2011 Fiscal Year Research-status Report
安全な脳梗塞治療法の開発:スタフィロキナーゼの応用
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23592082
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
嶋村 則人 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40312491)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 脳塞栓症 / 脳梗塞 / tPA / SAK |
Research Abstract |
I.ヒト心原性脳塞栓症と同じ病態のラット脳塞栓症モデルを新規に確立させた。左大腿動脈から0.15ml採血し、トロンビン10単位/50μlと混合。30分後に2分間の遠心分離を行い、血清を除去。血栓を4Fr Atom tubeに吸引採取し、ラット内頸動脈へ留置した24ゲージ留置針から注入する。これにて、ヒトにおける内頸動脈遠位端を閉塞させ、いわゆるT梗塞を作成する。本モデルはヒトにおける最重症脳塞栓症と同様の病態である。(投稿準備中)II. 健常ラットに麻酔を行い、Polyethylene glycol staphylokinase (PEG-SAK) 100μg/kgを経大腿静脈的に投与した。薬剤によると思われる急性死亡はみられなかった。麻酔覚醒後も特に神経脱落症状はみられなかった。III. 前述のラット脳塞栓モデルを作成し、90分後にPEG-SAK 100μg/kgまたは200μg/kgないし組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)100μg/kgを経大腿静脈的に投与した。24時間後に生存率、神経脱落症状を計測し、ラットを安楽死させた。現在までの成果であるが、(1)ラットに対しては、SAKの神経毒性は認められないようであったが、病理組織学的検討やタンパク発現などの詳細な機序については来年度に研究を進める。(2)SAKはラットの体内で血栓溶解作用を示すが、その血栓溶解作用はtPAとほぼ同様か、わずかに弱いようである。(3)血液脳関門についての検討では、脳浮腫を比較するとSAK, tPAともに同程度であったが、脳出血はtPAよりもSAKで少ない傾向であった。分子生物学的検討は来年度に研究を進める。(4)24時間後の評価では、tPA治療群とSAK治療群では神経症状および脳梗塞範囲は有意差を認めないようである。来年度以降は、採取検体を用いた病理・分子生物学的解析、薬剤の投与可能時間について検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)ヒト心原性脳塞栓症と同じ病態のラット脳塞栓症モデルを新規に確立させ、投稿準備中である。(2)ラットに対しては、SAKの神経毒性は認められない。(3)SAKを用いた脳梗塞治療については、SAKはラットの体内で血栓溶解作用を示すが、その血栓溶解作用はtPAと同程度ないしわずかに弱いようである。(4)脳浮腫はSAK、tPAともに同程度であったが、脳出血はtPAよりもSAKで少ない傾向であった。(5)24時間後の評価では、tPA治療群とSAK治療群では神経症状および脳梗塞範囲は有意差を認めない。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の標本を元に、血液脳関門の保持、神経障害、薬剤性障害の有無につき、病理組織学的検討やタンパク発現などの詳細な機序を検討する。ラット脳塞栓モデルを用いて、脳虚血後120分、180分、240分の各時間においてSAK 200μg/kgまたはtPA 100μg/kgを経静脈的に投与する。24時間の生存期間の後、神経症状、脳梗塞領域、脳出血の有無について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ラット、薬剤(SAK、tPA)、試薬などの消耗品が主体となる。24年度中期に多くの研究費を要する見込みである。前期と後期は論文投稿に伴う英文校閲料が必要とされる。
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