2011 Fiscal Year Research-status Report
菌体外マトリックスを標的とした成熟バイオフィルム制御のための多角的アプローチ
Project/Area Number |
23592795
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
竹中 彰治 新潟大学, 医歯学系, 助教 (50313549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉羽 邦彦 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (30220718)
興地 隆史 新潟大学, 医歯学系, 教授 (80204098)
大島 勇人 新潟大学, 医歯学系, 教授 (70251824)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | バイオフィルム / 共焦点レーザー顕微鏡 / 浸透 / 拡散 |
Research Abstract |
成熟バイオフィルムは菌体外マトリックスに覆われ物質の輸送を制限し各種免疫機構に抵抗性を示すため、強力な抗菌剤を用いても十分な効果が得られないことがわかっている。そのため、成熟バイオフィルムの制御法は細菌自体ではなく菌体外マトリックスを標的として構築する必要がある。研究実施にあたり、三つの制御理論(1.浸透性能の高い抗菌成分;2.粘着性結合の分散;3.バイオフィルムの剥離)による異なるアプローチを予定していた。しかし、下記の研究成果から、「1.浸透性能の高い抗菌成分を用いた制御戦略」は、殺菌されてもなお付着界面にバイオフィルム構造が残存するため、常在菌が存在し絶えず外界と交通する特殊な器官である口腔の場合、効果的な方法ではないことが明らかとなった。今後は、2および3による制御戦略の構築が必要である。(研究成果1)S. mutans人工バイオフィルムモデルに対する各種洗口液の浸透性および剥離効果をCLSMを用いてリアルタイムに観察・解析したところ、洗口液30秒の作用では、深層部の細菌へ十分な殺菌効果が及ばず大多数の細菌の増殖能が維持された。洗口液30秒の作用によるバイオフィルム剥離効果は微弱であった。(研究成果2)フローセルを用いて作製したS. mutans人工バイオフィルムを70%イソプロピルアルコールに90分浸漬し殺菌したのち、再度RDR中で106/mlに調整したStreptococcus mutans 培養液を4時間灌流させたところ、殺菌処理後に残存するバイオフィルム構造に、新たな浮遊細菌の付着が生じることが認められた。一方、バイオフィルム構造が存在しない界面では新たに付着した生菌の厚さは小さい傾向にあった。残存バイオフィルム構造が新たなバイオフィルム形成の起点となることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
具体的な制御物質の選定までは達成していないが、従来の抗菌成分による殺菌に頼ったバイオフィルム制御の既成概念転換の必要性が立証できた点で、新規知見であり、意義がある。
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Strategy for Future Research Activity |
1.バイオフィルムの分散剥離に焦点を当てた制御法の探索 本年度の研究計画の継続課題である。抗菌成分に頼らず、バイオフィルム構造を分散剥離する方法を検討する。例えば、化学的コントロールのみではその効果が微弱であっても、超音波のような機械的応力と併用することで相乗効果が得られる界面活性剤、発泡剤を検討中である。2.マイクロダイセクションによるバイオフィルム各層の菌体外DNA量およびmRNAの解析 本年度において、口腔内は絶えず常在菌が存在する特殊な環境であることから、たとえバイオフィルム中の細菌をすべて殺菌しても、構造が残存した場合にはその構造を足がかりとしてバイオフィルム再形成が起こりやすいことを立証した。次年度は、抗菌成分の使用によりバイオフィルムに与える影響、すなわち生存した細菌がストレスレスポンスとして生体に与える負の因子の有無を検討する目的で、一部が生存した状態における遺伝子発現をマイクロダイセクション法を応用してバイオフィルム各層ごとに解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は異なるアプローチによる成熟バイオフィルムの制御法を探索することを主目的として進めてきた。その過程において、具体的な制御物質の選定までは達成していないが、従来の抗菌成分による殺菌に頼ったバイオフィルム制御の既成概念転換の必要性が立証できた。今後は、抗菌成分の頼らない、バイオフィルムの分散剥離に焦点を当てた制御法の確立が必要であり、現在検討中である。 初年度の研究計画が現在も進行中であるため、一部研究費を次年度に残しつつ進めている。
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Research Products
(6 results)