2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23592178
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河野 博隆 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20345218)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門野 夕峰 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70401065)
平田 真 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (50401071)
中川 匠 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90338385)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 骨軟部腫瘍 / 性ホルモン |
Research Abstract |
骨原発悪性腫瘍の中で最も発生頻度が高い骨肉腫は、近年の治療成績の改善がみられない。その予後は、化学療法の効果に起因し、新規化学療法の開発が治療成績の向上につながる。 我々は、破骨細胞分化誘導因子RANKLが破骨細胞の分化・生存・骨吸収を促進するだけでなく、近年、腫瘍細胞に直接作用して腫瘍の増殖・転移を促進することに着目し、RANKLを標的とした新規治療の妥当性・有効性に関する解析を行っている 平成23年度は、まず、RANKLをターゲットにした治療法の妥当性の検討として、骨肉腫症例におけるRANKLならびにRANKL受容体RANK発現と臨床成績の関連性を調べた。 東京大学医学部附属病院整形外科においてこれまでに蓄積された骨肉腫症例の組織を用いて、免疫組織学的手法およびRT-PCRによってRANKLとRANKの発現をmRNAとタンパクレベルで検討している。この結果をもとに、RANKLとRANKの発現と臨床像との関連の検討を行う予定である。In vitroの実験として、まず、破骨細胞の分化・生存・骨吸収に対するRANK-Fcの効果の検討を行っている。マウスより採取した骨髄細胞をRANKL存在下で培養・分化させる実験系に、RANK-Fcを添加したところ、破骨細胞分化阻害効果がみられた。また、成熟破骨細胞にRANKLならびにRANK-Fcを各種濃度添加し、破骨細胞数の生存率を解析したところ、RANK-Fcによる破骨細胞の生存抑制が見られた。さらに、成熟破骨細胞をハイドロキシアパタイトコートディッシュ上に播き、48時間後に骨吸収窩を計測したところ、RANK-Fcによる破骨細胞の骨吸収能の抑制がみられた。以上から、RANK-Fcの破骨細胞の分化・生存・骨吸収能の抑制効果が確認できた。これと並行して、骨肉腫組織からの細胞株の樹立を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
骨肉腫症例におけるRANKLならびにRANKL受容体RANK発現と臨床成績の関連性について骨肉腫症例の組織を用いて、免疫組織学的手法およびRT-PCRによってRANKLとRANKの発現をmRNAとタンパクレベルで検討しているが、関連性に関する有意な結果は見られておらず、今後症例数を増やしてさらなる解析が必要であると考えている。 In vitroにおいては、RANK-Fcによる破骨細胞の分化・生存・骨吸収に対する阻害効果は確認できた。しかし、骨肉腫細胞株における腫瘍原生の効果に関する解析は行えていない。近年、RANKLをターゲットにした骨粗鬆症、癌の骨転移の新規治療として、ヒトモノクローナル抗RANKL抗体であるDenosumabの有効性が注目されている。これまでの破骨細胞の抑制薬であるBisphosphonateに比較してその効果が高いことに加え、その安全性についても報告されている。本研究の臨床応用を目的とした場合、すでにRANKLをターゲットにした治療の有効性、安全性が報告されているDenosumabを用いた研究がより望ましいと考えられ、現在、Denosumabを用いた研究について検討を行っているところであり、In vitroでの研究の進行が遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
骨肉腫症例におけるRANKL、RANK発現と臨床成績の関連性について今後症例数を増やしてさらなる解析が必要であると考えている。さらに、RANKとRANKLの発現と予後あるいは化学療法効果との相関を調べていく予定である。 In vitroの実験として、RANK-Fcに代わり、ヒトモノクローナル抗RANKL抗体であるDenosumabを用いた実験を推進していく予定である。Denosumabの破骨細胞の分化・生存・骨吸収に対する効果の確認を行ったうえで、腫瘍原生に与える影響に関する実験として、接着非依存性の解析、増殖能の解析、所侵入能の解析、遊走能の解析、組織分解能の解析を行っていく。また、骨肉腫症例からの腫瘍細胞株の樹立を引き続き行っていく予定である。 In vitroの実験で有効性が確認されたら、In vivoの実験を推進していく予定である。骨肉腫細胞株をヌードマウスの脛骨に移植するマウス骨肉腫モデルを用いてDenosumabの治療効果と副作用の検討を行う。また、Denosumabの治療効果と骨肉腫のRANKL/RANKの発現レベルとの関連も解析する。具体的には、(1)Denosumabの治療効果の解析、(2)RANKLとRANKの発現レベルと予後の相関の検討、(3)Denosumabの治療効果とRANKLとRANKの発現レベルの関係の解析を行っていく。さらに、破骨細胞を介さないRANKシグナルの直接効果の解析と免疫系への関与の解析として、(1)肺転移巣への直接的な抑制効果の検討、(2)破骨細胞の存在しない軟部におけるDenosumabの効果の解析、(3)マウス骨肉腫細胞株LM8モデルを用いた解析を行っていく予定である。 マウスを用いた実験で安全性ならびに有効性が確認された段階で、東京大学医学部附属病院の臨床試験部に臨床試験を申請し、自主臨床試験を行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
骨肉腫症例におけるRANKL、RANK発現と臨床成績の関連性について今後症例数を増やしてさらなる解析を引き続き行っていく上で、RT-PCR関連試薬、組織免染試薬などの費用、これらを解析するコンピューターおよび解析ソフトが必要である。 In vitroの実験を推進していく上で、ヒトモノクローナル抗RANKL抗体であるDenosumabや各種試薬が必要であること、また、市販されている骨肉腫細胞株であるSaOS2、MG63、LM8の3種類の骨肉腫細胞株の購入も予定している。これらおよび骨肉腫細胞株を用いて、腫瘍原生に関する検討を行っていく。これには、接着非依存性の解析のためにpoly-HEMAコートディッシュ、増殖能の解析のためにMTTアッセイ試薬、遊走能の解析のためのBoyden chamber法とscraping assay法の実験器具・試薬、組織侵入能の解析のために、マトリゲルコートディッシュによるinvasion assay法の実験器具・試薬、組織分解能の解析のために、MMP-2、9の産生と活性化をみる zymography assayの実験器具・試薬が必要である。 In vivoの実験を推進して行く上で、マウス、移植する細胞株、マウス解析においてRANKL、RANK発現量をRT-PCR, Western blotで確認するために用いる各種試薬、組織解析のための各種試薬が必要である。 また、これらの実験結果が出た場合には、学術集会における成果発表、学術誌への投稿を行う費用が必要である。
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