2012 Fiscal Year Research-status Report
生体適合性ナノファイバーによる自己組織完全再生を目指した人工血管の開発
Project/Area Number |
23592026
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
石坂 透 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (10372616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松宮 護郎 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20314312)
黄野 皓木 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (40375803)
石田 敬一 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (40375671)
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Keywords | ナノファイバー / 人工血管 / 心臓血管外科学 / 生体組織工学 |
Research Abstract |
本研究は、生体適合性と生体分解性に優れた新素材、ポリグルタミン酸ナノファイバーに着目し、これを人工血管基材としてscaffoldに配することで、良好な自己細胞による血管壁構造の再構築が得られ、より早期にscaffoldに依存しない血管壁強度と優れた抗血栓性を有する人工血管の開発を目的としている。 平成23年度は、人工血管基材の至適な作成条件を決定する為のPilot studyとして、繊維形態保持・強度保持の観点から、異なる5種類の基材作成条件を絞り込んだ。 1)架橋剤10%配合ナノファイバーシートをPLLA織布にPGA溶剤を塗布し熱融着。2)架橋剤40%配合ナノファイバーシートをPGA溶剤塗布PLLA織布に熱融着。3)PGA溶剤塗布PLLA織布のみ。4)ポリグルタミン酸ゲル溶液をPLLA織布に塗布。5)架橋剤10%配合ナノファイバーシートを溶剤塗布PLLA織布に熱融着した後にリン酸緩衝液に浸漬。 以上、5種類の基材をラットの腹腔内および大腿部皮下に埋植。埋植後1、4、8週に摘出し肉眼所見とHE染色にて病理学的評価を行った。その結果、基材1)において埋植後1Wの早期より、基材ほぼ全面にわたる自己細胞の浸潤による被覆・肥厚が観察され、他の作成条件に比し細胞親和性・生体適合性に優れていることが示唆された。 平成24年度は、上記1)の条件で作成した器材を用いて、ウサギの腹部大動脈の血管壁一部を外科的に血管パッチとして置換、縫着する手術を施行。手術後は一定期間生育した後に経時的に摘出。形態学的、組織学的、免疫組織学的、生化学的、機械強度的な検討を加える。また比較対照としてポリグルタミン酸ナノファイバーを配していないポリ乳酸織布のみの血管パッチを使用し同様の手順で評価検討を行う。今後は検討結果を統括しポリグルタミン酸ナノファイバーシートの人工血管素材としての応用の可能性を評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度はpilot studyとして、ナノファイバーシートを異なる条件下にポリ乳酸織布と組み合わせて人工血管基材を作成。これをラットの腹腔内及び大腿部皮下に埋植し1,4,8週後に経時的に摘出した。摘出した標本を肉眼的・組織学的に検討した結果、オキサゾリン架橋剤10%配合ナノファイバーシートをポリ乳酸織布にPGA溶剤を塗布し熱融着して作成した人工血管器材において、他の条件で作成した人工血管よりも早期からの基材ほぼ全面にわたる自己細胞の浸潤による被覆・肥厚が観察され、細胞親和性・生体適合性に優れていることが示唆された。 本年度は、上記の条件で作成した人工血管器材を血管壁として実際に生体の動脈壁と置換し、器材の人工血管としての機能を従来の人工血管器材と比較して多学的に評価することを目的とした。Pilot studyで用いたラットは血管径が細く、器材の血管壁への移植が難しいためウサギを使用。当初はウサギの頸動脈および肺動脈の血管壁の置換を予定するも、頸動脈は血管径が小さく移植が困難であり、また肺動脈は術中の片肺灌流時の管理が難しい上、血管の長さの点からやはり血管置換手術が困難で耐術生存が得られなかった。代替方法として、吸入麻酔と局所麻酔の併用し腹部大動脈の血管壁の一部を人工血管器材で置換する方法を採用。手技の習熟による大動脈遮断時間の短縮・出血量減少・周術期管理の向上・抗凝固薬の投与量の調節・血管遮断中のshunt tubeの使用などにより耐術生存が得られた。今後は摘出標本に形態学的、組織学的、免疫組織学的、生化学的、機械強度的等の多学的な検討を加え、ポリグルタミン酸ナノファイバー配合器材が、血管壁として機能においても組織親和性、生体適合性による効果を期待できるか否かを結論づけたい。
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Strategy for Future Research Activity |
Pilot studyにより、最適と思われるポリグルタミン酸ナノファイバーを配した人工血管基材の至適作成条件が決定された。その人工血管基材を用いて、ウサギの腹部大動脈壁の一部を外科的に置換する移植実験を行っている。人工血管基材移植後のウサギを経時的に犠牲死させ、埋植した基材を周囲の自己血管壁ごと摘出し、形態学的、組織学的、免疫組織学的、生化学的、機械強度的な検討を加える。比較対照としてポリグルタミン酸ナノファイバーを配していないポリ乳酸織布を使用して同様の埋植手術ならびに摘出標本の検討を行っている。検討結果を統括し、ポリグルタミン酸ナノファイバーシートの人工血管素材としての応用の可能性を評価し、さらに将来への展望を示す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費は、動物実験助手の雇用のための人件費、ラビットInvivo移植実験に必要な実験動物、ならびに飼育費と、免疫組織染色に必要な抗体、生化学分析に必要な化学薬品、研究成果発表に伴う諸費用に当てられる。
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