2012 Fiscal Year Research-status Report
下垂体幹細胞からホルモン分泌細胞への分化誘導法の開発と下垂体再生医療への応用
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23592121
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北条 雅人 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (60372588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
影山 龍一郎 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (80224369)
宮本 享 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70239440)
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Keywords | 下垂体 / 再生医療 / ES細胞 / Notch-Hes / Hes1 / Hes5 / Math3 / Mash1 |
Research Abstract |
申請者らは、これまでに、下垂体の発生においてNotch-Hes経路が幹細胞の分化を制御していることを証明し報告してきた。下垂体機能低下症が特定疾患に指定され、下垂体の再生医療開発への期待は高まっている。本研究では、引き続き下垂体における幹細胞の制御機構の解析を続け、さらに胚性幹細胞(ES細胞)あるいはiPS細胞から下垂体ホルモン産生細胞への分化誘導法を確立することを目的とする。さらに、移植治療を念頭において、骨髄間葉系幹細胞から下垂体ホルモン産生細胞への分化誘導法を開発することが最終的な研究目的である。 今年度では、ノックアウトマウスを用いた研究として、Nestin-Creマウスを使用し、神経性下垂体(下垂体後葉)を中心としたコンディショナルノックアウマウスを作成した。具体的には、Nestin-Creマウス、Floxed Hes1マウス、Hes5ノックアウトマウスを交配し、視床下部特異的にコンディショナルノックアウトマウスを作成した。また、Hesの下流因子であるNeuroD, Mash1, Math3の各組み合わせでのダブルノックアウトマウス、およびトリプルノックアウトマウスを作成した。これらのマウスの胎児の下垂体の解析を開始した。今後、この胎児の下垂体を解析していく予定である。 さらに、今年度、マウスES細胞、iPS細胞、骨髄間葉系幹細胞を用いた研究として、マウスES細胞、iPS細胞を用いて下垂体誘導実験を行う準備を整えた。具体的には、マウスES細胞、iPS細胞を維持し、分化誘導するための準備を整えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画のち、Nestin-Creマウスを使用した神経性下垂体(下垂体後葉)を中心としたコンディショナルノックアウトマウスの作成、および、Hes遺伝子の下流因子のNeuroD, Mash1, Math3のトリプルノックアウトマウスの作成が、最も時間がかかり、困難と考えられていた。今年度、このマウスが順調に作成でき、胎児を得ることができた。さらに、その下垂体の解析を開始することができた。 このことは、もっとも大きな進歩と考えられ来年度以降の解析を順調に行う準備が整ったといえる。さらに、今年度、マウスES細胞、iPS細胞を用いた研究体制も整え、来年度に研究をさらに進める準備が整った。 以上より、今年度の研究進行状況としては、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ノックアウトマウスを用いた解析としては、以下のとおりである。 1)Nestin-Creマウスを用いた系で後葉に焦点をあわせた解析。これらのマウスのE12.5、E14.5、E17.5の胎児の下垂体の解析を行う。各前葉ホルモンマーカー、PC2(中葉のマーカー)、Ki67などの抗体での免疫染色、BrdUの取り込み実験、pulse chase assay、TUNEL法等で解析する。 2)Hes1の下流因子のNeuroD、Mash1、Math3に焦点をあわせた解析。これらも下垂体に発現していることが知られている。神経系同様に互いに相補的に作用していることが予想されるため、かけあわせによってダブルノックアウト、トリプルノックアウトマウスを作成した。これらのノックアウトマウスのE12.5、E14.5、E17.5の胎児の下垂体の解析を行う予定である。各前葉ホルモンマーカー、Ki67などの抗体での免疫染色、BrdUの取り込み実験、TUNEL法等で解析する。 ES細胞を用いた研究としてはHes遺伝子群を一時的にES細胞に強制発現させ、下垂体前駆細胞への分化誘導を図る。すでに、Hes1、Hes5、Hesr1発現プラスミドは作成できている。このプラスミドを分化開始したES細胞にトランスフェクションする。これによって、Hes1、Hes5、Hesr1を一時的に強制発現させ、分化誘導を図る。さらに、FACSでのソーティングによって分化の効率化を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究費のうち、次年度使用額が発生した。この理由としては以下のとおりである。 当初、今年度にマウス骨髄間葉系幹細胞を用いた実験準備も整える予定であったが、ノックアウトマウスおよびES細胞を用いた実験に時間を大幅にさいたため、マウス骨髄間葉系幹細胞の準備が遅れたためと考えられる。次年度は、マウス骨髄間葉系幹細胞を用いた系の準備も行う予定であり、これに対して、次年度使用額を使用する予定である。 次年度は、引き続きコンディショナルノックアウトマウスの解析のために、研究費が必要となる。これに関する費用は、ノックアウトマウス維持費、抗体などの試薬類である。また、さらに、ES細胞に関しての研究で、予定している研究費の半分以上が必要と考えている。具体的には、ES細胞およびiPS細胞を培養し、分化誘導するための試薬類を購入する費用である。
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