2011 Fiscal Year Research-status Report
生殖補助医療:走化性による新規精子選別法を目指したマウス精子による検討
Project/Area Number |
23592420
|
Research Institution | 沖縄科学技術大学院大学 |
Principal Investigator |
杉山 仁 沖縄科学技術大学院大学, その他部局等, リサーチサイエンティスト (70301596)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
舩橋 利也 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (70229102)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 生殖医療 / 精子 / 走化性 / 受精 / 卵外皮 |
Research Abstract |
近年、生殖補助医療 (ART: Assisted reproductive technology) は急速な発展を遂げた。特に、受精法の発展は著しく、媒精に供する精子数を劇的に減じ、顕微授精(ICSI)を用いた場合では1つの精子で受精卵を得ることができる。高度化した受精法にはそれに適した高度な精子の選別方法が必要となるが、確実に適正な精子を選別する方法はない。より高度に遺伝子異常精子を排することを目的とした新規の精子選別方法を開発するために本研究は計画された。 現在、Xenopus精子の走化因子であるallurinの組替タンパク質や合成ペプチドに対するXenopus精子の走化性を分析している。予備実験の結果では、allurinのN末端付近には精子誘因活性の調節に関与する部分が予想された。また、allurinの活性部位がC末端に存在するとの報告を受け、この部分の合成ペプチドを作成し、逆相HPLCにて精製した。この精製した合成ペプチドに対するXenopusの走化性を解析する予定である。現在はXenopus精子の走化性解析法の確立に注力している。 さらに、次のステップであるマウス精子の走化性解析を目指した準備を開始した。マウス精子の解析にはXenopus精子の解析にはない操作が要求される。精子の調整後、活性化を促した後の精子を解析サンプルとするため、その条件を調査中である。 また、調査の末、遺伝子の異常を検出するための方法として、まずはコメットアッセイ法を検討することを決定した。現在、コメットアッセイ法の準備が整い、Xenopus精子を用いて方法の最適化を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成23年9月に研究代表者は所属機関が変更した。そのため、研究環境が一変し、研究機器、備品、試薬等、すべてにおいて見直しが必要となった。実験室の改装や実験機器の選定、購入など研究環境が整うまでに時間を要した。 また、研究実施機関の事務の方々の献身的な援助を得られたが、動物実験計画の承認、動物実験室の申請と承認などの事務手続きには相応の時間が費やされた。これらの手続きは必要不可欠な事象であるが、本研究の進捗に大きく影響した事実は否めない。 また、研究環境の変化ゆえか否かは定かではないが、Xenopus精子走化性のアッセイ系が現在非常に不安定である。 これらを要因として、現在、当初の研究計画よりも実験の進行が大幅に遅延している。 現在の研究実施機関では、生殖医療に携わる医療スタッフらとともに研究遂行が可能になった。そのため、本研究課題の成果の実用化を考慮した議論を日常的に行うことができる。この度の所属機関の変更は研究環境を格段に改善させ、このことは現時点の研究の遅れを補って余りある成果であると確信している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究はヒトの生殖医療への応用を目指した基礎研究である。また、現在、研究代表者は産婦人科の不妊治療スタッフとともに研究できる環境にある。また、Xenopus 精子のアッセイ系が不安定である事実を鑑み、当初の計画よりも早期にマウス精子を用いた研究に移行することとし、哺乳類の精子選別法の確立にフォーカスを絞っていく予定である。 さらに、昨年着手する予定であったXenopus精子の遺伝子の正常性を評価する方法の検討よりも、マウス精子による検討を優先させ、Xenopus精子を用いた実験は必要最低限のものに限り実施する。遺伝子正常性の評価にはTUNEL法、コメットアッセイ法、FISH法などを検討する。有用と判断された評価方法のすべてを用いて、走化性を利用した精子の選別と遺伝子正常性との関係を検討する。 今後はマウス精子の研究を優先して実施し、本研究課題の成果を不妊治療に役立てるために、実用化を最大限に考慮して研究を推進する。これにより23年度の所属機関変更に伴う研究の遅れを取り戻す予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度はXenopus精子を用いた走化性評価は最小限にとどめ、マウス精子を用いた走化性評価を優先する。各種タンパク質、合成ペプチド、合成化合物などに対するマウス精子の走化性評価を行うとともに、分離した精子の遺伝子正常性の評価を行う。 本年度の進行の遅れを補うために、Xenopus精子による予備実験は最小限にとどめ、マウス精子の走化性による分離の検討に早期に着手する。そのため、当初の予定よりも経費が多く必要となるが、それは本年度の予算の繰り越し分でまかなう。主にマウスの購入費用、合成ペプチド購入、合成化合物の購入、走化性評価用ディバイスの購入費用に繰り越し分を充当する予定である。 さらに、当初の予定通り、遺伝子の正常性確認のための試薬や備品等の購入に研究費を使用する。 また、現在の研究実施機関には複数の不妊治療スタッフが在籍しており、すでにこれらのスタッフ達と本研究課題に共同して取り組んでいる。そこで、この研究環境を最大限に生かすために、次年度の中途からではあるが、このスタッフらを共同研究者に追加して、さらに本研究をサポートしてもらう計画である。新規の共同研究者らには関係学会において、最新の情報を獲得するための経費と実験に必要な経費を本研究費から支出する予定である。
|