2011 Fiscal Year Research-status Report
血小板ミトコンドリアの呼吸機能とCa2+取り込み能に対する吸入・静脈麻酔薬の影響
Project/Area Number |
23592267
|
Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
野口 将 東京医科大学, 医学部, 講師 (70343522)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩瀬 直人 東京医科大学, 医学部, 助教 (40408141)
安藤 千尋 東京医科大学, 医学部, 助教 (50420980)
富野 美紀子 東京医科大学, 医学部, 助教 (30459523)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 国際研究者交流 / スウェーデン |
Research Abstract |
麻酔薬暴露時の血小板ミトコンドリアの呼吸機能を時間経過に従い測定し比較検討することで、麻酔薬の有する臓器保護作用もしくは細胞障害作用を解明し、より安全な周術期医療を確立する事を目的とし、健康成人ボランティアより採取した血液サンプル(全血)から白血球、血小板を分離した後、高感度オキシグラフであるオロボロスTMを用いて、ミトコンドリア呼吸鎖の機能を解析した。血小板ミトコンドリアにセボフルラン(0.4,1.6,3.2,8mM)とプロポフォール(5,30,60,150μg/ml)を暴露した(各濃度n=5~7)。その後、酸素消費量を測定し、組織呼吸の変動からミトコンドリア呼吸鎖の各複合体(I~V)の機能を解析することで麻酔薬の影響を検討した。その後、酸素消費量を測定し、組織呼吸の変動からミトコンドリア呼吸鎖の各複合体(I~V)の機能を解析することで麻酔薬の影響を検討した。統計はANOVA Dunnettの多重比較検定を用いた。セボフルラン(0.4mM)とプロポフォール(5μg/ml)の低濃度暴露では、複合体IおよびIIで酸素消費量の増加を認め、セボフルランで有意であった(p<0.001)。セボフルラン(8mM)とプロポフォール(150μg/ml)の高濃度暴露では、酸素消費量の低下を認めた。酸素消費量の抑制は、複合体Iが複合体IIに比べて、強かった。臨床濃度の麻酔薬暴露でミトコンドリア呼吸能は亢進した。酸素消費量増加による生体への影響は明らかではないが、保護的にも障害性にも働きうると思われる。ミトコンドリアの呼吸を抑制した濃度は、セボフルランで臨床濃度の20倍、プロポフォールは 30倍という高濃度であった。一方、セボフルランの抑制作用は臨床濃度の4倍から認められた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度研究計画は、(1)麻酔薬が白血球、血小板ミトコンドリア呼吸能に及ぼす影響の検討および(2)麻酔薬が白血球、血小板ミトコンドリアCa2+取りこみ能に及ぼす影響の検討であった。健康成人ボランティアより採取した血液サンプル(全血)から血小板を分離後、高感度オキシグラフであるオロボロスTMを用いて、ミトコンドリア呼吸鎖の機能を解析した。まず、麻酔薬を暴露しない、日本人のコントロールとなるデータを解析した。麻酔薬が血小板ミトコンドリア呼吸能に及ぼす影響の解析はデータ集積を進め、学会発表の準備中である。麻酔薬が血小板ミトコンドリアCa2+取りこみ能に及ぼす影響および麻酔薬が白血球ミトコンドリア呼吸能、Ca2+取りこみ能に及ぼす影響についてはデータの集積中であるため上記の様な評価とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、全身麻酔が血小板ミトコンドリア、白血球呼吸能に及ぼす影響の検討をしていく予定である。麻酔導入で静脈麻酔薬のミダゾラム(0.04mg/kg,01mg/kg)またはプロポフォール(1mg/kg,2mg/kg)、麻酔維持としてプロポフォール(TCI2,4 mg/ml:プロポ群)または吸入麻酔薬のセボフルレン(1,2MAC:セボ群)とイソフルレン(1,2MAC:イソ群)および麻薬性鎮痛薬フェンタニル(50mg,100mg)を用いた全身麻酔下に3~5時間の呼吸器外科予定手術で、集中治療室に入室予定の患者のうち、適格基準を全て満たし、かつ除外基準に抵触しない場合に本研究を施行する(各麻酔法10名ずつ)。採血は術前、術中(手術開始2、4時間、終了時、術後第一病日)に行い、白血球、血小板を分離した後、オロボロスTMを用いてミトコンドリア呼吸鎖の機能を解析し、各群の相違について比較検討を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費は、物品費として、採血のための必要物品(シリンジ、採血針、採血用スピッツ等)、実験用器具(ガラス器具、手術器具等)、薬品(試薬薬品および研究器材・消耗品)の購入に充てる。また、オロボロスTMを用いた測定系の指導を受けるため、スウェーデン・ルンド大学のワレンベルグ脳神経科学研究所に在籍し本研究の研究協力者であるEskil Elmer等への人件費及び謝金とする。旅費として、予定している国際学会および国内学会での発表時のものとする。その他、印刷費等に使用する。
|