2012 Fiscal Year Research-status Report
頭頸部表在癌の発現プロファイリングによる治療戦略の確立
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23592526
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
楯谷 一郎 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20526363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 滋 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10303827)
武藤 学 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40360698)
北村 守正 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60543262)
嘉田 真平 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 医員 (70543263)
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Keywords | 下咽頭癌 / 表在癌 / 発現プロファイリング / 質量顕微鏡 / イメージングマススペクトロメトリー |
Research Abstract |
NBI(narrow band imaging)の技術を用いることで従来の内視鏡では見つけることの出来なかった微細な頭頸部表在癌が検出できるようになった。このような微細な癌に対しては内視鏡下あるいは直達喉頭鏡下で経口的に小侵襲で切除することにより100%近い生存率が見込めるが、症例の蓄積により再発や遠隔転移を来たし予後不良に至る例も明らかとなってきた。本研究は表在癌のプロファイリングを行い予後不良症例や浸潤癌と比較することで、表在癌の性質や浸潤に関わるメカニズムを明らかにし、予後に関わる因子を同定して治療戦略につなげていくことを目的として施行している。 平成22年度は免疫染色によるタンパクレベルでの発現プロファイリングを行い、p53, ki67が表在癌において高頻度に陽性であること、EGFR, HER2での増幅は見られないことを明らかにした。平成23年度は質量顕微鏡法(イメージング・マス・スペクトロメトリー)を用いて表在癌の上皮内部分と上皮下浸潤部における発現プロファイリングを比較することで、癌浸潤の極初期の段階における浸潤部先端での分子発現の特徴を明らかにしようとした。上皮下浸潤を認めた下咽頭表在癌3例を用いてイメージング・マス・スペクトロメトリーを行い、癌の上皮内部分、上皮下浸潤部分でサンプル領域を設定した。上皮内部分と上皮下浸潤部でのスペクトルデータを比較して、3例においていずれも有意に上皮下浸潤部で多く発現している分子を統計学的に解析して同定した。結果、上皮下浸潤部では細胞膜の主要構成要素であるホスファチジルコリンにアラキドン酸が多く含まれている事が明らかとなり、浸潤部先端では細胞膜の構造変化が起きていることが強く示唆された。他の癌領域も含め、これまで癌浸潤部における細胞膜の構造変化を指摘した報告はなく、これは全く新しい知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の計画はサンプルの採取並びに、質量顕微鏡法(イメージング・マス・スペクロトメトリー)による発現解析である。質量顕微鏡法による解析で、癌の浸潤部先端における細胞膜の構造変化という全く新しい知見が明らかとなりつつあり、研究計画は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点ではサンプル数が3例と少ないため、さらにサンプル採取ならびに発現解析を行って、エビデンスをより強固なものとしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に引き続き、サンプル採取を行い、質量顕微鏡法による解析を継続する。質量顕微鏡は顕微鏡下にレーザーのスポットを2次元的に走査することで組織切片上の任意の分子の位置情報を同定するものであり、次世代の解析器機としてここ数年国内外で開発が進められている。この方法により数十μmの解像度で数千―数万の既知あるいは未知の分子(タンパク、糖鎖、脂質)の発現分布を一度に得ることが可能である。質量顕微鏡に関しては器機が京都から遠方にあるため、ある程度の数のサンプルが溜まった時点で順次解析を行ない、データを蓄積する予定である。
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Research Products
(2 results)