2011 Fiscal Year Research-status Report
脳幹における嚥下関連ニューロンネットワークの生理学的ならびに組織学的研究
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23592532
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
梅崎 俊郎 九州大学, 大学病院, 講師 (80223600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安達 一雄 九州大学, 大学病院, 助教 (90380386)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 延髄 / fictive嚥下モデル / 疑核 / 迷走神経咽頭枝 / 嚥下 / 状喉頭神経 |
Research Abstract |
Fictive嚥下実験モデル動物を作成し、同側あるいは対側上喉頭神経から順行性入力を有する延髄内ニューロンを細胞外記録し、上喉頭神経電気刺激(30Hz, 50-100μA、100msec、rectangular pulse)にてfictive嚥下を誘発したい際に、嚥下の指標となる迷走神経咽頭枝の嚥下性活動に同期した活動変化を示すニューロンを嚥下関連ニューロンとして同定した。これらの嚥下ニューロンは延髄孤束核及びその近傍、小細胞性網様体内、および疑核内で記録されたが、今回は、迷走神経咽頭枝の逆行性応答により同定した疑核内の咽頭運動ニューロンを細胞内記録し、fictive嚥下時の膜電位変化や、入力様式について調べた。疑核内で記録した運動ニューロンが咽頭筋の運動ニューロンであるか否かは、同側の迷走神経咽頭枝(Ph-X)の電気刺激に対する逆行性応答の有無で判定した。その結果、多くの咽頭運動ニューロンは嚥下に同期して200-300 msec持続するdepolarizationのみを示したが、その他の運動ニューロンではdepolarizationのみならず、それに先行するhyperpolarizationが記録された。hyperpolarizationの時間関係はニューロンごとに若干異なっていた。しかも、先行するhyperpolarizationのいくつかでは、細胞内クロールイオンの注入により膜電位が逆転し、抑制性シナプス後電位(IPSP)であることが判明した。以上より、咽頭収縮筋で見られる収縮に先行する抑制のパターンは実際の嚥下運動による筋収縮や嚥下物の量によるfeed backメカニズムによるものではなく、中枢性に予定されたパターン出力であるといえる。また、輪状咽頭筋に代表される弛緩収縮のパターン出力は一つ以上の抑制性介在ニューロンの関与により形成されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、同側の迷走神経咽頭枝の電気刺激に逆行性に短潜時で応答する網様体の嚥下ニューロンをパターン形成ニューロンとして同定し、微小電極増幅器で細胞内記録し、記録された膜電位の安静時呼吸および嚥下時の変化を末梢出力神経電位とともに記録し、時間的変化のパターンを解析する予定であり、記録されたインターニューロンをその活動様式から嚥下関連ニューロンと同定する点において順調に計画は進行している。しかしながら、嚥下のパターン形成に関連するインターニューロンが記録できた場合、記録電極より電気泳動的にneurobiotinおよびHRPを注入し、実験終了後取り出した延髄内で解剖学的にその記録部位を同定することにより嚥下のパターン形成に関与するインターニューロン群の延髄内分布を調べるとしていたが、インターニューロンの記録と投射様式の検討は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
嚥下のパターン形成に関与していると思われるインターニューロン群の延髄内投射様式を検討するため、当初の予定通り、網様体内嚥下関連ニューロンの同定と細胞内記録あるいはjuxta-cellular記録を行い、記録電極より電気泳動的にneurobiotinおよびHRPを注入し、実験終了後取り出した延髄内で解剖学的にその記録部位を同定することにより嚥下のパターン形成に関与するインターニューロン群の延髄内分布をより詳細に検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定した研究手法に用いる機器等を購入しなかった等による次年度使用額が75万円余発生したが、先に申請したように、新たに京都府立医科大学耳鼻咽喉科の杉山庸一郎氏を共同研究者に追加し、その研究費の一部を分担配分することにより、細胞内記録と記録細胞標識などの研究が促進されるものと期待される。また、記録電極内に封入する試薬類やその他の消耗品が必要となる。さらに、成果発表および情報収集のための旅費等に出費する予定である。
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Research Products
(2 results)