2011 Fiscal Year Research-status Report
軟骨肉腫幹細胞に注目した、新規軟骨肉腫治療法の開発
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23592192
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松本 嘉寛 九州大学, 大学病院, 助教 (10346794)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 和 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教 (40422711)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 骨軟部腫瘍 / 軟骨肉腫 / 腫瘍幹細胞 |
Research Abstract |
軟骨肉腫(Chondrosarcoma: CS)は、腫瘍性軟骨の形成を特徴とする悪性腫瘍である。化学療法・放射線治療に抵抗性で現在でも予後不良であるが、病態解明は進んでいない。本研究では、軟骨肉腫の悪性化機構を特に軟骨肉腫幹細胞に注目して解析し、軟骨肉腫予後改善のための新規治療法の開発を目指す。 軟骨肉腫臨床サンプルを用いた解析に先立ち、まず本年度は軟骨肉腫細胞株を用いた解析を行った。脱分化型軟骨肉腫よりより樹立された培養細胞株には多分化能をもつ幹細胞様の性質を持った細胞が含まれている可能性がある。本研究では、脱分化型軟骨肉腫(脱分化型CS)細胞株NDCS-1(新潟大学、生越先生よりご供与)を含むCS細胞株より、以下の方法を用いて幹細胞様細胞を濃縮、精製を行うとともに、脱分化型CS細胞株とこれまで報告されている癌幹細胞株における遺伝子発現変異の差異を検討した。また、軟骨肉腫臨床サンプルを用いた、免疫染色やmRNAを含めた遺伝子産物を抽出する方法についても予備実験を行った。その結果、NDCS-1を用いることで、効率に軟骨肉腫幹細胞の濃縮が可能であると予想される結果が得られた。さらに、実際の臨床サンプルを用いた実験方法の基盤も確立されたため、次年度で有望な結果が得られることが期待される。また、これらの悪性化機構の解明は、薬剤耐性を持つ軟骨肉腫に対する新規治療法の開発につながることが予想され臨床的な意義は高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、以下の研究成果が得られているため。Spheroid colony assayは非接着性のプレートで培養し,球状のコロニーを形成させる方法であり、神経幹細胞の純化、培養法として開発された。継代を繰り返すことで、幹細胞様細胞が濃縮されると予想される。NDCS-1をこのSpheroid colony assayを用いて培養した結果、濃縮された細胞では幹細胞性に関与する遺伝子(Stemness genes)であるOct3/4が高発現していることを、PCR法にて確認した。ES/iPS細胞などの多能性幹細胞で、細胞分化に関わる遺伝子群は、ヒストンの活性化とポリコーム複合体による抑制を同時に受けていおり、癌幹細胞においても同様の機構があることが報告されている。また、代表的なポリコーム複合体としてBmi1やEZH2があることが知られている。本年度は、NDCS-1におけるBmi1やEZH2の発現が、他のより分化度の高いCSより樹立された細胞株よりも高いことを明らかとした。この結果は、NDCS-1はCS細胞株の中でも未分化な状態を保っていることを示唆する重要な所見である。
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Strategy for Future Research Activity |
CS幹細胞における幹細胞性維持機構の解明のため以下の手法にて研究を推進する (1) ポリコーム遺伝子の機能阻害: NDCS-1において、Bmi1やEZH2の発現をsiRNA法などを用いて阻害する。阻害に伴い、II型コラーゲンやアグリカンなど軟骨細胞への分化に伴い上昇することが知られている遺伝子の発現が増加するか、また細胞増殖が変化するかについて検討する。ポリコーム遺伝子群は抗がん剤の薬剤耐性にも関与していることが報告されているため、ポリコーム遺伝子の発現阻害に伴う薬剤耐性の変化についても解析を加える。(2) 網羅的解析: NDCS-1細胞において、対照細胞とポリコーム遺伝子群の発現を阻害した細胞との間の遺伝子発現の変化をDNA microarray, miRNA microarray法にて検討する。さらに、細胞から分泌され周囲の細胞へと影響を与える因子をLuminex法を用いて検討する。いずれの手法も網羅性が高く、大量かつ高精度の結果が得られると予想される。ポリコーム遺伝子群の下流で機能する候補遺伝子を同定後は、lentivirusを用いた強制発現やsiRNAを用いた遺伝子阻害を細胞レベルで行い、それらの遺伝子の詳細な機能を解析する。(3)in vivoにおける解析: NDCS-1細胞はヌードマウスにおいて、未分化成分と分化した軟骨成分を含む脱分化型軟骨肉腫の組織型を持つ腫瘍を形成する。この腫瘍より、microdisection法を用いて、未分化成分、分化成分を独立にサンプルとして採取、遺伝子発現の変化を特にポリコーム群遺伝子に注目して行う。また、siRNAによるポリコーム遺伝子の発現抑制が腫瘍増殖能に変化を与えるかどうかに関しても検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の研究を推進するにあたり、以下の要領にて研究費を使用する予定である。また、得られた成果の論文、発表に関わる経費、旅費にも研究費を使用する予定である。(1) ポリコーム遺伝子の機能阻害: 使用する主な手法としてはsiRNA法, Real time PCR法などの分子生物学的手法とともに、各種培養細胞を用いた細胞生物学的手法がある。それぞれに必要な、各種試薬、細胞培養用消耗品などに研究費を使用する予定である。(2) 網羅的解析: 主に、DNA microarray, miRNA microarray法、Luminex法といった網羅的解析を行う。研究にあたっては、市販されている各種キットを使用する必要がある。また、得られた結果については、Bioinformaticsを用いた解析が必要であり、ソフトウエアの購入もしくは、外注による解析などに研究費を使用する予定である。(3)in vivoにおける解析: NDCS-1細胞はヌードマウスにおいて、未分化成分と分化した軟骨成分を含む脱分化型軟骨肉腫の組織型を持つ腫瘍を形成する。実験動物の購入、飼育に必要な維持費、microdisection法や遺伝子導入に必要なアテロコラーゲンなどの購入に研究費使用予定である。
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