2011 Fiscal Year Research-status Report
分子レベル解析技術を応用した接着機能性モノマーの網羅的解析と最適組成の検討
Project/Area Number |
23592798
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
鳥井 康弘 岡山大学, 大学病院, 教授 (10188831)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 靖弘 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (90281162)
長岡 紀幸 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (70304326)
白井 肇 岡山大学, 大学病院, 講師 (00263591)
河野 隆幸 岡山大学, 大学病院, 助教 (80284074)
鈴木 康司 岡山大学, 大学病院, 助教 (30304322)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 接着 / 機能性モノマー / 歯質 / エックス線回折(XRD) / エネルギー分散型X線分析(EDS) / 透過型電子顕微鏡(TEM/STEM) / 10-MDP / 層状構造 |
Research Abstract |
10-methacryloyloxydecyl dihydrogen phosphate (10-MDP)を含有する歯質接着システムは,接着耐久性に優れていることが様々な研究で報告され,広く知られている。我々はこれまでそのメカニズムとして,歯質と反応した10-MDPがナノスケールの層状構造を呈し,これによって接着耐久性を増すことを報告した。しかしながら,この層状構造はエタノール/水溶媒で10-MDPを用いたモデル実験で形成されたものであり,他のモノマーを始め様々な成分が混入している市販歯質接着システムについては,国内外で数多くの接着界面の形態学的観察結果が報告されているものの,未だ確認されていない。そこで本研究では,実際に臨床の場で使用されている10-MDP含有歯質接着システムと象牙質との接着界面を,エックス線回折(XRD)およびエネルギー分散型X線分析法(EDS)を用いて化学的に,また透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)を用いて形態学的に詳細に解析した。 その結果,市販歯質接着システムにおいてもモデル実験と同様,接着界面では10-MDPの2分子が向き合った層状構造を形成していることが明らかとなった。これが接着耐久性を向上に寄与していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果として,既存の接着モノマーである10-MDPを使用した市販接着材を臨床に準じた手法で応用した場合のモノマー-象牙質接着界面の構造を化学的ならびに形態学的な分析手法を通して一部解明することができたことが挙げられる。すなわち,過去に我々研究グループの者が10-MDPをエタノール/水溶媒で10-MDPを用いたモデル実験で10-MDPがナノスケールの層状構造を呈していることを報告しているが,本研究で様々なモノマーを含有する市販接着材でも同様に着界面に10-MDPの2分子が向き合った層状構造を形成していることが発見された。これは,過去に報告がまったくなかった知見であり,接着システムの解明に非常に重要な知見であると考えられる。 従って,当初計画の全てが完了したわけではないものの,本研究は概ね順調に推移していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
10-MDPを含有する歯質接着システムを応用した際の歯質接着界面の分析は,一部明らかとなったものの,さらに詳細な検討が必要である。また,10-MDP以外の接着性モノマーについても検討を行っていく必要がある。 また,接着機能性モノマーの網羅的解析と最適組成の検討を行うためには,接着システムへの接着性機能性モノマー以外の配合モノマーの歯質接着への影響も調べる必要があろう。10-MDPを用いてプライマーアドヒーシブを試作し,重合触媒系の配合量を変化させ,重合挙動,歯質接着性への影響を調べるなど,今後さらに詳細に検討を行う必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画通り,設備品の購入はせず,消耗品および成果発表のための費用(論文,旅費等)として研究費を使用する。 旅費としては,研究のための情報収集および成果発表として使用する。 消耗品として以下のものを購入する。 接着性モノマー合成あるいは接着材であるプライマーアドへーシブの調整に必要な薬品等の試薬類およびガラス,プラスチック器具類を購入する。 接着剤と歯質接着界面の化学的,形態学的分析のために各種分析機器を使用するが,その際のフィラメントやセンサー等の消耗が予測される。これらのフィラメントやセンサー等の消耗品を購入し,交換して分析を行う。また,同じく接着界面分析の際のXPS,薄膜X線回折装置による分析および引張接着試験に使用する牛歯,牛歯アパタイトのモデル化のためのアパタイトプレートを購入する。
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