2012 Fiscal Year Research-status Report
TLRアゴニストによる免疫および慢性炎症の制御機構解明ーイメージング手法を用いて
Project/Area Number |
23592747
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
鈴木 恵子 昭和大学, 歯学部, 講師 (50119187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 庄司 昭和大学, 歯学部, 教授 (00111617)
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Keywords | 炎症性骨破壊 / Toll-like receptor / 炎症 / 免疫 / 歯周病 / グラム陽性菌 / 骨代謝 |
Research Abstract |
重篤な骨破壊を起こすことが知られている関節リウマチ,歯周病,骨転移腫瘍では歩行困難、歯の喪失、骨痛などが生じ,患者のQOLは著しく損なわれる。そのため、超高齢社会である我が国においては、有効な治療薬開発が急務とされている。本研究計画の2年目にあたる今年度は、昨年度の研究から得られた成果に基づいて「本来は感染に対する宿主の防衛反応である炎症によって、過剰な組織破壊がひき起こされるメカニズム解明」を目的として実験を行い、以下の結果が得られた。1.歯周疾患の原因となる細菌成分が宿主と相互作用する際に結合する受容体としてToll-like receptor (TLR) 4またはTLR2が知られている。それぞれのリガンドであるLPSまたはPam3CSK4をマウス頭蓋骨膜下に投与することにより、炎症性骨破壊が誘導された。すなわち、TLR4のみならずTLR2アゴニストも歯槽骨破壊に関与する可能性が示された。2.TLR2を介して作用することが知られているグラム陽性菌成分をマウス頭蓋骨膜下またはラット口蓋骨膜下に投与すると骨破壊が誘導されたことからも、TLR2の作用が確認された。3.In vivo実験でのLPSとPam3CSK4の比較から、TLR4よりもTLR2の方が炎症反応の経過が長引き、組織侵襲度が高いことが示された。4.LPSまたはPam3CSK4を投与したマウスから継時的に採取した血液・頭蓋冠・脾臓・骨髄の蛋白および遺伝子解析の結果、LPS群ではPam3CSK4群よりも早期に樹状細胞のマーカー発現がみられること、血液中のIFNgの発現量が多いこと、さらにRantes産生が増加していることが示され、炎症から免疫反応への移行がPam3CSK4に比して速やかであることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の初年度に行ったイメージング手法を用いたin vivoの実験から得られた結果に基づく仮説、すなわち、TLR4よりもTLR2を介する反応の方が、炎症の経過が長引き、組織破壊の程度が高いのは、免疫反応への移行が遅れるためではないか、という推測を裏付けるデータを得ることができた。本年度はそれぞれのアゴニストを投与した動物から採取した試料について、主にELISAとreal time RT-PCR法による解析を行ったが、現在までに得られたデータは、今後さらに、組織学的手法により、仮説を証明することを可能にするために有用なものである。 また、現在、歯周疾患モデルとして用いられているのが、マウス頭蓋冠の骨破壊モデルであるのに対し、本研究においては、マウスよりも口のサイズ大きいために局所投与が可能なラットを用いて、口蓋骨の骨破壊モデルを作製したことの意義は大きいと考えている。このモデルについても、生きているままで行ったイメージング実験終了後に採取した上顎骨の研磨切片で骨吸収像や、TRAP陽性多核細胞を観察できたことは大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの2年間で、TLR2とTLR4アゴニストの作用メカニズムの違いについて、イメージング手法を用いたin vivo実験、および、ELISAとreal time RT-PCR法により詳細に検討した。その結果、いくつかの分子を候補としてあげることができた。最終年度にあたる来年度は、現在、飼育・繁殖中のTLR2, TLR4, TNFalpha, IL-1beta, IL-6遺伝子欠損マウスにLPS, Pam3CSK4またはグラム陽性菌を投与したマウスについて、主としてELISA法とreal time RT-PCR法を用いて解析を行い、仮説に矛盾がないかどうかについて確認実験を行う。 また、この確認実験と並行して、学術雑誌への投稿論文執筆に重点をおく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本計画の初年度で、LPSまたはPam3CSK4により誘導した炎症性骨破壊モデルマウスに蛍光蛋白であるGFP-transgenicラット由来の骨髄細胞を移入したのちの、GFP陽性細胞の体内動態について、イメージング実験を行った。イメージング実験終了時に採取・固定した試料についての組織学的検索、さらに、抽出したtotal RNAから作製・保存してあるcDNAを用いた遺伝子解析を行うための試薬購入費用とする。また、研究成果を8月の国際免疫学会にて発表するため(すでに演題登録済み)の出張費用、さらに学術雑誌への原著論文の投稿費用として使用する。
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Research Products
(4 results)