2012 Fiscal Year Research-status Report
病的肝の再生過程におけるオートファジーの分子機序解明
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23591989
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉住 朋晴 九州大学, 大学病院, 講師 (80363373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
調 憲 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70264025)
武冨 紹信 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70363364)
内山 秀昭 九州大学, 大学病院, 特任講師 (70380425)
池上 徹 九州大学, 大学病院, 助教 (80432938)
前原 喜彦 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80165662)
副島 雄二 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30325526)
山下 洋市 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00404070)
播本 憲史 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00419582)
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Keywords | オートファジー / 肝再生 |
Research Abstract |
細胞内蛋白質の分解と再編成に重要な働きを担っているオートファジーに着目し、正常肝及び病的肝(脂質代謝異常に基づく脂肪肝・非アルコール性脂肪肝炎・糖尿病・大量肝切除後など)の再生におけるオートファジーの役割を明らかにし、病的肝の再生過程におけるオートファジーの分子機序解明、を目的として研究を計画した。これまでに、オートファジー抑制により、細胞内ATP濃度の減少と細胞周期遅延、ミトコンドリア障害とβ酸化の低下、つまり、肝細胞内でHGFによる再生シグナルが入ると、オートファジーによるオルガネラ保護により、脂肪酸β酸化によるミトコンドリアでのATP産生が惹起されることを明らかにした。今年度は、まず薬剤(3-methyladenine, chloroquine)によるオートファジー抑制の影響を検討した。オートファジーの抑制によって、肝重量体重比の低下、BrdU取り込み率の低下、細胞周期調節タンパク質Cyclin D1の活性低下、細胞周期S期への移行低下、血清ALT値の上昇、肝組織ATP値の低下を認めた。次に、肝特異的にオートファジーを抑制する目的でオートファジー関連遺伝子(Atg5)ノックアウトマウスを作成し、オートファジー抑制が生体に及ぼす影響を検討した。Atg5ノックアウトマウスに対して90%肝切除を行うと、肝切除後生存率が有意に低下した。これの原因としては、BrdU陽性肝細胞の減少、つまり再生能が低下しており、さらに肝組織内ATP濃度の減少も明らかになった。また、Atgノックアウトマウスにおいては、肝切除後の肝細胞において、ミトコンドリアネットワークの形成障害が起こっている事が明らかとなった。今後、蛋白合成能の評価、脂肪酸プールに対する影響、ミトコンドリア膜のpermeabilityとその障害原因としてのROSの定量化を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、これまで培養肝細胞を用いて、細胞内ATP濃度の減少と細胞周期遅延、ミトコンドリア障害とβ酸化の低下、つまり、肝細胞内でHGFによる再生シグナルが入ると、オートファジーによるオルガネラ保護により、脂肪酸β酸化によるミトコンドリアでのATP産生が惹起されることを明らかにした。 今年度は、生体内におけるオートファジー抑制の影響を検討するため、 1)薬剤によるオートファジー抑制後にマウス肝切除を行い、肝重量体重比の低下、BrdU取り込み率の低下、細胞周期調節タンパク質Cyclin D1の活性低下、細胞周期S期への移行低下、血清ALT値の上昇、肝組織ATP値の低下を確認した。 2)オートファジー関連遺伝子であるAtgノックアウトマウスを作成し、さらに肝切除後生存率が有意に低下した。これの原因としては、BrdU陽性肝細胞の減少、つまり再生能が低下しており、さらに肝組織内ATP濃度の減少も明らかになった。また、Atgノックアウトマウスにおいては、肝切除後の肝細胞において、ミトコンドリアネットワークの形成障害が起こっている事が明らかとなった。 このため、実験計画はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 肝特異的オートファジーノックアウトマウスに、GFP-LC3型レンチウイルスベクターの導入(オートファジーの再活性化)を行い、オートファジーによる遊離アミノ酸プール・遊離脂肪酸プールの回復を確認する。同様にオートファジーによる肝組織ATP値、ミトコンドリア膜のpermeabilityの回復及びROSの低下を確認する。 2. オートファジー依存的な、ミトコンドリアを介したβ酸化及び肝脂肪分解によるエネルギー産生を検討する。肝切除後の再生肝においては、一過性に肝細胞内脂肪沈着が惹起され、エネルギー源となると考える。 70%肝切除後肝再生モデル(C3H/HeNマウス)において再生肝を経時的に採取。ズダンIII染色及び肝内中性脂肪の定量を行い、オートファジーKOによる肝再生に伴う肝脂肪化への影響を検討する。Real-time PCR法によるミトコンドリアβ酸化に関わる蛋白・酵素群(PPARα、Acyl coenzyme A oxidase 1, Calnitine palmitoyltransferase 1A, ACSL1など)の定量を行い、オートファジーKOによるβ酸化の減少を確認する。GFP-LC3型レンチウイルスベクターの導入を行い、オートファジーによる肝脂肪分解の回復及びβ酸化によるエネルギー産生の回復を確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物関連費用:マウスを用いた動物実験を行うため、動物購入費は必須である。C3Hマウスの購入(1頭2550円)・飼育(本実験施設では1頭 5円/日)に必要な費用と、肝切除モデルをその都度行った上で検体を採取する事を考慮すると、実験動物関連に研究費が必要である。 生化学的試薬の費用:オートファジー蛋白質・細胞周期関連の蛋白質・ミトコンドリア関連の実験系については、FACS・蛍光免疫染色・ウエスタンブロットにて評価するため、それぞれに特異的な抗体や実験キットの購入が必要である。 Real-time PCRに要する費用:ミトコンドリアβ酸化に関わる蛋白・酵素群の定量として、Real-time PCRを行う予定である。施行する上で、至適primer (reverse, forwardの2種)の購入、さらに関連酵素などの購入が必要である。
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Research Products
(10 results)