2012 Fiscal Year Research-status Report
補償光学適用走査レーザー検眼鏡による緑内障性神経線維束障害の解析
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23592565
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
板谷 正紀 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70283687)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野中 淳之 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40532601)
大音 壮太郎 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10511850)
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Keywords | 緑内障 / 網膜神経線維束 / 補償光学 |
Research Abstract |
初年度に補償光学レーザー走査検眼鏡(AO-SLO)により健常眼網膜の網膜神経線維束の観察と定量に成功した(PLoS One. 2012;7(3):e33158)のに続き、次年度は、緑内障眼における網膜神経線維束の障害を観察し、その特徴を詳細に解析した(Am J Ophthalmol. 2013;155(5):870-881.e3)。まず、緑内障眼の網膜神経線維束は正常眼に比較して有意に細くなっていることを示した。この網膜神経線維束の狭細化は、検眼鏡的に明らかな神経線維層の異常である神経線維層欠損の中で観察されただけではなく、その外の検眼鏡的に正常に見える部位でも観察された。そして、網膜神経線維束の幅が対応する視野のクラスターのMD値と有意に相関することを示した。この知見は、緑内障患者において網膜神経線維束が視野異常に対応して狭細化していることを世界ではじめて示したものである。緑内障の本態は網膜神経節細胞の死であり、網膜神経線維束は網膜神経節細胞の集合体であるため、その特徴の理解は緑内障の病態と診断において重要である。網膜神経線維束は並列して神経線維層を成している。従来は光干渉断層計により網膜神経線維束の高さに相当する神経線維層を観察し、その厚みを計測し統計学的に異常を検出することが最も緑内障検出力が高い方法とされてきたが、網膜神経線維束の幅は評価できなかった。本研究成果により網膜神経線維束の幅の評価も可能になった。光干渉断層計と同時に用いることで、網膜神経線維束の立体構造を評価する緑内障診断の幕開けになる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
補償光学レーザー走査検眼鏡(AO-SLO)を用い健常眼網膜および開放隅角緑内障患者眼における網膜神経線維束の形態的特徴を明らかにすることができ、網膜神経線維束の密度や幅など緑内障における網膜神経線維束異常を検出する形態パラメーターを開発でき、24年度の中心課題である臨床評価はほぼ達成できた。一方、実験緑内障モデルによる網膜神経線維層および神経線維束の観察は、前年度に述べたように。光干渉断層計と組織病理像の比較は進んでいるが、動物用のAO-SLOプロトタイプの開発が進まず、AO-SLOによる観察はできなかった。しかし、その分、多数例の患者眼を用いた解析を強化し、優れた成果が得られていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度も述べたように、動物用AO-SLOプロトタイプを本研究期間で使用する目処が立たなくなっているが、本研究の目的の達成への影響は少ないと考えられ、臨床研究へ重点化を行った研究を遂行する。研究計画ではもともと動物眼による評価はサブ的位置づけであり、メインである臨床研究により従来不可能であった網膜神経線維束を患者眼で観察することを世界に先駆けて成功しており、この方法を用いて、さらに緑内障患者眼における知見を集積した方が本研究の研究目的に適うと同時に、効率的に成果を出すことが可能と見込まれる。よって、最終年度も今後は、患者眼を用いた評価をより充実させる方向へ研究を展開するとともに成果を学会および英文雑誌へ報告する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
① 開放隅角緑内障患者眼におけるAO-SLO撮影 平成24年度からの継続で、開放隅角緑内障患者眼における網膜神経線維束の分布、密度、幅に関するデータの蓄積を行う。 ② 視細胞の形態と機能の相関に関する検討 平成24年度に強化した形態機能解析プログラムを用い、開放隅角緑内障患者における網膜神経線維束の分布、密度、幅、形態の変化と神経線維厚・視野感度低下の関係の解明を継続する。 ③ AO-SLOによる開放隅角緑内障診断プログラムの開発 AO-SLOから得られた正常眼および開放隅角緑内障の病理眼データから、引き続き緑内障性視神経症の緑内障早期発見プログラムや緑内障進行予測プログラムを作成する。
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[Journal Article] High-resolution imaging of retinal nerve fiber bundles in glaucoma using adaptive optics scanning laser ophthalmoscopy2013
Author(s)
Takayama K, Ooto S, Hangai M, Ueda-Arakawa N, Yoshida S, Akagi T, Ikeda HO, Nonaka A, Hanebuchi M, Inoue T, Yoshimura N
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Journal Title
Am J Ophthalmol
Volume: 155(5)
Pages: 870-81
DOI
Peer Reviewed
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