2013 Fiscal Year Annual Research Report
生体適合性ナノファイバーによる自己組織完全再生を目指した人工血管の開発
Project/Area Number |
23592026
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
石坂 透 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (10372616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松宮 護郎 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (20314312)
黄野 皓木 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (40375803)
石田 敬一 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (40375671)
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Keywords | ナノファイバー / 人工血管 / 心臓血管外科学 / 生体組織工学 |
Research Abstract |
本研究はポリグルタミン酸ナノファイバーに着目し、これを人工血管基材としてscaffoldに配することで、良好な自己細胞による血管壁構造の再構築が得られ、より早期にscaffoldに依存しない血管壁強度と、優れた抗血栓性とを有する人工血管を開発することを目的とした。 ナノファイバーシートを異なる条件下に、ポリ乳酸織布と組み合わせ人工血管基材を作成し、これをラットの腹腔内・大腿部皮下に埋植し、1,4,8週後に経時的に摘出した。摘出した標本を肉眼的、組織学的検討の結果、オキサゾリン架橋剤10%配合ナノファイバーシートをポリ乳酸織布にPGA溶剤を塗布し熱融着して作成した人工血管器材において、他の条件で作成した人工血管よりも早期からの基材ほぼ全面にわたる自己細胞の浸潤による被覆、肥厚が観察され、細胞親和性、生体適合性に優れていることが示唆された。 次に上記の人工血管器材をウサギの腹部大動脈血管壁の一部と置換した。手技の習熟により大動脈遮断時間の短縮、出血量の減少、周術期の管理の向上、抗凝固薬の投与量の調節、血管遮断中のshunt tubeの使用などにより、耐術生存が得られた。その結果、手術は耐術するものの血管移植後ウサギ6尾全例において術後対麻痺の発症が観察され、術後生存期間は0日から最長23日、平均5日であった。摘出標本の肉眼所見では、全例において人工血管置換部分における血管内腔の血栓閉塞が確認された。 ポリグルタミン酸ナノファイバーシートを配した人工血管器材は、ラット皮下埋植実験において自己細胞の浸潤による被覆、肥厚が観察され、細胞親和性、生体適合性に優れていることが示唆されたが、ウサギ腹部大動脈壁の一部として置換する人工血管器材としての使用においては早期の血栓閉塞を来した。従って本器材は抗血栓性に乏しいことから、人工血管としての使用は困難であり、今後は創傷組織の治癒促進など別な用途での使用方法に期待できると考えられた。
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