2012 Fiscal Year Research-status Report
生殖補助医療:走化性による新規精子選別法を目指したマウス精子による検討
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23592420
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
杉山 仁 沖縄科学技術大学院大学, その他部局等, リサーチサイエンティスト (70301596)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安里 こずえ 琉球大学, 医学部附属病院, 助教 (30452246)
舩橋 利也 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (70229102)
平敷 千晶 琉球大学, 医学部附属病院, 助教 (20529341)
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Keywords | 生殖医療 / 精子 / 走化性 / 受精 / DNA断片化 |
Research Abstract |
近年、生殖補助医療 (ART: Assisted reproductive technology) は急速な発展を遂げた。特に、受精法の発展は著しく、媒精に供する精子数を劇的に減じ、顕微授精(ICSI)を用いた場合では1つの精子で受精卵を得ることができる。高度化した受精法にはそれに適した高度な精子の選別方法が必要となるが、確実に適正な精子を選別する方法はない。より高度に遺伝子異常精子を排することを目的とした新規の精子選別方法を開発するために本研究は計画された。 当該年度までの研究により、Xenopus精子の走化因子であるallurinの組替タンパク質の精子誘因活性解析が終了し、allurinが有する低濃度領域での精子誘因活性の発現に重要な部分がN末端付近に存在することが示唆された。この成果は現在、論文執筆中である。 また、当該年度の後期には、次のステップであるマウス精子の走化性解析を目指した実験を開始した。本研究を計画した当初は、マウス精子の解析にXenopus精子の解析法を適用する予定であったが、活性化を促した後の精子を解析したところ、大幅に解析方法を変更する必要があることが明らかになった。本研究では精子の走化性解析法が精子の選別法を兼ねるため、この解析法の開発は本研究の根幹をなすものである。そのため、現在、新規の解析チャンバーの開発を含めて、その検討を実施しているところである。 今後、この解析法が確立したのちに、コメットアッセイ法またはsperm chromatin dispersion testにより、速やかに分離した精子の遺伝子断片化を解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、本研究は二年が経過した。平成23年9月に研究代表者は所属機関を変更したため、研究環境が一変し、実験室の改装や実験機器の選定、購入など研究環境が整うまでに時間を要した。研究代表者の所属機関の変更に伴う研究環境の整備等による初年度の研究の遅れは当該年度における研究の進展で万全ではないものの、徐々にその遅延を取り戻しつつある。 また、研究環境の変化ゆえか否かは定かではないが、Xenopus精子走化性のアッセイ系が現在非常に不安定である。Xenopusの走化因子であるallurinの組換えタンパク質の解析は終了したものの、今後、本研究の要所となるマウス精子の解析を行う必要がある。本研究を計画した当初は、マウス精子の解析にXenopus精子の解析法を適用する予定であったが、活性化を促した後のマウス精子をこの方法で解析したところ、マウス精子の選別に必要な精度と感度を得るには、解析方法を大幅に変更する必要があることが明らかになった。これらの事実と、本研究計画において、精子走化活性の解析法は精子の選別を兼ねている事を考慮し、研究代表者は解析法の開発を第一に解決すべき課題と判断し、現在、解析法の確立をめざし、鋭意実験を遂行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はヒトの生殖医療への応用を目指した基礎研究である。そのため、当該年度途中から産婦人科の不妊治療に従事している産婦人科の医師2名を研究分担者に迎え、より臨床応用を意識した体制を整えた。そこで、Xenopus 精子のアッセイ系が不安定である事実を鑑み、当初の計画よりも早期にマウス精子を用いた研究に移行することとし、哺乳類の精子選別法の確立を第一の目標とする。さらに、一般的に確立されている精子の遺伝子正常性の解析はマウス精子のみとし、Xenopus精子の分析は行わないこととした。 来年度は本研究の最終年度となるので、まず、マウス精子の走性解析法、つまりマウス精子の選別法を早期に確立し、その後、TUNEL法、コメットアッセイ法、sperm chromatin dispersion testなどを用いて遺伝子断片化の評価を行うこととする。 今後は本研究課題の成果を不妊治療に役立てるために、実用化を最大限に考慮して研究を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度はマウス精子のallurin関連ペプチド、ステロイドホルモン、合成化合物に対する走化性やその他の精子走性を利用した精子の選別法の確立を目指した研究を行う。その後、分離した精子の遺伝子断片化の評価を行う計画である。 走性解析法を確立する過程が追加されたため、当初の予定よりも経費が多く必要となる。次年度の研究では、主にマウスの購入費、走化性評価用ディバイスの購入費用に繰り越し分を充当する予定である。さらに、遺伝子の遺伝子断片化の評価ための試薬や備品等の購入に次年度分として請求した研究費を使用する。不足分は研究代表者の保有する他の研究費を充てることとする。 また、本研究の研究分担者には関係学会において、最新の情報を獲得するための経費と実験に必要な経費を本研究費から支出する予定である。
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