2011 Fiscal Year Research-status Report
網膜色素変性患者の遺伝子診断システム構築:基幹施設症例の大規模収集と原因変異解析
Project/Area Number |
23592561
|
Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
堀田 喜裕 浜松医科大学, 医学部, 教授 (90173608)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 政代 独立行政法人理化学研究所, 発生・再生科学総合研究センター網膜再生医療研究チーム, チームリーダー (80252443)
山本 修一 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20230550)
近藤 峰生 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80303642)
蓑島 伸生 浜松医科大学, メディカルフォトニクス研究センター, 教授 (90181966)
中西 啓 浜松医科大学, 医学部附属病院, 医員 (20444359)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 網膜色素変性 / 常染色体劣性遺伝 / 遺伝子診断 / 遺伝子変異解析 / USH2A / RPE65 / EYS |
Research Abstract |
網膜色素変性 (Retinitis Pigmentosa, RP) は、視細胞と網膜色素上皮の機能を原発性、びまん性に障害する遺伝性、進行性の疾患群である。RPの遺伝形式は常染色体優性遺伝 (ad)、常染色体劣性遺伝 (ar)、X連鎖性遺伝の3種類で見られ、これまでに55個の原因遺伝子が同定されている。本疾患に対する有効な治療法の開発のためには遺伝子レベルでの病因解明が必要である。本研究は、日本の基幹施設からarRP患者を収集し、arRP原因遺伝子の大規模スクリーニングを行い、日本人RP患者に高頻度に認められる原因遺伝子の同定と日本人固有の遺伝子変異をデーターベース化することで、日本人RP患者を効率よくスクリーニングできる遺伝子診断システムの構築を目的としている。本年度の研究計画は以下(1)~(4)を計画した。(1)RP患者の診断と検体収集、(2)DNAの調整、細胞の株化、(3)arRP原因遺伝子の変異検出法の検討、(4)arRP原因遺伝子の変異検索。 (1)と(2)については100人の日本人arRP患者を収集でき、全ての患者の血液よりDNAを抽出精製した。また可能な限りBリンパ芽球様細胞株の樹立を行った。変異解析する3遺伝子(USH2A, RPE65, OPTN)の中からまずUSH2Aの解析を行う計画だったが、近年欧州のarRP家系でEYSに変異が検出される頻度が非常に高いと報告があり、予定を変更してEYSから変異探索を行うことにした。 (3)については樹立した患者Bリンパ芽球様細胞株でのEYSの発現検討を試みたが、発現は認められなかった。そのため通常通りゲノムDNAを用いて(4)の変異探索を行った。 我が国にこれだけ大規模にRP症例を収集して行う原因遺伝子の変異探索は初めてであり、この解析結果はRPを研究する研究者や患者をケアする臨床医にとって重要なデータである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RP原因遺伝子のスクリーニングは、既に欧米等の施設によって行われているが、我が国のRP患者における変異解析は少数のadRPとarRP患者で行われているのみであった。この状況を打開するために、本年度は代表者と分担者の理化学研究所高橋政代、千葉大学山本修一、三重大学近藤峰生の4名が共同でarRP患者の収集を開始した。現在同定されている31個のarRP原因遺伝子を対象とした大規模スクリーニングを計画し、今年度中に収集できた100名の日本人arRP患者に対し、PCRダイレクトシーケンス法を用いてEYSの変異解析を行った。その結果、100人のarRP患者において18人の患者から7種(c.4957_4958insA, c.8868C>A, c.2522_2523insA, Deletion exon 32, c.6557G>A, c.7793G>A, c.8351T>G)の疾患原因変異を同定した。18人中9人は片側アレルの原因変異のみ同定できた。また上記18人の患者以外の8人から6種のミスセンス変異も同定した。今回同定した13種の変異のうちc.6557G>A以外の12種は新規変異であった。18人中12人にc.4957_4958insA、18人中4人にc.8868C>Aの変異を同定した。これら2種の変異は日本人arRP患者において突出して頻度の高い遺伝子変異である可能性が高い。これら解析結果は2012年2月にPLoS ONE誌に掲載された。本年度は研究計画初年度にも関わらず、RP症例が収集しやすい代表者と分担者が所属する4基幹施設の協力により、100名の日本人arRP患者を収集し、EYSの変異解析を実行することができた。我が国にこれだけ大規模にRP症例を収集して行う原因遺伝子の変異探索は初めてであり、研究目的の達成度はおおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究計画は本年度の (1)~(4)を引き続き行い、新に(5)遺伝子変異と表現型の検討、(6)データベースの作成を計画する。 (1)と(2)については更に100人arRP患者の収集を予定しており、合計200人を用いて(4)の変異探索を行う予定である。代表者は「現在までの達成度」で記述したように、既に100人のarRP 患者に対しEYSの遺伝子解析を行い、18人のarRP患者から7種の疾患原因変異を同定した。その内、12人よりc.4957_4958insA、4人よりc.8868C>Aの変異を同定した。そこで次年度からは既にEYSの変異解析を行った100人の内、変異を同定できなかった82人に対してUSH2A, RPE65の全エキソンをPCRダイレクトシーケンス法で変異解析を行う。また、(3)については樹立した患者Bリンパ芽球様細胞株で上記2遺伝子の発現解析を行い、検出できれば変異解析に活用する。発現量が実用的でない場合は通常どおりゲノムDNAを用いて解析を行う。また次年度に新たに収集する新たな100人のarRP患者に対しては原因遺伝子スクリーニングを下記のように実施する。cは可能であれば行うが、翌年度以降に実施する予定である。a.1次スクリーニング;解析第一候補遺伝子をEYSとし、c.4957_4958insAとc.8868C>AをPCRダイレクトシーケンス法で変異解析を行う。b.2次スクリーニング;EYS全44エキソンをPCRダイレクトシーケンス法で変異解析を行う。c.3次スクリーニング;USH2A, RPE65の全エキソンをPCRダイレクトシーケンス法で変異解析を行う。 (5)と(6)については、本年度の解析でEYSより原因変異を両アレルより同定できた9名について個々の臨床像と変異の関連について詳細な検討を行い眼科の遺伝学雑誌へ投稿する計画である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、PCRダイレクトシーケンス法を用いてarRP原因遺伝子の変異解析を行う。当施設には既に必要な設備は整っているため、主な消耗品は次年度もシーケンシングに用いる試薬である。平成23年度の成果報告を第116回日本眼科学会(東京)、第66回日本臨床眼科学会(京都)、APAO 2012 Annual Meeting (韓国)等で参加発表を行うための旅費として使用する。また研究消耗品の調達に際し、予定額より安価で購入出来たため111,055円の繰越金が生じた。当該繰越金については次年度の研究消耗品に充てる予定である。
|
Research Products
(20 results)