2012 Fiscal Year Research-status Report
消化器癌の悪性化機序を促進する炎症性因子の同定と制御に関する基礎的・臨床的研究
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23591992
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
上野 真一 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 特任教授 (40322317)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
夏越 祥次 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70237577)
迫田 雅彦 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (40418851)
石神 純也 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (90325803)
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Keywords | HCC / EMT / ZEB1 / E-cadherin |
Research Abstract |
H23年度には、肝細胞癌(HCC)のHMGB1発現と悪性化の関係を、臨床検体75例を用いて検索し、とくに発癌におけるHMGB1の役割に対する知見を得た。H24年度には、EMT(上皮間葉転換)に関与するとされるZinc finger E-box-binding homeobox 1(ZEB-1)の働きとEMTマーカーについての検討を行った。外科的切除が行われた初発HCC症例108例を対象として、ZEB-1およびE-cadherinの発現を免疫染色を用いて評価し、臨床病理学的因子、生存期間との関連性を検討した。①23例(21.3%)でZEB-1の発現がみられ、44例(40.7%)でE-cadherinの減弱がみられた。ZEB-1陽性とE-cadherinの減弱には相関が認められた。ZEB-1陽性群は、脈管浸潤、腫瘍病期と相関し、有意に予後不良(p=0.025)であった。②E-cadherin減弱は肝内転移、腫瘍病期と相関し、有意に予後不良(p=0.048)であった。ZEB-1陽性とE-cadherin減弱を組み合わせた群は、他の群と比較してより予後不良(5年生存率 29.5 vs. 62.2 %, p<0.005)であった。単変量解析では、ZEB-1陽性、E-cadherin減弱、脈管浸潤、肝内転移が予後不良因子とされたが、多変量解析では肝内転移(p=0.0086)のみが独立した予後不良因子と選定された。今回検討したHCCにおいてZEB-1陽性例は21.3%と少ないものの、その予後は有意に不良であった。また、E-cadherin減弱もHCCにおける予後不良因子であったが、ZEB-1陽性とE-cadherin減弱の組み合わせの群ではさらに予後が不良であった。これは、ZEB-1の発現によりE-cadherinの減弱が起こり腫瘍の性質が悪化したためと推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の3点を研究の目的としており、①に関しては平成23年度に検討された。今年度は、②に関して、とくにZEB1, E-cadherinなどに着目して検討し、肝癌における形質転換の可能性と悪性度の関係、またそれに関わる因子について知見が得られた。さらに③に関しても、実験的にまず膵癌皮下モデルで検討中である。よって、おおむね順調に進展していると判断した。 ①肝癌における組織炎症遷延化因子としてのHMGB1が、マクロファージ動態とくに腫瘍関連マクロファージ(TAM)に与える影響についてTLR-4レセプター系を中心に検討する。 ②それらの炎症性因子の癌形質転換・進展に対する関与の有無について検討する。 ③TAM(FRβ陽性細胞)を上記炎症の主体と仮定し、抗FRβイムノトキシン投与による抗腫瘍効果(浸潤・転移能の低下)を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
実験仮説に比較的沿った結果が得られていることから、以下の2点についてさらに研究を推進する。 ①ZEB-1の分子機構,EMT促進における役割等の解明。 ②HCCに対する新たな薬物治療戦略として、実際の動物モデルにFrBイムノトキシン投与を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(15 results)