2012 Fiscal Year Research-status Report
ファージデイスプレイ法より前立腺癌の癌特異抗原に対し単離した完全ヒト型抗体の研究
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23592353
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
白木 良一 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (70226330)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星長 清隆 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (30229174)
赤堀 泰 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 助教 (80221711)
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Keywords | 前立腺癌 / 癌特異抗原 / 抗体療法 / ファーズデイスプレイ / 完全ヒト型抗体 |
Research Abstract |
前立腺上皮細胞の構造蛋白であるProstate specific membrane antigen (PSMA)は、内分泌療法下で増幅されることが実験的に証明され、分化度の低い前立腺癌に強く発現が増強する傾向や、大部分の固形腫瘍の新生血管構造においても発現すると報告されている。こ のことから、臨床応用可能な前立腺癌マーカーとしてだけでなく、診断、治療における標的分子として有望と考えられている。 藤田保健衛生大学総合医科学研究所抗体プロジェクトでPhage display法を用いてヒト抗体ライブラリー【antibody intended for multiple screenings(AIMS)5ライブラリー】を樹立した。この抗体ライブラリーから現在までにファージ・デイスプレイ法を用い、ICO S法(J Immunol Methods. 351:1-12、2009)によりPSMAに対する抗体(75-10)を単離した。 臨床検体として本学倫理審査委員会に研究計画および患者説明書、同意書等を提出し、厳正な審査により認可されたものにより患者同意を得た前立腺がん患者の前立腺がん組織、良性組織部分、前立腺肥大症患者の切除前立腺肥大症組織を用いた。染色についてはPSMAに対する抗体だけでなく、他の癌種に反応を有した他の抗体(EpCAM, ALCAM, MCP等)も用い検討した。抗PSMA抗体および既に抗原決定されている抗体(15種類)を用いて前立腺癌組織20例、良性前立腺組織20例に対して免疫組織染色を行なうことにより、ヒト抗体ライブラリーで単離に成功した抗PSMA抗体の有用性を検討した。PSMAの染色性については既に特異的な反応性が確立されており、今後は本抗体を用いて前立腺癌の悪性度や浸潤度、転移巣と原発巣での染色性(抗原の発現性)の違いに付いても検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前立腺がん細胞株であるLNCapのFACSによる検討において、LNCaPには反応し腎がん細胞株であるCCFRC1には反応しないことが確認できた。PSMA遺伝子ノックダウンを行った細胞と行わなかった細胞において抗体クローン75-10のPSMA分子認識能を比較したところ、PSMA遺伝子ノックダウンを行った細胞では、75-10の認識が低下していることが確認できた。 抗PSMA抗体および既に抗原決定されている抗体(15種類)を用いて前立腺癌組織20例、良性前立腺組織20例に対して免疫組織染色を行なうことにより、ヒト抗体ライブラリーで単離に成功した抗PSMA抗体(75-10)の有用性を検討した。既にICOS法を用いてAIMS-5 library より単離し認識抗原が決定された抗体として、MCP、ALCAM、JAM-1、ICAM、PSMA(75-10)にたいする抗体を用いた。臨床検体として、良性前立腺組織ではMCP、ALCAMが19例/20例(95%)、JAM-1は16例/20例と80%以上の症例で陽性であったのに対し、ICAM 、PSMA陽性例はそれぞれ1例のみであった。一方、前立腺癌組織ではALCAMが全例で膜陽性を示し、PSMAは19/20(95%)、EpCAM、MCPは14/20(70%)が膜陽性であった。以上より、PSMAに対する単離抗体(75-10)が前立腺がんの臨床検体を用いた検討において、感度 および特異度共に満足できる癌特異的な認識能を有することが判明した。 前立腺癌の悪性度ではグリソンスコアの高い悪性度の比較的高い病巣が染色性が高く、浸潤度、転移巣と原発巣での染色性(抗原の発現性)の違いに付いては明らかな相違を認めていない。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までにAIMS library より単離した抗体(75-10)の前立腺癌細胞に対する特異的な反応性については証明された。 今後は、この抗体が認識する前立腺がん細胞の特徴を解析することと本抗体の機能解析に研究対象が移行する。PSMAは分化度の低い前立腺癌に強く発現が増強する傾向や、大部分の固形腫瘍の新生血管構造においても発現すると報告されている。そのため、今回単 離された抗体が臨床検体において如何なる性格の前立腺がん細胞により特異性を持っているのかを、臨床検体での染色につき検討し解析する。 一方、本抗体の機能解析には、ファージ抗体をScFV-formより IgG-formへの変換を行いIgG抗体化する。完全ヒト型抗体を用い、樹立されたヒト前立腺癌細胞株に対するin vitroでのADCC活性およびCDC活性、リン酸化阻害や細胞増殖抑制等により抗体の生物学的抗腫 瘍活性を解析する。他の抗原の染色性との相関を検討し、前立腺癌治療に有望と考えられる完全ヒト型抗体を選択し、後の動物実験での抗腫瘍効果解析を継続する。ヒト前立腺ガン細胞を担癌したヌードマウスを用い、腫瘍増殖抑制効果の有無や至適投与条件や副作用を検討する。 また、前立腺癌は生体や画像診断により癌の局在を正確に診断することが非常に困難な癌腫である。そのため、特に治療がovertreatment となる傾向にある。この抗体が生体においてICG や near-infrared spectroscopy などの可視化物質と結合することが可能となれば、ロボット支援手術中の内視鏡操作で腫瘍局在を観察し必要克つ最小限な侵襲でがん病巣を摘除することが可能となる。抗体の全身治療としての側面だけでなくがん病巣の局在診断に対する研究も進めて行きたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主には、この抗体が認識する前立腺がん細胞の特徴を解析する。すなわち、臨床検体における染色細胞のcharacterize する。前立腺癌は他の癌腫に比べ比較的heterogenecity が強い癌腫であり、PSMAは分化度の低い前立腺癌に強く発現が増強する傾向や、大部分の固形腫瘍の新生血管構造においても発現すると報告されているので、前立腺癌の浸潤度、転移巣と原発巣での染色性(抗原の発現性)の違い臨床検体での染色につき検討する。 一方、本研究では、PSMAの有用性に着目し、このファージプールから前立腺特異的膜抗原(PSMA)の単離を行い、さらに既に単離され、抗原決定された個々の特異的抗体を用いて免疫組織染色を行うことにより前立腺癌組織に特異的染色像を与えるクローンを選別し、将来の前立腺癌の診断および治療薬としての臨床応用に向けて抗体の有用性を検討する。 また、前立腺癌は生体や画像診断により癌の局在を正確に診断することが非常に困難な癌腫である。そのため、特に治療がovertreatment となる傾向にある。この抗体が生体において可視化物質と結合することが可能となれば、ロボット支援手術中の内視鏡操作で腫瘍局在を観察し必要克つ最小限な侵襲でがん病巣を摘除することが可能となる。ICG や near-infrared spectroscopy などの可視化物質との結合性や動物での有用性なども検討したい。抗体の全身治療としての側面だけでなくがん病巣の局在診断に対する研究も進めて行きたい。
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