2011 Fiscal Year Research-status Report
悪性グリオーマの浸潤シグナルを狙った分子標的療法の確立
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23592117
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中田 光俊 金沢大学, 医学系, 助教 (20334774)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | グリオーマ / 膠芽腫 / GSK3β / 浸潤 / シグナル伝達 / 分子標的療法 |
Research Abstract |
【目的】Glycogen synthase kinase (GSK) 3βは種々のがんの腫瘍形質に関与するセリン・スレオニンキナーゼである。我々は、活性化型GSK3βが膠芽腫において高発現し、腫瘍細胞の増殖能を亢進させることを報告し、GSK3βを標的とした再発膠芽腫に対する第I・II相臨床試験を遂行している。今回、GSK3βの膠芽腫浸潤への関与を検討した。【方法】グリオーマ細胞株(U87, T98G, U251, A172) をGSK3βの特異的阻害剤で処理し浸潤能と浸潤関連シグナル伝達の変化を解析した。【結果】GSK3β阻害によりすべてのグリオーマ細胞株の遊走・浸潤能は低下した。細胞形態を観察するとGSK3β阻害により細胞遊走に必須である細胞膜のlamellipodiaの形成が抑制されていた。この現象からlamellipodia形成に働くsmall GTPase;Rac1の活性化を調べたところGSK3β阻害により低下していた。またRac1の活性化分子であるguanine nucleotide exchange factors (GEFs)ファミリー分子のうちDock180, SWAP-70, ELMO1, TrioがGSK3β阻害と連動して発現が低下していた。さらに、Rac1周辺の浸潤関連分子の検索によりGSK3βはFAK/Rac1/JNK/MMP2経路により浸潤を制御していた。【結論】GSK3βはFAK/Rac1/JNK/MMP2から構成される遊走シグナル伝達経路を活性化し膠芽腫細胞の浸潤を促進することを明らかにした。GSK3βは膠芽腫の浸潤を規定する重要な分子であり、膠芽腫に対する有用な標的分子であることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに該当年度の研究到達目標であったGSK3βの膠芽腫浸潤への関与とその詳細なシグナル伝達を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の変更は無い。GSK3βの機能解析に加えAkt, Notch阻害剤を使用する実験も同様の手順で行う。さらに動物実験を開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には動物実験が必要となり動物購入・管理の費用が計上される。これ以外は細胞株を使用した分子生物学・細胞生物学的実験に必要な消耗品への充当とwestern blottingに要する抗体購入に伴う消耗品のための費用がほとんどである。また成果発表のための旅費、作成する論文のために校閲と投稿料の費用を確保する。
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Research Products
(15 results)