2011 Fiscal Year Research-status Report
MRI情報に基づいた脳腫瘍に対する温熱・化学療法の創生
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23592107
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
松前 光紀 東海大学, 医学部, 教授 (20209604)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
厚見 秀樹 東海大学, 医学部, 講師 (30307269)
黒田 輝 東海大学, 情報理工学部, 教授 (70205243)
今井 裕 東海大学, 医学部, 教授 (70138113)
今井 正明 東海大学, 医学部, 助教 (30459424)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | MRI / DDS / 抗がん剤治療 |
Research Abstract |
腫瘍組織にて最も高い薬理効果を発揮し、しかも周囲の健常組織への分布を抑制し、かつ腫瘍組織の温度上昇に応じて封入された抗ガン剤を放出する、温熱感受性リポソームを創薬した。リポソームには、ドキソルビシンを用いた。In-vitroの実験系においては、温度感受性ステルスリポソームの開発試験を行うが、具体的には37℃の結晶中でで封入された抗ガン剤が放出されず、しかも40℃にて血中へ放出が促されるように、リポソームの脂質組成を調整し、研究開発目標を達成した。ステルスリポソームの処方が終了した段階で、レーザー光を用いた組織加温実験をin-vivoで行った。ヌードラット大腸がん皮下移植モデルを使用した。(1)対照群は、リポソームにより封入されていないフリーのドキソルビシンと、血中から容易に網内系に取り込まれる(ステルス性を持たない)リポソームに封入されたドキソルビシンとした。(2)ヌードラット大腸がん皮下移植モデルの尾静脈から、フリーのドキソルビシン、非ステルスリポソーム封入ドキソルビシン、ステルスリポソーム封入ドキソルビシンを静注し、経時的に血中濃度を測定した。体外排泄されるフリーのドキソルビシンと、網内系に取り込まれる非ステルスリポソーム封入ドキソルビシンに対して、ステルスリポソーム封入ドキソルビシン投与群における24時間後の血中濃度(停滞率)が、ドキソルビシン総投与量の25%以上である場合、創薬されたリポソームのステルス性が良好と判断した。(3)次に網内系組織への取り込みを、組織内ドキソルビシン濃度で検証した。ドキソルビシン封入ポソームを静脈内投与し、24時間経過後の肝臓内の残留率が、フリーのドキソルビシンの10倍以上である場合、その組織内停溜性良好と評価した。以上の実験とその評価により、良好な血中停滞制と十分な腫瘍組織内濃度が得られる、ドキソルビシン封入ステルスリポソームが開発された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、細網内皮系組織に取り込まれにくく、血中に長時間循環滞留する特性を有し、かつ温度感受性に包埋された薬物を放出するステルスリポソームをの精度確認を行った。またMRI上で薬物分布の可視化を試みるため、ステルスリポソームにガドリニューム造影剤を同時包埋する技術を開発した。調剤が終了したステルスリポソームを用い、MRIで大腸がん皮下移植ヌードラットの腫瘍組織に,レーザーファイバーを挿入して組織を加温し、抗がん剤の血中濃度と組織濃度、および画像所見を検討し、リポソーム開発の成果を検証した。以上の成果を評価すると、おおむね研究目標を達成したと考えられる。平成24年度以降は、shope papilloma(VX2)脳内移植モデルを用いて、前年度に開発したステルスリポソームによるターゲッティング温熱化学療法の有用性を、MRI画像による腫瘍縮小率と病理組織所見から検証する。またMRI温度計測法の精緻化を行い、組織の温度変化を3次元表示する方法などの研究を遂行する。以上のような計画のうち、おおむね40%が終了したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降は、悪性腫瘍の脳内移植モデルを用いた、ターゲッティング温熱化学療法実験を行う。動物実験モデルとしては、MRIで撮像が容易な頭蓋骨の大きさと脳の容積を有すウサギを使用する。哺乳類ウイルス性腫瘍の一種であるshope papilloma(VX2)の細胞浮遊液(1X106 cell/0.025ml)を調製し、ウサギの右前頭部骨窓より前頭葉内に穿刺注入移植する。その後前頭葉内での腫瘍増殖を待ち、移植10日目にMRI装置を用いて腫瘍生着を確認した後、右前頭骨窓よりレーザー加温ファイバーを挿入し腫瘍組織を42℃に、腫瘍周辺の正常脳組織の浸潤部を40℃に加温する。その後各groupの脳組織を摘出し、腫瘍組織と腫瘍周囲健常組織における抗ガン剤濃度を測定し、ターゲッティング温熱化学療法の成果を確認する。治療効果の判定は、経時的なMRI撮影による腫瘍縮小率と、最終的には病理組織学的検討により行う。薬物動態の検討は、各groupの脳組織を摘出し、腫瘍組織と腫瘍周囲健常組織における抗ガン剤濃度を測定し、ターゲッティング温熱化学療法の成果を確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【設備備品】 研究を遂行するにあたって必要な設備・機器備品は、既に研究者が所属する研究期間で保有しているため、新たな購入は不要である。【消耗品】ヌードラット、ウサギなど実験動物の購入と飼育費用、麻酔薬などの動物実験用薬品、ステルスリポソーム調剤に必要な試薬、ステルスリポソーム内に封入するドキソルビシンなどの医薬品、shope papilloma(VX2)の細胞の購入費用を計上した。また、実験結果を記録する媒体、ガラス器具など実験器具消耗品、細胞培養などに必要な試薬の購入を計上している。また学術論文の別刷り代も最終年度には計上している。【旅費】成果発表に必要な経費を計上した。実験の経過を随時学会で年一回程度の頻度で報告し、他の研究者からの意見を取り入れ、研究の方向性を随時修正する。これに必要な旅費を、国内と海外に分けて計上した。【謝金】特に必要とせず。【その他】成果発表は初年度から実験の経過を随時学会で報告するが、研究の最終年度に研究成果を学術論文として集積し公開する。そのために必要な資料の複写と印刷に係わる費用を計上している。
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