolumeを計測し、白質の脆弱性を示すことができた。(この成果は、国際雑誌に投稿して掲載された。)これは、近年の神経画像の軸索の変化や、分子生物学的にミエリン関連タンパクの異常などの報告と関連づけられて、この疾患脳における白質の病態を考える上で重要な意味を持つと考えられる。さらに、このヒト死後脳における白質の病態解明について、ミエリン、グリア―ニューロンのインターラクションについて検討準備を整えた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年年度に引き続き、平成24年度においても遺伝子改変モデル動物(特に、今年度はDISC1ノックアウトマウス)をもちいて、ドーパミン神経系(TH、ドーパミントランスポーターなどを指標として)、GABA神経系ネットワークの変化(カルシウム結合タンパクを指標にして)や、ミエリンなどのグリアの神経の形態学的な変化(MOG、MAGなどを指標にして)を検討する予定である。そのうえで、以上のモデル動物で観察された組織学的な所見が、実際のヒト疾患脳ではどのように観察されるのかを同じ方法論で、同時進行ですすめていく予定である。ヒト死後脳の場合は、脳組織の状態が実験結果に大きな影響を及ぼすために、組織のサンプリングにより時間を割いて検討する必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度同様、研究費は、染色試薬(染色抗体、染色キット、組織ガラス板、組織保存液他)などの消耗品購入に充当する予定である。
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Research Products
(19 results)
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[Journal Article] Association of SNPs linked to increased expression of SLC1A1 with schizophrenia2011
Author(s)
Horiuchi Y, Iida S, Koga M, Ishiguro H, Iijima Y, Inada T, Watanabe Y, Someya T, Ujike H, Iwata N, Ozaki N, Kunugi H, Tochigi M, Itokawa M, Arai M, Niizato K, Iritani S et al
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Journal Title
Am J Med Genet B Neuropsychiatr Genet.
Volume: 159B
Pages: 30-37
DOI
Peer Reviewed
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