2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23592553
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桂 真理 東京大学, アイソトープ総合センター, 特任助教 (30436571)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相原 一 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (80222462)
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Keywords | DNA損傷応答 / 網膜神経節細胞 / 緑内障 / 低酸素 / ATM / 53BP1 / γH2AX / GSK3β |
Research Abstract |
本研究の目標は、緑内障でみられる網膜神経細胞(RGC)死におけるDNA損傷応答 (DDR)の役割を解明していくことである。平成23年度には、DDRの中心的役割を果たすATM-53BP1が培養RGCにおいても細胞死と関連した動態を示すことを確認したことを受け、平成24年度には以下の内容が進展した。 1.培養RGCにおけるATM-53BP1に依存した細胞死抑制経路の解明 (1)前年度に明らかとなったRGCにおけるATMに依存した細胞死抑制経路をさらに詳細に検討するため、ATMの影響を受けるとされるHDAC4について調べた。HDAC4は核に局在すると細胞死促進方向に転写を制御するとされている。そこで、この現象が低酸素負荷時ならびにATMインヒビター添加時に培養RGCにおいても観察されるか否かを調べ、HDAC4が核に局在することを確認した。低酸素負荷によりATM-53BP1の経路が活性化することが分かった。(2)プロスタグランジンF2aアナログのラタノプロストは低酸素負荷時における培養RGCの細胞死を抑制する。そのメカニズムをDNA損傷応答と関連させて調べた。低酸素負荷時に減少する53BP1核内フォーカスがラタノプロスト添加時に再び増加することを確認した。(3)神経細胞死に抑制効果を発揮するとされるNF-kBの活性化について調べた。NF-kBの活性を調節するリン酸化部位として、p65のセリン468(不活性化)が知られている。ラタノプロストの添加によって、p65 セリン468のリン酸化が抑制された。(4)ラタノプロストがGSK3bセリン9のリン酸化を促進するとGSK3b自体の活性が低下し、p65セリン468の抑制をすることが分かった。 2.ATMノックアウトマウスの解析 前年度に行ったATMの培養RGC保護作用をインビボで確認するために、ATMノックアウトマウスのRGC数の解析に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.培養RGCにおけるATM-53BP1に依存した細胞死抑制経路の解明 (1)ATMに依存した細胞死抑制経路をさらに詳細に検討するため、ATMの影響を受けるとされるHDAC4について調べた。HDAC4は核に局在すると細胞死促進方向に転写を制御するとされているが、低酸素負荷時ならびにATMインヒビター添加時に培養RGCにおいて、HDAC4が核に局在することを確認し、低酸素負荷とATM機能抑制は同様の経路を介してRGC死を誘発することが分かった。(2)プロスタグランジンF2αアナログのラタノプロストは低酸素負荷時における培養RGCの細胞死を抑制することが知られている。そのメカニズムをDNA損傷応答と関連させて調べた。低酸素負荷時に減少する53BP1核内フォーカスがラタノプロスト添加時には再び増加することが確認できた。(3)神経細胞死に抑制効果を発揮するとされるNF-kBの活性化について調べた。NF-kBの活性を調節するリン酸化部位として、p65のセリン468(不活性化)が知られている。ラタノプロストがGSK3βセリン9のリン酸化を促進するとGSK3β自体の活性が低下し、p65セリン468の抑制をすることが分かった。(3)、(4)については今後DNA損傷応答(DDR)との直接的な接点をを求めていく予定である。 2.ATMノックアウトマウスにおけるRGCの観察 RGCに蛍光を発するCFP-Thy1トランスジェニックマウスとATMノックアウトマウスを交配した。まず、ATMヘテロマウスとCFP-Thy1トランスジェニックマウスを交配させ、ATM+/-およびCFP-Thy1トランスジェニックマウスを作製した後、これらのヘテロマウス同志を交配させノックアウトマウスを作成した。平成25年3月より月齢ごとのRGCのカウントを開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. ATM-53BP1のRGC死に関する分子機構の解明。ATMノックアウトマウスのRGC死の解析を行うと同時に、低酸素負荷による53BP1のリン酸化の意味、RGC死への機構を発現実験およびsiRNAを利用した抑制実験等を用いて解析する。 2. GSK3βインヒビターの緑内障治療薬としての可能性の検討。ラタノプロストの培養液中への添加がGSK3βセリン9のリン酸化によってGSK3βを不活性化することと同時にRGC保護効果が表れている。そこで、RGC死に関連するGSK3βの作用機序を明確にする。GSK3βインヒビターがRGC保護作用を示す可能性は大きい。一部のGSK3βインヒビターはアルツハイマー病などの神経変性疾患で治験が進行中である。これまでの研究結果よりRGC死に対する有効性を発揮する可能性が大きいので、まずは培養RGCでその神経保護効果を確認し、よい結果が得られたものに対して、動物実験を行い、緑内障性視神経萎縮の治療効果が確認できるか否かを確かめる。 3. 低酸素負荷時のRGC死を抑制する分子機構とDNA損傷応答の網羅的解析。これまでの結果より、RGC死に関与する分子はATM, 53BP1, GSK3βなどの多機能タンパクと複数の経路に存在することが分かった。生体内での反応を考えた時に、きわめて複雑な反応が起きていることは容易に想像できる。また、未知の重要な分子が存在する可能性も大きい。そこで、培養RGCに低酸素負荷、あるいは平成23年度にγH2AXのフォーカス形成の増加を確認したグルタミン酸負荷,低線量放射線照射などの刺激を与えたRNAサンプルを抽出し、マイクロアレイ解析を行い、RGC死に関与するDNA損傷応答分子をはじめとする多数の分子につき網羅的に転写調節の変化を解析し、RGC死に特徴的な現象をとらえ、治療ターゲットを探索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. ATM-53BP1のRGC死に関する分子機構の解明。ATM-/--CFP-Thy-1マウスのRGCの解析を行うと同時に、低酸素負荷による53BP1のリン酸化の意味、RGC死への機構を発現実験およびsiRNAを利用した抑制実験等を用いて解析する。マウス飼育代、PCR試薬、抗体、siRNA等の試薬代に使用する。 2. GSK3βインヒビターの緑内障治療薬としての可能性の検討。ラタノプロストの培養液中への添加がGSK3βセリン9のリン酸化によってGSK3βを不活性化することと同時にRGC保護効果が表れている。そこで、RGC死に関連するGSK3βの作用機序を明確にする。GSK3βインヒビターがRGC保護作用を示す可能性は大きい。一部のGSK3βインヒビターはアルツハイマー病などの神経変性疾患で治験が進行中である。これまでの研究結果よりRGC死に対する有効性を発揮する可能性が大きいので、まずは培養RGCでその神経保護効果を確認し、よい結果が得られたものに対して、動物実験を行い、緑内障性視神経萎縮の治療効果が確認できるか否かを確かめる。RGC培養費用、アポトーシス解析試薬等を購入する。 3. 低酸素負荷時のRGC死を抑制する分子機構とDNA損傷応答の網羅的解析。培養RGCに低酸素負荷、あるいは平成23年度にγH2AXのフォーカス形成の増加を確認したグルタミン酸負荷、低線量放射線照射などの刺激を与えたRNAサンプルを抽出し、マイクロアレイ解析を行う。ラット購入費、RGC培養費、RNA抽出キット、マイクロアレイ購入費等に使用する。
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Research Products
(3 results)